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巣ごもり2DK─2020年5月20日~5月22日

2020年5月20日
 新型コロナウイルス感染症には不顕性感染という特徴がある。経路不明も含め感染実態把握が難しい。それを探る方法の一つとして下水に含有されるウイルス量の調査がある。

 NHKは、2020年5月20日 10時54分更新「下水の新型コロナウイルス量を調査 感染拡大の兆候探る 東京」において、その可能性について次のように伝えている。


東京都は、都内の処理場で採取した下水に含まれる新型コロナウイルスの量を把握するための調査を専門の学会とともに始め、分析方法を確立させて、将来、感染拡大の兆候を把握する手がかりにしたい考えです。
都は週1回程度、都内15か所の処理場で採取した下水を冷凍保存し、「日本水環境学会」と連携して、下水に含まれるウイルスの量を把握する調査を始めました。
下水の採取は緊急事態宣言が解除されるまで行う予定で、分析方法を確立させて、将来、感染拡大の兆候を把握する手がかりにしたい考えです。
都によりますと、下水を活用した新型コロナウイルスの研究はアメリカやフランスなどでも進められているということです。
東京都下水道局の担当者は「下水から感染拡大の兆候を調べることができたら、事前に警鐘を鳴らすことにもつなげられる。早く仕組みを確立できるように調査を進めたい」と話しています。

 この調査を用いれば、新型コロナウイルスがいつから東京都内に達していたかを推定できるだろう。2020年1月から世界的拡散が始まったとされているが、実際には前年に各地に到達していたとするなら、感染経路や爆発の過程を明らかにする重要なデータとなり得る。このウイルスがいつ頃入ってきたのかを知らないことには感染拡大のプロセスを描けない。

 と同時に、ウイルス量が分かれば、感染集積地も調べられるだろう。感染爆発を抑制するには、検査の拡充が不可欠だ。しかし、日本ではそれが遅々として進まない。であるなら、ウイルス量の多い地区や建物などを下水調査を通じて明らかにし、優先的にそこにPCR検査をすることも考えてしかるべきだ。

 ただ、この記事には気になる記述がある。下水の採取は緊急事態宣言解除まで続けると当局が述べている。しかし、日本政府の緊急事態宣言は科学的根拠が必ずしも明確に示されていない。そのような曖昧な政治判断に科学的調査が従うことが将来の事態に備えることにつながるのか疑問が残る。

 記事を読んで、トイレが汲み取り式だった頃のこういう話を思い出す。ある家で汲み取り屋が帰り際、夫人に誰か糖尿病を患っている人がいるかと尋ねたそうだ。彼女がいないと答えると、彼は検査することを勧めたと言う。その後、家族で健康診断を受けると、夫に糖尿病が見つかる。汲み取り屋は多くの世帯の排泄物を扱っているので、その匂いから健康状態が推測できるというわけだ。

 この下水調査だけでなく、パンデミックに対処するさまざまな知恵の報道に接し、夏ほどと思わされることも少なくない。

 NHKは、2020年5月20日 5時51分更新「損保各社 テレワークのリスクに備える保険商品販売」においてmそうした実例を次のように報じている。

新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに企業でテレワークの導入が広がる中、損害保険各社は情報漏えいのリスクなどに備える保険商品の販売を相次いで始めています。

テレワークは、大手企業だけでなく中堅・中小企業でも取り入れる動きが広がり、損害保険各社がさまざまなリスクを想定した保険の販売を始めています。
三井住友海上とあいおいニッセイ同和損保は、今月から社員が持ち帰った会社のパソコンが盗まれたり、サイバー攻撃を受けて情報が流出したりした場合の損害に備える保険を販売しています。
すでにある保険商品を組み合わせた形で、資金面で大がかりなセキュリティー対策が難しい中小企業を中心に販売し、保険料は年間、数十万円程度だということです。
このほか東京海上日動は社員が持ち帰ったパソコンがサイバー攻撃を受けた場合に復旧の費用などを補償する保険を販売しています。
損保ジャパンもテレワーク中に会社のシステム自体がサイバー攻撃を受けて業務ができなくなった場合、損害を補償する特約付きの保険を7月から販売する予定です。
損保各社は、リスクに備える仕組みを提供することでテレワークの導入を後押ししたいとしています。

 金融機関が社会に貢献する方法は、融資やコンサルティングだけではない。独創的な金融商品の提供も重要だ。もちろん、サブプライムローン問題を始め新しい金融商品が経済を過熱化させ、社会に打撃を与えたことも少なくない。しかし、経済活動にはリスクや不確実性がつきものである。それをヘッジして安定性を確保し、将来に臨むことは持続可能な開発にも不可欠だ。社会が危機に直面した時、金融機関はその克服のために金融商品を開発する必要がある。金融商品はそうした社会貢献に基づいていなければならない。それが金融機関にとっての社会的責任でもある。

 夕食には、パエリヤ、キャベツとチキンのトマトスープ、セリとパプリカのピクルス、野菜サラダ、食後はコーヒー。ウォーキングは10237歩。都内の新規陽性者数は5人。

参照文献
「損保各社 テレワークのリスクに備える保険商品販売」、『NHK』、2020年5月20日 5時51分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200520/k10012436771000.html
「下水の新型コロナウイルス量を調査 感染拡大の兆候探る 東京」、『NHK』、2020年5月20日 10時54分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200520/k10012437031000.html?fbclid=IwAR3Jl_Yuh3parKealnnQ727EWvRvrtI4i32aHTBlxuacBSECcm84D2V5vYc


2020年5月21日
 朝から眼が痛む。特に左眼が痛い。おまけに、昼頃から無性に眠い。

 感染追跡アプリのニュースを少し前から目にする。NHKは、2020年5月21日 14時38分更新「アップルとグーグル 各国の濃厚接触者アプリ開発に技術提供」において、その動向について次のように伝えている。

新型コロナウイルスの感染拡大の防止につなげるため、アメリカのアップルとグーグルは、濃厚接触した可能性がある人を把握するアプリを、各国の当局が開発する際に使えるスマートフォンの新たな技術の提供を始めました。日本も、この技術を活用してアプリを導入する予定です。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐ対策では、感染者と濃厚接触した可能性がある人を把握するためのスマホのアプリが世界的に注目されています。
これについて、アップルとグーグルは20日に共同で声明を出し、各国の公衆衛生当局がアプリを開発する際に利用できる新たな技術の提供を始めたことを明らかにしました。
この技術は「iOS」と「Android」と呼ばれる両社の基本ソフトで動作します。
また、この機能を使うかどうかを利用者が選べるようにするなど、プライバシーの保護にも配慮したとしています。
濃厚接触した可能性がある人を把握するためのアプリは各国で導入が進んでいて、日本も両社の技術を活用してアプリを導入する予定です。
アプリの利用者どうしが一定の距離に近づいた場合などに、そのデータを端末に記録し、利用者が感染した場合に、みずからアプリに登録すると濃厚接触をした可能性がある人に自動的に通知が届く仕組みです。
アップルとグーグルの連携で、異なる基本ソフトどうしでも機能が使えることになり、両社は「強力なプライバシーの保護が最良のアプローチであり、今後も世界各国の公衆衛生機関を支援していく」としています。

 この記事は長いので、冒頭のみの引用にする。よくまとまっており、これを読めば、アプリの仕組みや世界的現状・課題もわかる。

 ただ、このアプリが日本で実力を出せるかははなはだ疑問だ。新型コロナウイルスは無症状でも感染力を持つ。拡大抑制のためにはPCR検査を広範囲に実施して、早期発見早期隔離が必要だ。このアプリはそれが前提になっている。濃厚接触者が感染したと通知が届いたら、ユーザーは自分もその可能性があるとして検査を受ける。このようにして感染の拡大を抑えることがアプリの目的だ。ところが、日本政府はPCR検査抑制方針をとっている。これではアプリの効力が発揮できない。

 かりに政府がPCR検査を拡充したとしよう。しかし、そうであっても、通知に従って検査を受けるとは期待できない。それどころか、人々がアプリを利用することさえ怪しい。

 世界的に経済再開を中央・地方政府が進めようとしている。しかし、それには感染の拡大の懸念がある。そこでコンタクトトレース技術が期待されている。活動を再開して、感染が起きたら、このシステムを利用して迅速に対応すれば拡大を抑制できると政府は考えている。感染を抑えつつ、経済も活動させるには、これが欠かせないというわけだ。

 しかし、こうしたデジタル技術は感染拡大抑制には信頼が不可欠だと物語る。政府や企業が普段から信頼性を市民との間で構築してきたのかがそこに現れている。個人情報が勝手に利用されるのではないかと不信感を抱けば、アプリをスマホにインストールしないだろう。

 そもそも陽性になった際、政府や企業が休業補償を用意していなくては、検査を促されても避ける可能性がある。信頼がなければ、せっかくの技術を生かせない。政府や企業に信頼がないと、感染拡大につながってしまうだろう。おまけに、感染者が世間からあれだけバッシングされる日本で通知が届いたとしても、検査を受ける気にならないに違いない。ウイルスには人格などない。だが、その感染拡大防止には信頼が必要である。だから、今回のパンデミックには不信の禍もある。

 夕食には、グリーンカレー、野菜サラダ、セロリとパプリカのピクルス、食後は玄米茶。屋内ウォーキングは10003歩。都内の新規陽性者数11人。

参照文献
「アップルとグーグル 各国の濃厚接触者アプリ開発に技術提供」、『NHK』、2020年5月21日 14時38分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200521/k10012438941000.html?fbclid=IwAR24GBOm3xu0sbvxQs7-Ac-XsosP_rmbeW1FBfPfGWJN07_9gl39JPufCpo


2020年5月22日
 昨日ほどではないが、今日も眼に痛みがある。ただ、昨日は左眼だけだったけれども、今日は両眼だ。体調はすぐれないものの、眠気はない。

 パンデミックが続く中、国内に登場した「正義の人」(森毅)の報道が相次いでいる。それは関東大震災の際の「自警団」のヴァリエーションである。

 まさにそれを髣髴させる「自粛警察」が出現したとNHKは、2020年5月19日 18時02分更新「行き過ぎた「自粛警察」“感情のコントロール心がけて”」において、次のように伝えている。

外出の自粛や休業の要請に応じていない商店街や店舗などに対し、嫌がらせのような電話や貼り紙を貼るといった行為が相次いでいます。専門家はこうした行為は今後も繰り返されるおそれがあるとしたうえで、「非常事態だからこそ多様な価値があることを認識することが重要で、自分にとって耳障りのよくない情報にも触れるなどして、感情をコントロールすることを心がけてほしい」と話しています。
新型コロナウイルスへの感染が拡大していた先月、首都圏では人出が多いと報道があった東京 吉祥寺の商店街に抗議の電話や手紙が相次いだり、休業を続けていたにもかかわらず千葉県八千代市の駄菓子屋に店を閉めるよう脅迫するような貼り紙が貼られたりしたということです。
こうした「自粛警察」と呼ばれる行為について、集団と個人の心理に詳しい同志社大学の太田肇教授は、「経験したことがない非常事態で、閉ざされた家の中にずっといるとどうしても1つの考え方が暴走してしまう。やっている側は正義感に駆られて行動していてやりすぎているという意識を持ちにくい」として、多くの場合、気付かないうちに人権を侵害していると分析しています。
さらに、再び感染が広がったときにはこうした行為が繰り返されるおそれもあると指摘したうえで、「多様な価値があることを認識することが重要で、自分にとって耳障りのよくない情報にもあえて触れてほしい。そして、感情が高ぶったときにすぐに行動するのではなく、一呼吸置いて冷静になるなど、感情をコントロールすることを心がけてほしい」と話しています。

商店街では…
東京 吉祥寺の商店街では先月下旬、「多くの人が訪れている」という報道があり、抗議の電話や手紙が相次ぎました。
抗議の内容は「商店街のすべての店を閉めさせろ」、「ほかの店は閉めているのに利益をあげているのは最低だと思う」、「人出が多い商店街は武蔵野市の恥」というものでした。
中には、電話で「何考えてんだ馬鹿野郎!」とどなられるケースもあったということです。
吉祥寺サンロード商店街振興組合で事務局長を務める水野健造さんは「いきなり罵声を浴びせられて怖くなりました。外に出たときに暴力をふるわれないか不安になりました」と話していました。
商店街では、今月1日までには全体の3分の2の店舗で休業や時間短縮を行うなどして一時期、人出が減りました。
しかし、大型連休が明けた頃には再び人出が増えたということで、水野さんは「急激に人出が増えると再び抗議が来るかもしれないと不安です」と話していました。

個人経営の小規模店にも…
「自粛警察」と呼ばれる行為は個人が経営する小規模な店にも及んでいます。
中には営業を自粛しているのに脅迫的な内容の紙が貼り付けられたケースもありました。
千葉県八千代市の駄菓子屋は緊急事態宣言が出される前の3月下旬から自主的に休業を続けています。ところが、先月28日、店の入り口に「コドモアツメルナオミセシメロマスクノムダ」と書かれた1枚の紙が貼り付けられているのを見つけたということです。
カタカナの文字はすべて赤色で定規をあてて書いたような直線的な形をしていました。
店をほぼ1人で切り盛りしている村山保子さん(74)は、紙を貼ったのが誰なのか分からず、脅迫するような内容に恐怖を感じました。
以前は駄菓子のほか、焼きおにぎりや揚げパンなどの軽食も販売し、地域の子どもたちでにぎわっていましたが、この事態を受けて緊急事態宣言が解除された後も当面は休業を続けるということです。
村山さんは「最初に見たときは血の気が引きました。本当に怖かったですし、今後もさらに行為がエスカレートするのではと不安に感じています。子どもたちのために開けてあげたいですが、その思いもしばらくはかなえることができません」と話していました。

 達増拓也(@tassotakuya)岩手県知事は、「自粛警察」の生まれる背景について、次のような興味深いツイートを投稿している。

諸外国のコロナ対策が、基本的に、全面的な休業・自宅待機か、その解除か、という全か無の戦略なのに対し、日本が「感染防止と社会経済活動の両立」という両立戦略なのは、日本の「現場力」の高さに期待があるからです。現場で個人が他の人の動きを見て考えを推し量りながら、微妙な調整を行う連携力。
15:21 - 2020年5月21日

この「現場力」の影の面として、他者の動きに過敏になり、自粛警察や他県ナンバー狩りのような問題があります。現場に責任を押し付け、だれも責任を負わない無責任体質の弊も指摘されます。人権を尊重すること、責任ある立場の者は現場の状況を把握して任せっぱなしにしないこと、が求められます。
15:28 - 2020年5月21日

 「自粛警察」は日本の強みと裏腹だというわけだ。非常に鋭い洞察で、メディア上で見かける学者や作家の意見よりはるかに説得力がある。

 ただ、現場のすべてが暴走するわけではない。検察庁法改正に対する抗議運動のような大規模ではないのだから、ストリート・レベル、すなわち現場の第一線ではなかろう。その意味で「自粛警察」は丸山眞男の言う「社会の下士官」である。

 要するに第1の範疇の中間層の演ずる役割は、丁度軍隊における下士官の演ずる役割と似ていると思います。下士官は実質的には兵に属しながら、意識としては将校的意識を持っております。この意識を利用して兵を統率したところが日本の軍隊の巧妙な点です。兵と起居を共にし兵を実際に把握しているのは彼らであって、将校は「内務」からは浮いてしまっています。だから中隊長は兵を掌握するには、どうしてもこの下士官を掌握しなければならないのであります。これと同様な現象なのでありまして、この第一の範疇の中間層を掌握するのでなければ大衆を掌握し得ない。こういった地方の「小宇宙」の主人公を誰が、いかなる政治力が捕らえるかによって日本の政治の方向は決まります。それは過去でも現在でも同じことです。しかも注意すべきは第一範疇の中間層の知識、文化水準と、第2範疇の本来のインテリとの水準との著しい隔絶であります。私は外国のことはよく知り前sんが、こんなに大きな隔絶があることは日本の大きな特色ではないかと思います。イギリスでも、アメリカでも、ドイツでさえも、もっと連続しているのではないかと思われるのでありますが、-この料層の教養の違いが甚だしい事、他方第1の範疇の中間層は教養においては彼らのは以下の勤労大衆との間に著しい連続性を持っている事、大衆の言葉と、感情と、倫理とを自らの肉体を持って知っている事、これがいわゆるインテリに比して彼らが心理的によりよく大衆をキャッチ出来るゆえんです。しかも尚彼らを私が擬似インテリとか、亜インテリとか呼ぶのは、彼等自身ではいっぱしインテリの積りでいる事、断片的ではあるが、耳学問などによって地方の物知りであり、特に、政治社会経済百般のことについて一応オピニオンを持っている事が単なる大衆から彼らを区別しているからです。床屋とか湯屋とかあるいは列車の社中で、我々は必ず、周囲の人々にインフレについて、あるいは米ソ問題について一席高説を聞かせている人に出会うでしょう。あれがつまり擬似インテリで、職業を聴いてみるとたいてい前述した中間層に属しています。
 これに対して日本において、第2の範疇の中間層が一般の社会層から知識的=文化的に孤立した存在であるという事は、総合雑誌というものの存在、純文学という妙な名前があること、岩波文化といったもの、-これらがいずれもインテリの閉鎖性を地盤にして発生している事にも象徴されておると思います。例えば「タイム」や「ニュースウィーク」は非常にポピュラーなテーマとより高級な政治経済の評論の如きものが両方同じ雑誌に載っているのでありますが、ああいった雑誌が何故日本に出来ないのか。岩波文化があっても、社会における「下士官層」はやはり講談社文化に属しているということ、そこに問題があります。そこでこういう層を積極的な担い手とした日本のファッショ・イデオロギーはドイツやイタリーに比してもいっそう低級かつ荒唐無稽な内容を持つようになったのは当然の事であります。ドイツなどでは兎も角一流の学者教授がナチの基礎付けをやったわけですが、日本ではどうでしょう。無論ファッショのお先鋒を担いだ学者も少なくありませんが、まず普通は表面は兎も角、腹の中では馬鹿馬鹿しいという感じのほうが強かったようであります。日本のファシズム的統制の末端が極めてファナティクな物あるいは滑稽な物になったのは、おおむねこういう層を媒体としたからであります。例えば竹槍主義の現実的な担い手となったのはかかる地方的指導者であります。軍の上層部が竹槍を持って高度の武器と対抗できるという事を、いかに軍人が無知であっても真面目に信じていた訳ではない。そのくらい百も承知している。そういう竹槍イデオロギーの強調によって物力の足らない点を精神力でカヴァーしようというのですが、首脳部は無論そういう高等政策のつもりで、タクチックとしていっている。ところが、そうしたイデオロギーが下に浸透して「小宇宙」の親方を通過するときには本物になってくる。真正面から竹槍主義で始動する。防空演習において以下に馬鹿馬鹿しい指導が行われたかは我々の記憶に尚新たですが、それはある程度まで、こうした中間層から出た班長や組長が馬鹿馬鹿しくしてしまった面が少なくない。日本の戦争指導における多くのナンセンスはこういうところから発生していると思われます(関東大震災のときの自警団というのがやはり同じような意味を持っています。)急進ファッショの暴動の関係者、乃至右翼dな対の幹部にいかにも小学校教員、僧侶、神官、小工場の親方、小地主といった層の出身者が多いかという事はここにいちいちいて帰しませんが、兎も角このことが先に申しましたファッショ的イデオロギーにおいて労働者よりも中小商工業者や農民が重視される事に関連してくる訳であります。農村における指導層のみならず都会のスモール・マスターズでも大体農村出身者で、農村に何らかのつながりを持っているものが多い。だから農本主義は彼らの共通利害といっていい。また中央集権に対する「地方自治」の要求というのは、彼らがヘゲモニーを握っている地方的小宇宙に対する中央権力(官僚)の干渉排除の要求に他ならないのであります。官僚主義yは巨大財閥に対する反感は、こういう中間層において最も熾烈であります。それと共に先ほど申しました日本の国際的地位、つまり日本は国際的には先進資本主義国家の圧力を絶えず頭上に漢字ながら東洋の社会では一角の先進国として振舞っていたこと、一方でいじめられる立場にありながら、他方ではいじめる地位にあったという事、こういう日本の地位は、国内におけるこの層の社会的地位に酷似しております。そういうところから彼らは日本の大陸発展に内面的な共感を感じる訳です。先進資本主義の圧迫は、まさに国内における巨大資本の圧力と同じように感じられる。東亜の諸民族の日本帝国主義に対する犯行は、彼らの店や仕事場やそのほか彼らの支配する集団における乾分や目下の反抗と同じような心理的作用を彼らのうちに起こさせます。こうして彼らは日華事変や太平洋戦争の最も熱烈な支持者になったのであります。
(丸山眞男『日本ファシズムの思想と運動』)

 「正義の人」は「社会の下士官」である。日本の社会では士官でも兵でもなく、下士官が暴走する。日本におけるパターナリズムもそうした特徴があるのだろう。

 夕食には、牛肉と野菜の炒め物、ワカメのナムル、野菜サラダ、キムチと海苔のスープ、食後には玄米茶。屋内ウォーキングは10232歩。都内の新規陽性者数は3人。

参照文献
丸山眞男、『現代政治の思想と行動』、未来社、1964年
「行き過ぎた「自粛警察」“感情のコントロール心がけて”」、『NHK』、2020年5月19日 18時02分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200519/k10012436311000.html


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