朝のくしゃみ

詩と挿絵

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最近の記事

初夏、涼しい夕暮れ

初夏、涼しい夕暮れ わたし今すごく寂しいわ メランコリックなんて言葉で片付けないで 苦味をとても感じるわ 子供の頃の写真 名前を思い出せないあの子が映り込んでいた。 わたしもそう、名前のない子なのよ さようなら、さようなら 今日の日はさようなら

    • 親愛なるあなたへ

      わたしには愛らしくて大切で何にも変え難い友人がいる。 彼女はまるで月のようだ。優しい光で闇に温かさを与えてくれる。 昼間にちらりとすがたを現すこともあって、昼寝をするわたしを見守ってくれている。 彼女は宣告された余命の月に入った。 ここのところ毎日体調が優れない。かなり悪化しているのが痛いほど伝わってくる。 寛解する。彼女も私もそう信じている。 信じれば信じるほど苦しくなるのは何故だろう。 わたしが入院で1番苦しかったときや、楽しいことがあったとき、幸せなとき、まず彼

      • 阻喪

        無職の私は毎日1時間くらい散歩をして、途中の公園でブランコを思い切り漕いでいる。 歩きながら、ブランコを漕ぎながら、様々なことを感じたり考えたりする。 もう戻ってこない親愛なる人のことを想う。 壊れてしまって治らないものを想う。 明日届くワンピースのことを思う。 ふわりとした多幸感に包まれる。 行き場のない寂しさに襲われる。 ブランコで空に向かって足を蹴りあげて、そのあとゆったり漕いで、祈る。 そしたらなにか変わるんじゃないかと願う。 散歩が私にもたらすものはなんだ

        • 鬱病の世界

          一寸先は闇。 手探りで、真っ黒の水中を息を止めてさまよった。 わからない、こわい、くるしい、つらい どの言葉でも表せないぼくの心なんて。 曇り空と、僕がいる部屋を責め立てるように叩きつける雨 楽になれると唱えたけどくるしかったくるしかった そんなことでぼくはまだ世界に取り残された。 何度も嘔吐した 苦しい気持ちも吐き出せる気がして。 何度も泣いた 手や全身が震えて立ち上がることも出来ず ただそこに這いつくばり身体が限界を迎えても泣き続けた ぼくと、ぼくの病気は1番大

          ヒビと日々

          神様に会えたら一緒にオセロやって仲良くなるよ そしたら大切な人たちが幸せになるように頼むんだ あたたかい日 美味しいコーヒー 久しぶりに乗ったブランコは楽しい 1人でも生きていけるように小さな幸せを探す けど、ぼくはやっぱり君たちといたい 壊れたものは治らない ヒビが残ってしまうけど ヒビすらも愛せたらいいな 今の僕には無理だな 無理なことは沢山ある でも無理を無理して乗り越えなくても、回り道して前へ進め 進め進め

          思い返すと、入院していた時は常に周りに死があった。 どうやって死のう、どうすれば楽か、なんて言い残そう、ここから落ちたら死ねるのか。 そのときはそう思うことが当たり前すぎて気づかなかったけど、いまや希死念慮は無くなり、どこにも行くあてのない辛さ、さみしさだけになった。

          思い返すと、入院していた時は常に周りに死があった。 どうやって死のう、どうすれば楽か、なんて言い残そう、ここから落ちたら死ねるのか。 そのときはそう思うことが当たり前すぎて気づかなかったけど、いまや希死念慮は無くなり、どこにも行くあてのない辛さ、さみしさだけになった。

          入院

          昼間に寝るぼくを照らすのは太陽でも月でもない、かすんだ蛍光灯。 早朝に目覚めて朝焼けを毎日のように見た。 心が洗い流されて、のこったものはちっぽけな寂しさだった。 小窓から人が流れるのを見るだけで救われる気分になった。 どこまでも独りぼっちのぼくは時計がカチカチと音を鳴らす度に、いち、に、さん、し、ご、いち、に、さん、し、ご、と数を数えて、救いのような眠気が来ると痺れるほど眠った。 悪夢で飛び起きて過呼吸になる日々が続いた。 脈拍が170を超えて昼も夜も眠れない日々も

          きみたちのうた

          日常を歩く 決して走らない 歩く 歩く 歩く ドライブで過ぎ行く残像も綺麗だ でもぼくはこの目で確かめたいものがある 深海を泳ぐ 身体がずぶずぶ 潜る潜る潜る 朝焼けは心を洗い流す でもぼくはその寂しさに耐えられない 大切なものを壊したくないだけなのに どうして地球が回る度に重力を無視して宇宙へと消えてしまうのか 僕はもう疲れた 疲れきったんだーああ 僕が痛い分、あの子の痛みが無くなりますように 祈るよ神様 僕が2回当てた大吉があの子の元へ渡りますように 大嫌いだ神

          きみたちのうた

          マチアプの返信速度と私

          マッチングアプリを始めた。 色々な人とやり取りすると、当たり前だけど色々なタイプの人がいて、その多様さに驚かされたり、悲しまされたり、面白いと思わされたりすることがある。 そんな中で、自分で自分が面白いと思うことがあった。 それは、相手の返信速度と自分の凹み方には相関関係は無いということだ。 私はてっきり、返信速度の早い人ほど興味を持ってくれているだろうから自分が嬉しいと思うだろう、と、思っていた。 しかし、ずっと返信速度が早い人が急に何時間も、あるいは丸一日とか置い

          マチアプの返信速度と私

          辛さというものは毒だ

          辛さというものは毒だ。 どれだけ絞り出しても1度体を巡った毒はなかなか排出されない。 手足に痺れが残り、目からは涙がこぼれる。 テレビも音楽も体が拒絶する。 誰かにいて欲しいのに誰かがいると鬱陶しい。 しかし、毒というものは気付かぬうちにどこか遠くへ去っているものだ。 霧は晴れた。体の隅々まで縦横無尽に伸びる。 音楽は私を鼓舞し、リビングで観るテレビは顔をほころばせる。 人と一緒にいる自分を好きになれる。 そして毒の味を忘れてしまうのだ。

          辛さというものは毒だ

          心の傷が色んな形で刻まれていく。

          心の傷が色んな形で刻まれていく。 悪夢を見た。本当にほんとうに怖かった。 たかが悪夢と思われることが本当に恐ろしかった。 わたしは弱虫だ。自分で自分も傷つけていた。 眠ることが怖くなった。 気付けば眠れなくなっていた。 こういう風に、心の傷が色んな形で刻まれていく。

          心の傷が色んな形で刻まれていく。

          朝の公園【詩】

          朝の公園が明らかにする 滑り台の縁の輝き 太陽を反射するフラッシュ 待ち焦がれるブランコ 期待の共鳴を胸に感じる 怖いものなんてもうない 悪夢だってもう見なくてもいいんだよ 君は解放された 解き放たれたんだ ありがとう ありがとう 朝の公園は明らかにする

          朝の公園【詩】

          年末のお買い物

          年末のお買い物は特別な感じがあって好きだ。 夕暮れのグレーとオレンジジュース色に溶け込みたい。 この穏やかな空気の一部になってしまいたいなあ。 重たい買い物袋を右腕、左腕と持ち替えながらゆらゆら歩く。 食材が料理になるのがいまから楽しみだ。

          年末のお買い物

          時間は伸び縮みするゴムのようなものだ

          時間は伸び縮みするゴムのようなものだと思う。 例えば「ジャネーの法則」というものがある。歳をとるほど時間が早く経つように感じられるというものだ。 一般論として子供の頃の方が世界が新鮮に見える一方、歳をとると経験したことあることの繰り返しであることが多いからだ。 また、「待ち時間」を長く感じるか短く感じるかも過ごし方によって変わってくる。 例えば読書に熱中していれば早く感じられるし、時計とにらめっこをして「いつ来るか、いつ来るか」とあくせくしていると余計に長く感じられるもの

          時間は伸び縮みするゴムのようなものだ

          喜嶋先生の静かな世界/森博嗣

          根っからの理系で研究に没頭する主人公のハードボイルドな視点が私には新鮮で面白い。ただ、どうしても滲み出てしまうという具合で人間味が感じられるのもまたいい。 静かな水面のような研究と、複雑で混線した電波のような人間社会とが交差する時の展開に息を飲むものがある

          喜嶋先生の静かな世界/森博嗣

          雨【詩】

          ギャロップのような雨音で大地が頬を濡らす。 それはやがて深い森林の血肉となりあるいは天に昇って私たちを見守る。 そしてまた私たちと交わりを持つ時、時としてそれは災厄と呼ばれあるいは恵と呼ばれる。 だが雨は私たち俗物の声などを超越しているのだ。 誰一人として我の呼ばれ方など気にせず一心に降り注ぎ森羅万象と交わっていく。 私はそんな雨が好きだ。 この声もどこへも届かないだろう。 それでいいのだ。