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ボルサリーノにタンゴパンプスー私の性自認、性的指向、ナルシシズムのこと 2


色々と考えがまとまっていないので、本当に何から書いていいのか自分でも分かっていないのですが、とりあえず自分の性的指向についてまずはサラッと触れておきたいと思います。あとで段々深く掘り下げることになるかと思いますが。私は1ページ目にも書いた通り、自分を異性愛者、ヘテロセクシャル、つまり自分が恋愛感情を持つ相手は男性だと思っているのですが、100%そうだと言い切れる自信はありません。今まで交際した相手、性的交渉を持った相手はすべて男性ですし、こちら側が一方的に好意(恋愛感情を含んだもの、つまり片思いというやつです)を寄せていた相手も「ほぼ」男性です。ですがこの「ほぼ」からもれた出来事(経験)のために、私は自分を「異性愛者だ」とははっきり言いきれないのです。

私が高校3年生になろうかとしている頃、一度もクラスが一緒になったことのない、名前と顔だけは知っていた子と仲良くなりました。私はある意味高校では有名というか名物みたいな存在でしたので、彼女の方は私のことを前から知っていたようなのですが、実際に話しかけてきたのは模試のときだったと思います(うちの学校は進学希望者などほとんどいなかったので、模試の類はいつも同じメンバーが4、5人いるだけでした)。彼女も英語や外国、洋楽が好きで、私にずっと興味を持っていたというのです。彼女と知り合ったのは、私がある渡米プログラムに参加するよう学校から薦められていた頃で、彼女がその噂を聞きつけたのをきっかけに私に声を掛けてきました。彼女は黒髪のロングヘアで化粧っけはなく(当時はギャル文化の黎明期でした)、私服で何度か会ったときもかなりラフな服装でした。バンドのTシャツや無地のシャツに普通のパンツ等。制服以外でスカートを穿いている姿は多分見たことがないと思います。そしてーー彼女はバイセクシャルだと公言していました。90年代前半にですよ。当時は当然のことながらバイセクという言葉も今ほど浸透していませんでしたし、ましてや性的少数者であることを公言する人は彼女以外に身近にはいませんでした。先ほど「ほぼ男性にしか恋愛感情を抱かなかった」と書きましたがその例外が彼女ですーー私は彼女のことを好きになったのです。私が40数年生きてきて女性を好きになったのはあの一度だけでした......と、いう話を始めると「女子高あるあるだね」「10代の時って、同性に憧れみたいなものって誰でもあるじゃん?」のようなことを言われることがかなりあったのですが、私の彼女への気持ちはそういうのとはちょっと違う気がするのです。ちなみに、彼女がバイセクだから私は彼女を好きになったわけではありません。正直なところ、いつどうしてなぜ、彼女を好きになったのかよく覚えていません。私が彼女を好きだったのは事実だけれども......。

私が通っていた女子高は、私の実力よりもかなり下の学校でした。過去作に書いた通り、何故か母が半ば無理やり入れたのですが、これが案外楽しい学校でした(1年の頃、いじめに遭っていましたが別の話になるのでここでは止めておきます)。うちの学校だけだったのでしょうか、それとも当時のあのレベルの女子高全般に当てはまることなのか分かりませんが、とにかく雑多な子が色々いました。ギャル、真面目で地味な子、部活を熱心にやってる子、オタク、普通っぽいけどよく喋る子、存在感のない子......。私は「そのどれでもない変な奴」だったと思います。私はクラスのおとなし目の子2人と行動を共にすることが多かったのですが、色々な属性の子と普通に話をしていました。ギャルの子とも、オタクっぽい子とも。勉強は出来るのに真面目じゃない、なんか変な奴という、よく分からない属性でいるのは楽だったし、面白かったです。そして例の彼女もそういうタイプでした。

彼女(Wちゃん)は私と同じで「変人」でしたが、その中身や家庭環境等はかなり違ったと思います。そして今思えば(いや、当時も思っていたけれど)、彼女は少々虚言癖があったのです。どこまで本当なのか、パフォーマンスなのか、それとも妄想なのかよく分かりませんでした。彼女の家は彼女の口ぶりによるとそこそこ裕福で、それはおそらく事実な気がしました(彼女の卒業後の進路等を思えば)。「私の家は金持ち」のような露骨な発言はしませんでしたが、祖母(?)とファーストクラスで今までにアメリカに数回とオーストラリアとあとどこかに行ったという話をしてきたことがありましたが、嘘っぽいとは思えませんでした。絶対に本当だと信じてるわけでもなかったのですが。まぁ全部が本当ではなくともあながち嘘ではないんだろうなぁとか、そんな感じに思っていました。彼女がこういう話や、突拍子もない話をするときは自慢気、得意気に話してる感じではなく、サラッと軽い冗談か本当か分からないノリで話していたのを覚えています。

彼女の、本当か嘘か謎な話で今でもよく覚えているのは、彼女が誕生日に小学生の妹からすごい珍しいイグアナと装置一式を買ってもらったという話でした。高校生なのにファーストクラスで何度も海外に行った話よりも「それ本当?」と思いました。あと、彼女の母親が薬剤師か看護師だから(どちらかは忘れました)、家にはあやしい薬がいっぱいあって、それをたまにいじってる(飲んでる?)とかの「危ない」話もまた、彼女の定番でした。彼女は私のみならず、クラスメイトや学校の図書館司書にもそういう過激な話や嘘か本当か分からない話をしていました。ピンクのモヒカンにしたいだとか、その内フランス外人部隊に入りたいだの。そういえば彼女はハードロックやメタルが好きだと言っていて、バンドのメンバーのゴシップなどはよく話してきたけれど、今度CD持ってくるねといいつつ一度も持ってきたことはなかったことを思い出しました。私は当時は音楽といえばパンク一色でしたので、彼女にピストルズやクラッシュのCDを貸したことがありますが(もちろん無理やりではなく、彼女が興味を示したからです)、返してくれるときは普通に「ありがと~」と言ってくるだけで感想を言うことは全くなかったです。好みじゃなかったならそう言ってくれて全然かまわないのに、あれも不思議でした。多分、聴いてなかったのではないかなと思います。

ここまで読んだ方は「じゃぁ一体あんたは彼女のどこが好きだったんだ?」と思われるかも知れません。虚言癖のみならず、よく約束はすっぽかすし(本当に忘れてたのか、知らんぷりなのか本当に分かりかねました)、遅刻の常習犯だったし(30分、1時間どころではなかったです)......。また、何度か、彼女の家に電話をしたことがあるのですが(当時は携帯など持っている高校生などはおらず、ポケベルを持ってる人はまぁまぁいるという時代です)、何だか家族もおかしかったのを覚えています。電話に父親らしき人物が出たのですが「えーと......」とだけ言われた後、そのまま10数分放置されたので何が何だか分からず切るしかありませんでした。後日彼女にその話をしたら、ああ、うちの家族いつもそうだよと普通に言っていました。私は何か、彼女に嫌われることをしてしまったのかと悩んでいたのですが......。彼女の家も機能不全家族だったんだろうなということは今では察しがつきますが、どんなタイプの機能不全なのか、見えてこない、今でも想像がつかないです。ちなみに彼女はクールなタイプではなく、いつもよく笑ったりふざけたりしていました。怒っていたり、機嫌を悪くしているところは(少なくとも表には出しているのを)見たことはありません。いつも冗談や軽い話を誰かとしてるといった様子で、とにかくよく喋る子でした。彼女の友達のような子たちは、地味な大人しい子ばかりで、彼女の過激な冗談や嘘か本当か分からない話を笑いながら適当につっ込んだり、聞き流したりしていました。

まだまだこの彼女についての話は続きますが、長くなってしまうので続きは「3」に書くことにします。私の性的指向について考えるときに、どうしても彼女のこと、彼女に対して持ってた気持ちについての話を外すわけにはいかないので......。読み方によっては単なる私の昔の恋話に思えるかもしれませんが、事実そうなので、そういうものだと思ってお付き合いください。

続く