![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/49161262/rectangle_large_type_2_8986c05528f2a26c3caeb1a3d649df9e.jpg?width=800)
ある晴れた春の日の午後について
その年の春の晴れた日の午後、免許を取り立ての小僧だった僕は、知り合いの自動車工場から譲ってもらったボロボロのニッサン スカイラインをドライブして、国道 8 号線を西に向かっていた。
FM ではヴァン・ヘイレンの「ジャンプ」が流れていた。
何の根拠もなく、やがて来る未来には明るい日々が待っていると、多くの人が信じていた時代だったし、僕もそう思っていた。
国道8号線は、西へ西へとまっすぐ続いていく。
僕は、車の窓をフルオープンにして、お世辞にもハイフィデリティとは言えないカーステレオの音量を上げて、デイヴ・リー・ロスと一緒に歌った。
「ジャンプ!」
国道沿いに広がる畑から、時折ひばりが飛び立つのが見えた。
耳を澄ませば、レンゲにとまる蜂の羽音まで聞こえてきそうな、のどかな午後だった。
そうして、僕は1つ歳を取った。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?