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全国水族館の旅㉞新屋島水族館

四国を旅していると、よくお遍路さんを見かけます。歩き遍路されている方々を見ると、本当にすごいなぁと敬服します。お寺巡りだけでなく、四国の人々との出会いやお遍路さん同士の会話など、きっと素敵な体験が旅にあふれていると思います。
実は、四国にはお遍路さんと高確率で出会う水族展示施設があります。それが第84番札所の屋島寺の側に立つ新屋島水族館なのです。


お遍路さんと一緒に水族館へ!?

高松市に位置する水族館ということで、スタートはJR高松駅。屋島スカイウエイを通って向かいますので、現地でレンタカーを借りて四国の大地を意気揚々と走り始めました。

JR高松駅前から車でスタート。旅行者の方は、高松空港からレンタカーを借りて向かうのも大いにありです。

新屋島水族館は標高およそ300 mの屋島山上に立っており、屋島スカイウエイを通って向かうことになります。高松駅から車で30分ほど走れば、屋島山上の駐車場に到着します。

源平合戦の古戦場として、歴史ファンから人気の屋島。山の上から望む瀬戸内海と高松の街は、美しく爽快な眺めです。改めて、自分が四国に来たことを実感させてくれます。

屋島スカイウエイの最終到達地点、屋島山上。展望台からのオーシャンビューは爽快です。
日中はもちろん、夕方や夜に展望台に来てみるのもいいと思います。趣深い夕焼けの海や、高松市の夜景が味わえます。
展望台の側に立つ「やしまーるカフェ」。食事を味わいつつ、ガラス張りの店内から最高の眺めを楽しめます。
駐車場近くの自販機には、新屋島水族館の公式キャラクター「マナやん」の姿が描かれています。お遍路さんスタイルが可愛いですね。

屋島山上には、お遍路巡りの第84番札所である屋島寺が立っています。実は、新屋島水族館には、お寺の境内を通り抜けて向かうことになります。せっかくの機会ですので、お遍路さんと一緒に参拝してみましょう。

お遍路の84番札所である屋島寺。目指す新屋島水族館には、お寺の中を通り抜けて行きます
多くのお遍路さんが参拝されていました。新屋島水族館へ行くときに必ずお寺を通ることになりますので、このチャンスに手を合わせておくのも素敵な体験になると思います。

屋島寺で手を合わせ、展望台からの景色を存分に楽しんだら、水族館へと向かいましょう。
本館は1969年に「屋島水族館シーパレス」として産声を上げ、従来の水族館とは異なる取り組みが実施されてきました。何を隠そう、世界初のアクリル製ドーナッツ型回遊水槽を生み出したのは本館なのです。誉れ高い歴史と学術性を有する新屋島水族館、心から楽しんで観覧したいと思います。

屋島寺と展望台の先に新屋島水族館があります。学術性とエンターテインメント性が素晴らしいレベルで両立した飼育展示施設です。
前身は屋島水族館シーパレス。新しく生まれ変わったからこそ、「新」屋島水族館なのです。

四国と世界の水域からスターたちが夢の共演

瀬戸内海を通って、世界の生命と出会う!

本館は屋内エリアと屋外エリアに分かれています。どちらからでも、自分の好きな順番で回ることができます。なお、イルカやアザラシのパフォーマンスは屋外水槽にて実施されるので、イベントの開始時間は頭の片隅に入れておきましょう。

筆者は屋内エリアからスタート。ジャングルをイメージした大型水槽では、パワフルで神秘的な淡水魚がたくさん泳いでいます。
アルビノのコロソマ。神々しいオーラをまとっています。
お隣の水槽には、小型淡水魚が飼育されています。熱帯の淡水魚の美しさは、世界のたくさんの人々を魅了しています。
エンゼルフィッシュ類のフォルムは、優雅で趣深く感じられます。観賞魚として高い人気があるのも納得です。

水族館ファンの方々が本館の観覧で楽しみにしているのは、やはりアメリカマナティーとの出会いだと思います。日本国内でアメリカマナティーに出会える水族館は2ヶ所しかありません。1つは沖縄の美ら海水族館、そしてもう1つが新屋島水族館なのです。
ゆったりと泳ぐ愛らしいマナティーの姿には、ついつい見とれてしまいます。とても貴重な出会いですので、彼らの動き1つ1つをしっかりと目に焼きつけておきました。

アメリカマナティーの展示水槽。上部には映像展示のモニターが設置されています。
水底に佇むアメリカマナティー。日本では本種を展示している水族館は少なく、この出会いはとても貴重です。
水面に顔を出して呼吸するマナティー。遊泳だけでなく、浮上する動きもゆったりしています。
マナティー型のパネルとキャプションで、彼らの生態と特徴を解説してくれています。ジュゴンと違って、尾ビレはしゃもじのような形状になっています。

本館の建物構造は独特であり、水槽の形もユニークなものが多いです。観覧通路の様相を見て楽しめる素敵な構造。いろいろな角度から生き物たちを観察できますので、多角的な視点で彼らの姿を覗いてみてくだい。

屋内展示はかなりボリュームがあります。展示水槽の形も様々で、いろいろな面で観覧を楽しめます。
スタッフさん手作りのイラスト付きキャプション。わかりやすいうえに視覚的インパクトが満点で、来館者は楽しんで展示生物の特徴を学ぶことができます。
タイドプールをイメージしたオープン水槽。潮溜まりの生き物たちを上方から観察できます。

アメリカマナティーに引き続き、個性豊かな飼育生物たちが来館者の目を引きます。どの子も、かっこよくてミステリアスな雰囲気にあふれています。魅力的な生き物たちの一挙手一投足に注目です。

サメ専用の特別水槽。ツマグロなどの小型サメ類が元気よく泳いでいます。
かっこいいヤシガニ。2本のハサミはかなりパワフルであり、挟む力はライオンの顎の力と同等だと言われています
くつろぐバイカルアザラシたち。世界唯一の淡水アザラシです。

香川県が面するのは瀬戸内海。我々日本人に恵みを与えてくれる豊漁の海は、生き物の多様性に富んでいます。
地元・香川県の水族館で瀬戸内海の生物を観察できる特別感満点の体験。恵みの海の生き物たちとの出会いに心が満たされます。

瀬戸内海の生き物の展示水槽がいっぱい! 我々の食を支える恵みの海には、多種多様な海洋生物が息づいています。
ハオコゼ。毒のある鋭い棘を装備しています。
センネンダイ。鮮やかな体色の大型魚なので、水族館の展示にはぴったりだと思います。
アオウミガメやタイマイには、コバンザメがくっついています。この状態でもウミガメたちは悠然と泳いでいます。
アイゴ、カワハギ、メジナといった瀬戸内海の幸。日本人一同、おいしい恵みをくれる香川県の海に感謝!

個人的にすごく感動したのはクラゲの展示コーナー。様々な種類の生体展示はもちろん、成長ステージごとの解説もとても充実しています。海でクラゲに出会っても怖くてなかなか近づけませんが、水族館から至近距離で観察できますね(笑)。

クラゲ展示コーナー。飼育水槽には尖った角はなく、クラゲに優しい曲面形状となっています。
お馴染みのミズグラゲ。水族館では恒例の人気者です。
水槽内漂う微小なエフィラ(クラゲの赤ちゃん)たち。傘をぴくぴく動かしているのが可愛いですね。
サカサクラゲ。海底に定着するタイプの独特なクラゲです。
クラゲの生活環について、手作りのキャプションで解説。各成長ステージの特徴がわかりやすく伝わってきます。

本館では、和の雰囲気を湛えた金魚たちの舞が見られます。展示エリアの内装もBGMもザ・和風といった感じで、金魚たちの魅力を引き出しています。別世界に行った心地になって、アジアが産んだ奇跡の魚の遊泳を堪能してください。

金魚の展示エリア。水槽の背景が障子風になっており、和の空気感があふれています。
掛軸のようなポスターで金魚を紹介。展示1つ1つに雰囲気を出す工夫が施されています。
金魚の品種「琉金」。多くの人が連想する金魚のイメージにぴったりの種類ですね。
尾ビレの長い品種「コメット」。水中での舞は、まさしく彗星のようです。

金魚たちの和の魅力に酔いしれたら、次は世界の国外へと目を向けましょう。熱帯の淡水魚たちは、魚マニアにとって永遠の憧れです。本館の展示生物たちから、ジャングルのパワーをたっぷりと与えてもらいましょう!

壁面に並ぶ展示水槽。熱帯淡水生物の展示は、水族館における一大ジャンルと言っても過言ではないかもしれません。
フラワートーマン。インドネシアに生息する淡水魚です。
かっこよさ最強のアリゲーターガー。ワニのような顎をしたイケメンてます。
オスカー。縄張り意識が強くて攻撃的な一方、懐きやすい面を持つツンデレ淡水魚です(笑)。
このエリア唯一の陸上生物ヒガシヘルマンリクガメ。他のリクガメと同じく長寿であり、30~50年も生きると言われています。

それでは、再び国内の海洋生物たちに会いに行きましょう。ここからは、とても不思議に見える個性的な生き物たちが目白押しです。彼らのミステリアスな容姿と生態を学ぶと、生命の多様性と可能性のすごさを実感します。

暗めの照明と一風変わった水槽。摩訶不思議な雰囲気が楽しさを増幅してくれます。
オオクチイシナギ。深海に生息する大型魚であり、全長2 mに達することもあります。
鉤状の毛に様々な物をくっつけるモクズショイ。まさに擬態のプロフェッショナルです。
アメフラシがたくさんいて、マニアは大満足。黄色いラーメンのような物体は、アメフラシの卵です
オオグソクムシ。ダイオウグソクムシは大きくてかっこいいですが、筆者的には本種くらいのサイズがちょうど良くて萌えます(笑)。

続いて現れるのは、日本の淡水生物たち。本展示は香川淡水魚研究会と香川県立高松桜井高等学校理学部との共同製作であり、希少種含めて多様な清流の生命が展示されています。
地域の人々と手を取り合って前進している水族館。素晴らしい関係性に支えられて、香川県の生物学研究は発展しているのです。

国内の淡水生物展示エリア。多くの人々が力を合わせて創出した努力の結晶です。
ニホンウナギ。つぶらな瞳が可愛い!
オヤニラミ。絶滅危惧種でありながら、原産地以外の場所では国内外来種と見なされています
肉食性の水生昆虫ミズカマキリ。カマキリではなくカメムシの仲間です。

豊富なショーとパフォーマンス! 楽しく水棲動物の秘密を学ぼう

続いて屋外エリアへ飛び出しましょう。
大型のオープン水槽が多数設置されており、とっても壮観です。海から吹いてくる風を感じながら、生き物たちを観察できるとは贅沢の極みですね!

屋外エリアには、大型の展示水槽がいっぱい。爽快な空の下で、スケールの大きな展示を楽しみましょう。
カミツキガメ。他の水族館では水底でリラックスしていることが多いので、かっこよく泳ぐ姿を見られて大満足です。
アカウミガメの展示水槽。愛らしさは哺乳類たちに負けていません。
ウミガメが寄ってきました。餌やり体験が日々行われているためか、人間を見ると積極的に接近してきます。
屋外エリアの奥にも、ウミガメの大型水槽があります。力強く水をかいて泳ぐ姿はかっこいい!

本館では複数のショーイベントが毎日実施されており、飼育員さんと生き物たちの息ぴったりのパフォーマンスを見ることができます。迫力のショーはもちろんのこと、記念写真撮影や餌やり体験でも、生き物たちは愛らしい素顔を披露してくれます。
バンドウイルカの親子はとってもキュート。とても好奇心旺盛であり、来館者のもとへ近寄ってくることもありますので、シャッターチャンスが来たら記念の1枚を撮りましょう。

バンドウイルカ。本館の個体は人懐っこく、来館者のもとまで寄ってきてくれます。
イルカたちへの給餌タイム。飼育員さんが投げた魚を見事にキャッチ。
こちらはイルカライブプールの個体。ショー以外の時間も元気よく飛び跳ねていますので、水がかからないように注意してください。

ゼニガタアザラシたちのパフォーマンスも、とっても可愛くて魅力的です。のんびり屋さんに見える彼らも芸達者なプロの演者であり、来館者を楽しませるために多彩な技で魅せてくれます。可愛さと賢さを併せ持つ面も、彼らの人気の理由の1つだと思います。

ゼニガタアザラシの展示水槽。「ゼニ」の名を関しているので、水槽内には通貨型のオブジェがあります。
オブジェの中で休息中のアザラシ。のんびりした彼らの姿に癒されます。
餌の時間になると、アザラシたちが飼育員さんのもとへ集合。個体によって給餌ポジションが決まっているそうです。
5月ということで、鯉のぼりを掲げてくれました。季節によって、パフォーマンスで使用する小道具は変わるそうです。
胸ビレを大きく動かすアザラシたち。パフォーマンスの締めとして、来館者にバイバイしてくれています。

イルカやアザラシと並ぶアイドルと言えばペンギンです。本館で飼育されている種類は、南アメリカに棲むフンボルトペンギン。たくさんの個体が思い思いに過ごしている様相は、とても平和的で癒されます。

ここはフンボルトペンギンの展示場。立ってリラックスしている個体もいれば、元気に泳いでいる個体もいて、各ペンギンの個性が現れています。
みんなのアイドル、フンボルトペンギン。翼(胸ビレ)についているリングは、個体の識別のために装着されています。
フンボルトペンギンの特徴や生態に関するキャプション。本館のペンギンたちの家系図も共に展示されています。

ペンギンたちの展示場の近くでは、コツメカワウソやオタリアと出会えます。餌の時間になると、コツメカワウソたちが大はしゃぎして歓喜の声を上げるので、オタリアたちも気になっていることでしょう。感情豊かな水棲哺乳類たち素顔を観察すると、彼らの魅力に改めて気づけます。

コツメカワウソの給餌タイム。餌の時間だとわかった瞬間、カワウソたちは大喜びして飛び跳ねます!
プールサイドでくつろぐオタリア。アザラシとは違って、小さな耳たぶがあります。

先述の通り、本館では生き物たちの体感型イベントが多数実施されています。イルカライブプールの近くには休憩所が設けられていますので、各イベントの合間で休息をとっておきましょう。
休憩所の内装も、水族館らしくて素敵。水槽と合体したテーブルや、展示生物の映像が流れるモニターもありますので、休憩中でも来館者をとことん楽しませてくれます。

イルカライブプールの近くには、休憩室があります。水槽と合体したテーブルが水族館らしいですね。
休憩室内のモニターには、展示生物に関する映像が流れています。ハンドウイルカの赤ちゃんの誕生・成長記録は貴重な資料ですので、よく見ておきたいところです。

香川県の水域環境を学ぶことができ、なおかつたくさんの生き物たちの魅力を至近距離で感じられる飼育展示施設。高い学術性とエンターテインメント性を併せ持つ本館は、王道を往く素晴らしい水族館です。
お遍路巡りをされている方々。ぜひ屋島寺と共に本館を訪れて、生き物たちからパワーをもらってください。きっと、またエネルギー全開で次の札所へと歩き出せると思います。

新屋島水族館 総合レビュー

所在地:香川県高松市屋島東町1785-1

強み:国内外の多様な水棲生物を広範にフォローした王道的な水族展示、展示水槽の形状やユニークな手作りキャプションといった来館者の目を引く創意工夫、水棲哺乳類たちによるユーモラスかつ高度なショーパフォーマンス

アクセス面:四国の多くの水族館に当てはまることですが、自家用車かレンタカーでの来館をオススメします。屋島山上の駐車場に車を停めて、そこから10分ほど歩けば水族館に着きます。公共交通機関を利用される方は、JR屋島駅から路線バスかタクシーを利用してください。なお、屋島寺と同立地にあるので、お遍路さんになって霊場巡りと合わせて来館する手もあります

多種多様な海水・淡水生物を観察できるうえに、高度に洗練された水棲哺乳類たちのパフォーマンスも楽しめる素晴らしい王道水族館です。学術性とエンターテインメント性がハイレベルで融合しており、家族連れからコアな生き物好きまで、万人にオススメできる飼育展示施設です。貴重なアメリカマナティーの神秘的な佇まいには誰もが癒されますし、香川県の水域生態系の学習ができて生物マニアも大満足です。
独特な建屋設計も大いに楽しめるポイントであり、屋内エリアと屋外エリアからなる敷地内を探検気分でワクワクしながら観覧できます。展示区画ごとに水槽の形状や照明の強弱が変化し、来館者は非日常の空間へと一気に引き込まれます。
本館を訪れた際には、ぜひとも各種パフォーマンスや餌やり体験などのイベントにて生き物たちと触れ合ってほしいと思います。餌やり体験では、飼育員さんに間近で展示生物の特徴について解説していただけます。プロから生き物に関する様々なお話が伺えるチャンスを最大限に活かし、水族館を100%以上楽しみましょう。

ミュージアムショップの前にて待ち構えるマナやん。本館のアメリカマナティーたちには、ずっと元気でいてほしいですね。

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