全国水族館の旅【23】やながわ有明水族館
九州・福岡県の柳川市と聞いて、多くの人は伝統的な柳川下りをイメージするでしょう。しかし、生物好きの人の場合、真っ先に思い浮かべるのは有明干潟のワラスボとムツゴロウです。特に前者は本家エイリアン顔負けの強そうなお顔をしているので、マニアから絶大な人気があります。
そんな生き物好きの皆さんにオススメしたい水族館が、柳川のウナギ料理店の通り近くに立っています。いざ、九州の観光地で海のエイリアンと対面します。
舟に乗って、干潟のエイリアンのもとへ!
やながわ有明水族館が位置するのは、福岡県南部の柳川市。福岡市の天神駅から、西鉄天神大牟田線に乗って柳川駅にやって参りました。
ここから水族館への移動はバスを使うのがセオリーだと思われますが、筆者は敢えて冒険の道を選びます。
究極のアクセス手段。それは柳川下りの舟です!
水族館が位置するのは、ちょうど川下りの終着地付近。地域文化を学びながら目的地へ向かえるので、旅の道程がさらに楽しくなりますね。
船頭さんに柳川の歴史文化を語っていただきながら、川をゆったりと下っていきます。柳川下りは季節によって見える景色が変わり、四季折々の魅力があります。あまりに素敵な体験だったので、筆者はまた別のシーズンに訪れたい心地になりました。
川を下り終えて、ゴールの沖端商店街に到着。水族館はすぐそこです。
いざ来館ーーする前に、まずは腹ごしらえで柳川市の名物料理を食べることにしました。柳川のウナギのせいろ蒸しは当地の有名な料理であり、沖端商店街にはたくさんのウナギ料理店があります。
おいしいウナギを堪能したら、満を持して、やながわ有明水族館へと向かいます。沖端商店街のメインストリートから徒歩3~5分の近距離にありますので、町歩きを挟みながら来館することができます。
ワラスボやムツゴロウが息づく有明の海と、絶品のウナギが獲れる淡水域。魅力的な柳川市の自然を、本館でたっぷり学びたいと思います。
水棲生物への愛が伝わる地域水族館
至近距離で生き物の魅力を学べる展示
本館の水槽展示は濃密であり、柳川市の海水・淡水環境の水棲生物たちを間近でじっくり観察できます。水族館巡りが趣味の方なら、展示空間を見た瞬間に、本館が生き物好きな人々によって築かれた施設だとわかるでしょう。
フロアを逆時計回りに進んでいくと、さっそくスターの登場。有明干潟の代表的な魚、ムツゴロウです!
全長20 cmほどのハゼ類であり、日本国内では九州の限られた海域にしか棲んでいません。生息地域の水族館でムツゴロウの姿を拝めるとは、テンションが一気に上がります。
水槽の隣の階段で2階に上がると、かっこいいムツゴロウたちの躍動をとらえた生態写真が目に飛び込んできます。潮が引いた干潟において、ムツゴロウは活動的にジャンプして移動します。
ハゼと聞くとユーモラスなイメージがありますが、筆者にとってムツゴロウはかっこいい魚です。本館の生態写真を見て、ムツゴロウの勇ましさにシビれましょう。
2階エリアで展示されている生体は、ユニークで可愛いたち。珍しい白いナマコと、天使のようなタツノオトシゴの子供。マイペースで和やかな彼らには、たっぷりと癒されました。
2階を存分に楽しんだら、再び1階へ戻ります。水族展示の観覧を再開する前に、柳川市の水域にまつわる種々の展示を楽しみましょう。当地の生態系や、人と生き物との関わりについて学ぶことができます。
エイリアンと愉快な仲間たち
ムツゴロウに続き、当地の海洋生物で絶対に会っておきたい魚といえば、もちろん干潟のエイリアン。そう、愛すべきワラスボ!
ワラスボ、とってもかっこいいですね。本家のエイリアンに勝るとも劣らない風格があります!
干潟のエイリアンを見てテンションが上がったら、さらに観覧を進めましょう。ここはフレッシュな淡水魚たちを眺めて、心を洗いたいと思います。
続いて出会うのは、有明の美しい海水魚たちです。食卓にあがる魚から有毒魚まで、複数の種類が大きな水槽の中で混合飼育されています。
1階展示エリアの奥に進むと、眼前に大型水槽が出現。そこには、大型の淡水生物たちが雄々しく舞っています。
かっこよく可愛い生き物たちの存在感、ワラスボにも負けていません。ミステリアスな彼らの魅力に恍惚となってしまいます。
観覧を通じて、水族館を築いた人々の生き物への愛情がしっかり伝わりました。自然環境と歴史文化が共存する柳川地域にふさわしい、愛にあふれた自然科学の教育展示施設だと思います。
来館した子供たちは柳川と有明海の自然に触れ、地球環境の尊さを学んでいくことでしょう。地域自然の教育を通して、次世代に輝く自然科学の担い手が育つのだと思います。
やながわ有明水族館 総合レビュー
所在地:福岡県柳川市稲荷町29
強み:ワラスボやムツゴロウといった当地の海を代表する魚類の生体展示、水棲生物を近い距離で観察できる各種水族展示、生き物への愛情を感じられる拘り満載の内装
アクセス面:最寄り駅は西鉄柳川駅であり、福岡市内から特急に乗って50分ほどです。柳川駅からバスで移動するのが定石とされていますが、筆者のように柳川下りの舟で向かうのも大いにありです。船頭さんから柳川市の歴史を学びながら、ゆったりと下流地域へ向かいます。川下りのゴール地点からは、やながわ有明水族館まで徒歩5分ほど。伝統的な柳川の観光文化を感じつつ、水族館へ行けるとは最高すぎますね!
水棲生物への愛があふれる展示がいっばいの水族館であり、生き物が大好きなスタッフさんによって作られた施設であるとすぐにわかります。暖かみあふれる水族展示に加えて、ハンドメイド感あふれるキャプション、ムツゴロウの活動的な生態写真の展示など、館内の随所でスタッフさんの水棲生物への愛情が伺えます。
展示生物との距離が近く、魚たちの美しい姿を間近に感じられます。ワラスボやムツゴロウといった当地の有名魚類をじっくり観察できるのも本館の大きな強みです。
本館の飼育生物について詳しく知りたい方は、タイミングを見てスタッフさんに質問してみるのもいいと思います。とても丁寧に解説していただけますので、柳川の水域環境への理解が一気に深まるでしょう。生き物を愛する人々に育てられた地域の水族館、本当に素敵ですね。