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全国自然博物館の旅㊲豊田ホタルの里ミュージアム

5月下旬から6月上旬はホタルの発光観察のメインシーズン。すでにホタル観察に出かけられた方は多いのではないでしょうか。
幻想的なホタルの光を見るのなら、やはり名所に行くのがベスト。この度は、ホタル観察の聖地・山口県の豊田町に立つ自然博物館に行って参りました。


天然記念物の地でホタルが舞う!

山口県の下関市が擁する豊田町。この地は、国内屈指のホタル観察の聖地です。木屋川流域のゲンジボタルの生息地は国の天然記念物に指定されており、豊田町ではホタル観察シーズンになるとホタル祭が開催され、さらに夜間にはホタル舟が運行されます。

豊田町はホタル観察の聖地。町内の至るところでホタルがPRされています。

「ホタルのまち」という強みは、各所で最大限に活かされています。ホタルの里ミュージアムに加えて、当地の道の駅「蛍街西ノ市」でもホタルゆかりの観光を味わうことができます。
筆者は温泉施設「蛍の湯」で温まった後、地元ボランティアの方々からホタルの観察スポットについて教えていただきました。ワクワクは最高潮、ホタルスポットへ出発です。

下関の街からレンタカーに乗って、道の駅「蛍街道西ノ市」に到着。観光案内所や飲食店、そして銭湯も入っています。
道の駅で買ったヤマメの塩焼き。焼きたてホヤホヤで超おいしいです!
温泉施設「蛍の湯」。ホタルの観察時間は20時以降が最適ですので、それまで温泉に入ってゆっくり過ごすのもいいですね。
こちらは道の駅にある観光案内所。地元のボランティアスタッフの方々から、絶好のホタル観察スポットの情報を教えていただきました。

20時過ぎになって、筆者は一ノ俣温泉の近くのホタルの観察スポットへ車で向かいました。生物観察に限らず、山の中での夜間運転はゆっくり安全に行いましょう。動物が路上に出てくることも多々ありますので、他の車がどんなにスピードを出していても、安全速度を保って着実に目的地に辿り着きましょう

観察スポットでは、多くの人々がホタルを見にやってきていました。夜の水辺は、ゲンジボタルたちの淡い生体発光によって幻想的な雰囲気に包まれています。夜の闇に舞う優しい光はとても愛おしく、ホタルの生態についての強い関心が芽生えてきます。

一ノ俣温泉の近くにある川。宙に浮かんでいる光の点は全てゲンジボタルです
足元が暗いので、注意しながら観察。暗中での観察は危険が伴いますので、決して無理をしてはいけません
夜の水辺を舞うホタルたち。なんと美しい光、生きててよかった!

夜が明けたら、ホタルへの憧れと好奇心を抱いて、いよいよホタルの里ミュージアムへと向かいます。奇跡の昆虫・ホタルの秘密と、地域自然の生態系をとことん学びたいと思います。

ホタルの巨大イラストが博物館の目印。道の駅・蛍街道西ノ市から目と鼻の先の距離にあります。
下関市唯一の自然博物館。現代の下関市の自然環境だけでなく、古生物学についても学ぶことができます。

ホタルと地域環境の謎に迫る究極の自然博物館

不思議が満ちあふれるホタルの世界へ

好奇心とテンションMAXで入館。エントランスホールでは、入口から受付窓口まで無料の展示エリアが続いています。この区画の展示は、無料にするのがもったいないほど素晴らしいです!
豊田町の自然資料が満載で、地域環境についての理解が一気に深まります。初めて訪れる土地の自然を学ぶのは、本当に楽しいですね。

豊田町の自然観察スポット紹介マップ。山林と水域環境に恵まれた地域なので、たくさんの生命と出会うことができます。
豊田町の立体地図上に学術標本をプロット。どの標本がどこで得られたものなのか、わかりやすく示されています。
立体地図上に設置されたハネナシコオロギの標本。本州ではこの地域だけに生息しています
生物標本のみならず、化石も地図上に設置されています。愛好家の方はご存じかと思われますが、山口県は化石の名産地です
豊田町で捕獲されたツキノワグマの剥製。体重130 kgにも達する大きなオス個体であり、出現時は町内に大騒動が巻き起こったようです。

無料エリアで生き物好きの人々が特に感激するのは、博物館スタッフによって作られた下関の生物・化石図鑑だと思います。マニアが血眼になって読み耽るほどコアな内容であり、カニムシやザトウムシなどの生物群についても専門書レベルの知識が豪華に綴られています。あまりに素晴らしい資料なので、ぜひとも書籍化して販売してほしいと思いました

ズラリと並んだオリジナル図鑑と標本の展示コーナー。マニアの誰もが熱中する場所です。
学芸員が作った生物・化石オリジナル図鑑。ザトウムシなどのマニアックな生き物について詳しい情報が得られるので、ぜひとも隅々まで目を通しましょう。
カニムシの体の構造についての解説。専門書クラスの知識がわかりやすく説かれていますので、読めば読むほど引き込まれていきます。
各生物において、採集方法と飼育方法も記載。これ、書籍化したら絶対売れると思います!
キャビネットの棚を開けると、生物標本・化石標本が出現。キャプションも一緒に入っていて、引き出しの1つ1つに学びがあふれています。

無料エリアだけでも、かなり濃密な自然科学の学習ができました。
本番はここからです! 満を持して、メインの展示エリアへと入っていきます。ホタルが豊かに棲む下関市の自然環境とは、いったいどのような世界なのでしょうか。

有料エリアに入ると、真っ先にゲンジボタルの展示が目に入ります。スポンジに染み込んだ餌液体をおいしそうに吸っています。
生物標本と化石標本が組み合わさった「下関の自然史」の展示。下関には豊かな自然環境があると理解できます。
下関に生息する甲殻類。ダンゴムシもカニやエビと同じ甲殻類の一種です。
スナヤツメの成体と幼体の標本。ヤツメウナギは我々の知るウナギとは遠い生き物であり、厳密に言えば魚には分類されません。
立派なアンモナイトの化石。現生の動植物が好きな人はもちろん、古生物マニアにとっても下関は魅力的な地域です。

では、不思議に満ちたホタルの世界へ飛び込んでみたいと思います。本館の体験展示として、拡大模型を用いた大型ジオラマがあります。ミクロ化したと心地になって、思いきり展示を楽しみましょう。ホタルの視点に立って、身近な自然の中を冒険してみてください。

いざ、ミクロ化してホタルの世界へ。眼前に見えるのは、約800倍に拡大されたホタルの卵です。
カワニナに襲いかかるゲンジボタルの幼虫。実物の約60倍の拡大模型によって、迫力の観覧体験ができます。
頭上から獲物を狙うヤゴ。この60倍サイズで見ると、すさまじいかっこよさと怖さが伝わってきます。
おっきな怪獣……ではなく、淡水魚です。我々から見ると小さな魚たちも、ホタルの幼虫にとっては恐ろしい怪獣となりうるのです。
成虫になって水辺から離れても安心とは限りません。クモなどの恐ろしい天敵がホタルを狙っています。

ホタルの生態に関しても、拡大模型と標本展示で詳しく解説されています。あまり知られていませんが、成虫だけでなく幼虫やサナギも発光します。本館では、驚異と神秘でいっぱいのホタルの実像を、五感で楽しみながら学ぶことができるのです。

オスのゲンジボタルの拡大模型。オスはメスより1回り小さく、2節の発光器を備えているのが特徴です。
ホタルのサナギの拡大模型。ホタルはサナギも発光能力を有しており、この模型では電飾のギミックによって発光を再現しています。
ゲンジボタルのサナギの液浸標本。自然界では、このサナギが発光するのです。
ホタルの成長過程をモニターの画像展示で紹介。美しいホタルたちの生き様をしっかり目に焼きつけましょう。

あらゆる生命が多様に息づく下関の大自然

大型ジオラマゾーンを抜けると、下関市の自然科学について、さらに深い学習が始まります。ここからは生体展示のオンパレード! ホタルを取り巻く多種多様な生命が登場します。
昆虫マニアにとっては超嬉しいことに、かっこいい水生昆虫が出まくります。

下関の水生昆虫に関するキャプション。当地の流域環境の特徴も解説されています。
ヤンマ類のヤゴ。かっこよすぎる!
ヒメミズカマキリ。ミズカマキリより小柄で、前脚に2つのトゲを備えているのが特徴です。
コオイムシ。オスはイクメンであり、卵を背負って保護・保育します。

水生昆虫の次は、淡水魚の水族展示。魚マニア・水族館好きの人々が大興奮すること必至です。ホタルが棲むほど清廉な水環境には、魚たちもたくさん暮らしています。豊田町の河川生態系について、体系的に理解を深めましょう。

本館は水族展示が充実。淡水魚マニアのハートも熱くさせます!
やはりナマズの迫力はすごいです。日本各地の水域で上位捕食者として君臨しています。
ヤマトシマドジョウ。山口県や九州北西部の限られた地域に分布しています。
オヤニラミ。名前は怖いですが、子育てをする子煩悩な魚です。
生体だけでなく、標本でも魚類の展示があります。こちらのイシドジョウは、豊田町の木屋川で採集された個体です。

そして、水棲生物と聞いたらお察しの方もいらっしゃると思いますが、ホタルの幼虫も水生昆虫です。彼らはカワニナという貝類を主食としており、ホタルの棲む川にはカワニナの生息が絶対条件となっています。

すごいことに、本館にはホタルとカワニナを飼育する生態水槽があります。「生態水槽」とは、文字通り自然の生態系を再現した水槽であり、水質を浄化する水草・死骸を食べるエビなどの働きによって、ほとんど人の手を加えなくてもバランスが保たれている飼育空間なのです。
生態水槽を観察しながら、ホタルが棲む世界をイメージしてみてください。ホタルたちを保全するにはどういった環境が必要なのか、重要なヒントを得られるはずです。

ゲンジボタルの生態水槽。淡水魚やカワニナと一緒にゲンジボタルの幼虫が飼育されており、生態系の循環を観察できます。
ヘイケボタルの幼虫。ゲンジボタル生態水槽の手前の水槽にて飼育されています。
こちらはカマツカの赤ちゃん。ゲンジボタルの生態水槽の隣にて飼育されています。超可愛い!

魚や水生昆虫と同様に淡水生態系を構成しているのは甲殻類。どの子も学術的に興味深いうえに、食べられる種類が多いのが素晴らしいところです(笑)。清流に棲むエビとカニの姿を、本館の展示で覗いてみましょう。

テナガエビ。脚に密生した毛の特徴により、近縁種と識別できます。
スジエビ。河川・湖・溜池などに幅広く生息しています。
可愛いサワガニ。山の渓流でよく見かける淡水甲殻類です。
モクズガニの標本展示。オスとメスを並べると、違いが一目瞭然です。

これほど水棲生物の展示が豪華だと、次に期待するのは両生類です。山口県の両生類と聞いて、ぜひとも会いたいと思うのがナガトサンショウウオ。山口と九州の限られた地域にしか生息していない希少種なので、対面したときは超ハイテンションになりました(笑)。
もちろん、ナガトサンショウウオだけでなく、美しい両生類たちがたくさん展示されていますので、ぜひ全ての子たちと顔を合わせてください。

山口県と北九州の一部にのみ生息するナガトサンショウウオ。湿地や水田に棲んでいます。
チュウゴクブチサンショウウオ。山間部の渓流などで見られます。
ニホンアカガエル。日本に棲むカエルの中では最も早期に産卵します。
カエル類の骨格標本展示。種類によってかなり大きさに差がありますね。

展示ホールの壁面を見て驚かされるのは、すさまじい数の貝類の標本です。これは下関市に生息する陸産・淡水産貝類の網羅的な実物図版であり、大小問わず陸域と淡水域に棲む貝類の殻が一様に展示されています。その桁外れの種数は圧巻の極みであり、本館のスタッフさんたちの筆舌に尽くしがたい努力が伝わってきます。
極めて資料性の高いコレクション、しっかりと見て学びたいと思います。

陸産・淡水産貝類のキャプション。2016年より7年間かけて、下関市に生息する貝類の調査が行われました。
壁面にズラリと並ぶ陸産・淡水産貝類の殻の標本。これほど多種の貝類を育む下関市の環境の豊かさに感動します。
ヌマガイの仲間からカタツムリまで、数えきれぬほどの多くの貝類標本。採集・同定・標本作成には、ものすごい時間と労力を要していると思います。

昆虫好きの方々はとても気になっておられると思いますが、もちろん本館では下関市の昆虫の標本が豊富に展示されています。また、当地の昆虫たちに加えて、世界の魅力的な虫たちも多数登場。どの子もかっこよく、マニアの視線は釘づけです。

下関地域の昆虫たちを網羅的に展示。マニアにとって、昆虫標本は目の保養になります(笑)。
かっこいいコオニヤンマ。幼虫の標本と一緒に展示されています。
同じく、かっこいいミヤマクワガタ。子供たちにとって永遠の憧れの昆虫です。
海外の昆虫展示も充実。南アメリカ産のテナガカミキリは、アンバランスなほど脚が魅力的。

極めつけは、化石展示です。山口県は化石の大産地であり、その中でも豊田町の豊浦層群はアジア屈指のアンモナイトの発掘スポットとなっています。さらに、下関市においては恐竜の化石が産出しています。これからますますヒートアップしていく山口県の古生物学に注目です!

下関の化石に関するキャプション。古生代から新生代まで、幅広い時代の地層が下関地域に広がっています。
ダクティリオセラスの化石。豊田町の西中山層から産出するアンモナイトの中では、最もポピュラーな種類です。
これほど美しいアンモナイトがたくさん採れるとはすごい。化石ファンは、ぜひとも下関市を訪れてみてください。

生態も進化も徹底研究! ホタルマスターを目指せ!!

本館は究極のホタル専門博物館であり、ホタル研究においては天下無双の施設だと思います。なぜなら、他の誰も真似できないほど徹底的に深くホタルが研究・分析されているからです。
すごすぎることに、ホタルの脳・内臓・生殖器についての研究成果を展示で解説してくれています。本館の展示内容を理解すれば、間違いなくマスター級の知識が身につきます。

本館では、ホタルを解剖して脳や内蔵の研究が実施されています。ホタルの体の構造をここまで解明されているのは本当にすごすぎです!
ゲンジボタルの幼虫の本体と脳の液浸標本。写真情報の白い糸のようなものが、大脳と各種の神経節です。
ヘイケボタルのメスの生殖器(写真左側)も液浸標本として展示されています。筆者も顕微鏡を見ながら昆虫を解剖した経験があり、学生時代を思い出しました(笑)。
ゲンジボタルの幼虫の内臓(写真右側)。成虫と違って幼虫は捕食生物であり、成虫よりも大きな中腸を有しています。
ゲンジボタル成虫の心臓の液浸標本。私たちの心臓とは異なった形をしていますね。

体内の臓器のみならず、ホタルの体の様々な器官についても濃密に学習できます。情報量満載のキャプションと精巧な拡大模型により、理解がスムーズに進みます。ホタルの形態の精緻さを知ることで、彼らがあらゆる意味で美しい存在なのだと実感します。

ホタルの翅と脚の構造に関するキャプション。顕微鏡で拡大分析することで、それぞれの部位に隠された機能がわかるのです。
ゲンジボタルの後脚の拡大模型。先端の毛に粘液を溜めれば、ホタルはガラス面にくっつくこともできます。
ゲンジボタルの頭部模型。筆者はとても可愛いと思います!

生物の採集者にとって、強く関心を抱く展示は、ホタルの飼育方法の解説でしょう。なんと、本館では展示解説にてホタル飼育のノウハウを伝授してくれます。たくさんのホタルを育ててきた本館ならではのプロの技と知見、この機会にしっかりと吸収しておきたいと思います。

採卵方法から各成長ステージについて、ホタルの飼育法をキャプションでレクチャー。これ、ぜひ本にしてください!
ホタルの孵化容器。卵が孵るのに好適な条件を保つのも、飼育者の腕の見せどころです。
サナギの飼育法についても伝授してくれます。水と土の配分が重要なポイント。

これまで主に2種類のホタルの秘密について見てきましたが、ホタルは決してゲンジボタルとヘイケボタルだけではありません。日本国内のホタルは50種7亜種にも及び、豊田町でも9種類のホタルが確認されています。
次なる学びは、ホタルの多様性です。国内外のユニークなホタルたちに会いに行きましょう。

日本国内のホタル分布のキャプション。日本がホタル王国であることを実感します。
ヤエヤママドボタルの標本。ゲンジボタルとヘイケボタル以外にも、様々なホタルが我が国で暮らしています。
アキマドボタル。オスとメスが合わせて展示されているので、形態の理解が深まります。
ホタルの種類ごとの特徴をキャプションとパネルで紹介。個々のホタルにおいて、翅や触角の違いを詳しく見ることができます。
世界各国のホタルの標本。暖かい地方を中心に、世界には約2000種類のホタルがいると言われています

これまでホタルについてたくさんの秘密を学んできましたが、いよいよホタル博物学のメインテーマに切り込みたいと思います。それは、「ホタルは光でどうやって会話しているのか?」という謎の解明です。
光を放つ驚異の昆虫・ホタル。その神秘的なミステリーも、本館の調査研究により、確実に解き明かされ続けています。ホタルの光輝を科学の目で分析すると、生命の不思議が強く感じられます。

種類によって、光による交信様式が異なります。本館の研究により、日本のホタルには6パターンのコミュニケーションシステムがあると判明しました。
各種のホタルの光り方を図によって解説。静止時と求愛時で発光パターンや発光時間が違っています。
種類ごとの発光パターンを、ランプの明滅によって表現。ホタルたちの光り方を一気に比較できるわかりやすい展示です。

フィナーレはホタルが生み出す優しく暖かなイルミネーションです。展示ホール中央部には、ゲンジボタルとヘイケボタルが暗所にて生体飼育されています。
黒いカーテンをくぐれば、そこは愛おしい闇。ホタルたちの淡い光が尊く輝いています。自然界の不思議を感じられる素敵な展示ですので、心ゆくまでじっくりホタルたちと一緒に過ごしましょう。

ホタルの発光が見られる展示空間。暗所にてゲンジボタルとヘイケボタルが飼育されています。
幻想的に発光するゲンジボタルの成虫。優しくて神秘的な光が彼らの魅力。
こちらはヘイケボタルの成虫たちの発光。当然ながら、実際に肉眼で見た方がずっと鮮明できれいですので、ぜひとも本館を訪れてご覧ください。

ホタルの聖地に立つ自然博物館、筆者の予想をはるかに超える超絶ハイクオリティな学術展示施設です。超濃密なホタルの学術展示を味わえるうえに、下関の自然環境について網羅的な知識を得られるという、素晴らしい体験ができました。
これほど素敵な博物館が生まれる理由は何なのでしょうか。一流のスタッフさんがいることはもちろん、当地の自然環境と人との関わりの深さが関係しているのではないかと思います。ホタルの棲む環境を守り続け、舞い踊るホタルを愛でる豊田町の人々の尊い意思が、自然科学を飛躍的に発展させていくのだと感じました。

豊田ホタルの里ミュージアム 総合レビュー

所在地:山口県下関市豊田町中村50-3

強み:生態学・進化学・解剖学などあらゆる側面から徹底的に深掘りされたホタル研究の圧倒的な知見、大型ジオラマや発光行動の観察などホタルの魅力を五感で感じられる体験展示、網羅的に展示された下関地域の膨大な生物標本・化石標本展示

アクセス面:自家用車かレンタカーがベストです。複数の駅から豊田西市まで路線バスが出ていますが、来館日(もしくは前日)に野生のホタルを観察しに行くのなら、絶対に車が必要となります。下関の街から車で走れば1時間以内にアクセスできますので、スムーズなドライブとなるはずです。この機会を最大限活かすために、ホタルの里ミュージアムの来館と合わせて豊田町の自然スポットを車で巡ってみましょう。

展示内容は豪華かつ超々濃密であり、地域環境の自然博物館としては最強クラスだと思います。ひとたび入館すれば、生物マニアは徹頭徹尾エキサイティングな心地で学習に没頭することでしょう。生体展示も標本展示も大ボリュームかつ濃密な内容であり、すさまじい量の学術情報を得られます。
主役であるホタルの展示トピック・展示様式は多岐に亘っていて、ホタル研究では間違いなく全国トップの学術施設と言えます。本館ではホタルの秘密の解明に対して生態学的・解剖学的・遺伝学的にアプローチされており、展示を通して極めて高度なホタルの知見に触れられます。さらに、生体展示で実現されたホタルの発光観察は極めて幻想的で、本館を訪れれば、とても強いホタル愛が湧いてくることでしょう。

めちゃめちゃ素晴らしい施設なので、声を大きくして言います。
ホタルの学術展示をはじめ、何もかもが最高です。生き物好きの人は、ぜひとも本館を訪れてください!

本館は学術教育活動を通じて、地域社会に大きく貢献されています。学芸員さんから直接教えていただける体験学習、とても素晴らしい経験になることでしょう。

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