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2023年12月の記事一覧
【ショートショート】ルールを知らないオーナメント
計画は完璧だった……
……はずだった。
始まりは、私が国会議員として今日まで稼いだ裏金に税務署が気づいたという税理士からの報せだった。
あまりの巨額に、ガサ入れが行われることが決まり、その日取りは間近に迫っていた。
だが私は抜け目なく、問題のある資産を全て宝石に換えることに成功した。
問題は、ガサ入れの日にはこれを隠さなければならないことだ。
そんな時、私は地元でクリスマスツリー
【ショートショート】台s アニバーサリー
「灯台さん、開設百周年おめでとうございます」
時計台が言った。
「おめでとうございます」
天文台も続けた。
「ありがとう。でも、私も歳だからねえ。実は取り壊しが決まったんだよ」
「え!」
突然の告白に二人の台は言葉を失った。
「技術の進歩で船も灯台がいらなくなったしねえ……時代の流れには逆らえないのさ」
「いや、実は……」
天文台も告白した。
「僕も来年取り壊されることになったんですよ」
【ショートショート】麻子のスマホ または白骨化スマホ
麻子はスマホ中毒だった。
クラスメートたちとのLINE……ゲーム……推しの出演動画……
通学中も画面から目を離すことなく、ひたすらオンラインの世界に没頭する。
その夜も駅のホームを歩きながら、彼氏とメッセージのやり取りに夢中になっていた。
しかも、ちょっとした言葉の行き違いで、ケンカが生じそうな雰囲気に陥った。
何よそれ……
納得出来ない向こうの言い分に、脊髄反射的な言葉を連発し
【ショートショート】助手席の異世界転生
人間関係は転生だ。
付き合いが長いほど、その人にとって相手が何者かは転生のように変わっていく。
彼女にとって私は最初、弟だった。
まだ運転免許を取れない私を、二つ年上の彼女は自慢の愛車であちこち連れて行ってくれた。
僕のこと、どう思ってる?
そんな質問に彼女は笑って答えた。
「君は弟だよ」
その後、学校を卒業した僕は彼女の部下に転生。
彼女の運転する営業車の助手席で、彼女につ
【SFショートショート】プレリジン または着の身着のままゲーム機
今日こそ、このゲームをクリアする。
僕はケースからタブレットを取り出し、ミネラルウォーターで喉に流し込んだ。
薬ではない。
これが、いわばゲーム機なのだ。
ケミカルゲームマシン〈プレリジン〉。
これを飲むだけでゲーム世界に没入し、ゲームの主人公となり、まさに実体験のようにゲームをプレイすることができる。
どんなデバイスもメディアもネットワークすら必要としない、着の身着のままで遊べる