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「稚拙で猥雑な戦争劇場」8

場面8/ルバム西の砂漠地帯(聖地)

    白い服に着替えさせられたピーターが黒マントの兵士3人とエロメ
    イド、ベルマーレ、そして明神に連れられ座らされる。カメラがセ
    ットされて、ユーチューブのあの映像のような状況になる。そこへ
    到着するフセイン、フーセン、神田川、百合子、不二子。明神はほ
    ぼイスラムの人みたいな服装になっている。

フセイン「皆さん、あちらです」
不二子 「ああ・・・」
百合子 「ピーター!(泣き崩れる)」
フーセン「百合子・・・」
神田川 「閣下。これは国際問題になります。中止すべきだ」
フセイン「あの男が憎いわけではないがこれも兵士の務めでしょう。彼はこ
     の国で初めての郵便配達人。オバマ大統領に良い手紙を書いてく
     ださい」
不二子 「はじめて?先日私が見たこれと同じ光景は?」
フセイン「それはルバムではありません。国内のテロ組織でしょう」
百合子 「ピーター!ピーター!」

    ピーター、ふと百合子と目が合う。

ピーター「百合子さん!」
百合子 「ピーター!ピーター!ちょっと離して!離してよ!フセイン閣
     下。彼は私の大切な友達なんです。どうかお許しを!どうかお許
     しを!」
フセイン「なりません」
ピーター「百合子さん!心配しないでください。今からこのカメラからハト
     が出ることになってるんです」
百合子 「・・・え?そうなの?」
ピーター「(ニッと笑って)アメリカンジョークです」
百合子 「ピーター・・・」
エロ  「くだらない。では、VTRスタート!」

    回り始める映像。剣を抜くとギラリと光る刀身。

エロ  「あの紙を読め(カンペ)」
ピーター「私の名前はピーター・アンダーソンです。祖国はアメリカです。
     宗教はプロテスタントです。私は昨年の9月にルバムに兵士とし
     て入国しました。戦闘の際にルバムの兵士に取り押さえられ捕虜
     となりました。この争いの原因は、アメリカ大統領であるバラ
     ク・オバマだと思います。バラク・オバマは私の人生を大きく悪
     くしていきました。アメリカがルバムへのミサイル攻撃を止めな
     いことは平和を大きく乱す行為です。世界の戦争の根源はアメリ
     カにあります。全世界が平和になるためには、アメリカが戦争行
     為をやめることがとても大切だと考えます・・・先日私の目の前
     でアメリカのミサイルによって殺されたルバムの子供たちを見ま
     した。彼らには何の罪もないのに・・・」

    ロケット花火がヒュンヒュン飛ぶ。
    ざわつく兵士たち。

織部の声「待ってー!待ってって言ってるでしょー」
フセイン「何事ですか?」
織部  「やめてくださーい!」

    全身にコーラの缶やらで作った防具を着けた織部がくる。
    ピーターの傍に来て弱そうな空手の構え。
    エロメイド、ベルマーレ、兵士たち、銃を織部に構え、囲む。

百合子 「織部さん!」
織部  「この処刑、中止にしてくださーい!」
ピーター「織部さん!」
フセイン「あなたは、車のセールスマン!」
織部  「フセイン閣下、この処刑、中止にしてください」
フセイン「何なんですか?あなたも死にたいんですか」
織部  「死にたくない!この爆弾が爆発しますよ」
明神  「織部さん!」
織部  「明神くん!何で君がここに!」
明神  「織部さん、何やってんすか?」
織部  「何て格好してるんだい?」
明神  「いやいや織部さんのほうがおかしいでしょガランガランって」
織部  「それにしても・・・随分探したんだよ。いや、ともかく無事で良
     かった」
明神  「いやあ久しぶりっす」

    爆弾の導火線に火がつく。慌てる一同。
    爆竹が一発だけ「パン」

明神  「なんですか今の?」
織部  「君のせいで計画が台無しになっちゃったよ!バカ」
明神  「バカはあなたでしょ。こんなもんで騙せるわけないでしょ!」
織部  「これでも一生懸命考えたんだよ!僕の苦労も知らないで」
明神  「知りませんよ。そんなんだから明日香ちゃんを奥さんに取られち
     ゃったんですよ!」
織部  「あ、それ言ったな。泣くぞ!どの口が言ったんだ。おい!お
     い!」

    銃声。フセインが一発。

フセイン「聖なるイスラムの儀式を邪魔するつもりですか」
明神  「あ、すいません・・・邪魔です」
織部  「ど、どきません!こんなことしちゃダメです!」

    雲行きがいきなり怪しくなり、雨が降ってくる。
    遠雷が聞こえる。

フセイン「邪魔をするならあなたも銃殺します。アッラーの下に」
織部  「いや、それはちょっと」
ピーター「織部さん、いいんです」
織部  「何がいいんですか!こんなの全然良くありませんよ!フセイン閣
     下、この人はアメリカなんて背負ってない。ただ給金が欲しくて
     軍隊に入っただけです。就職しただけなんですって!」
明神  「織部さん、どいて」
フセイン「我がイスラムの儀式を邪魔するものは許しません。エロメイ
     ド!」
エロ  「発砲用意!」

    兵士たち、発砲準備の構え。

織部  「待って待って!」
エロ  「撃て!」
織部  「ダメー!」


<ここまで拝読いただきありがとうございます。ご期待以上の内容になっていると思いますので、ここからは有料となりますがぜひ読み進めていただきたいです>

    銃声とほぼ同時に物凄い稲光と轟音ともに雷が落ちる!
    バリバリバリバリ!
    舞台上が逆光で見えなくなる(または暗転して見えなくなる)。
    状況が落ち着くと、織部とピーターが倒れている。

百合子 「織部さん!ピーター!」
明神  「織部さん・・・」

    織部が起き上がる。

織部  「痛ってて」
百合子 「織部さん!」
織部  「・・・ピーター大丈夫?」
ピーター「・・・」
織部  「ピーター?ねえ!ピーター!ピーター!」
百合子 「ピーター!いやー!」
織部  「あんたたち、人一人の命をなんだと思ってるんですか!」
フセイン「・・・」
織部  「絶対許せない。僕は絶対にあなたを許しませんよ。宗教は正しい
     生き方をもたらすんでしょ。イスラム教だってそうなんじゃない
     んですか?」
フセイン「アッラーは人として正しく生きる術を教えてくれます」
織部  「だったら人を殺すなんて・・・おかしいじゃないですか」
フセイン「イスラムは同胞を大切にせよと説かれている。我らの道を阻むも
     のは同胞ではない・・・」

    織部、缶カラの装備を投げ捨てて。

織部  「そんなのおかしい」
フセイン「何か?」
織部  「そんなのおかしいって言ってるんです。神様は偉いですよ。確か
     に偉いんでしょうよ。でもいないじゃないですか。見えないじゃ
     ないですか。見えない神様のために人を殺したり、本当にそれで
     ここ(胸)が痛まないんですか?幸せに暮らせてるって言えるん
     ですか?フセインさんだって気づいてるはずです。あなた、ピー
     ターの顔をまともに見れなかったじゃないですか」
フセイン「アッラーは全てに優先されるのです」
織部  「あなた、胸が痛んだんでしょ!」
フセイン「黙りなさい」
織部  「黙りません」
フセイン「私の胸の痛みなんてどうでもいい」
織部  「あなた人殺しなんてしたくなかった。なんでアッラーの変な教え
     をそんなにまでして守らなくちゃいけないんですか」
フセイン「変な教え?」
織部  「だって変じゃないですか・・・」
フセイン「エロメイド!」

    エロメイド、織部に銃口を向ける。

明神  「え?ちょっとちょっと、エロさん何してるんですか?」
エロ  「閣下の命令です。逆らう気ですか?」
明神  「いや、閣下に逆らうっていうか、ジハードってこういうことな
     の?」
エロ  「ケンさん?何を言ってる?」
明神  「織部さんの言ってることってエロさんが教えてくれたことと同じ
     だと思うんだけど」
エロ  「ん?」
明神  「ジハードって神様のために努力するってことでしょ?」
エロ  「そうだ。そのために私たちは戦ってる」
明神  「いや戦うのはいいんだけど、それって人を殺したり戦争したりす
     ることなの?」
エロ  「イスラムを守るためにはそれも必要だ」
明神  「この人を殺すことってイスラムを守ることになるの?このオッサ
     ンを?このカーショップヤマダの営業主任になったばっかりのオ
     ッサンを?」
エロ  「それは・・・」
明神  「エロさん言ってたじゃん。アッラーはあらゆるものが正しくある
     べきだという教えだって。イスラム教いいじゃん。イスラム教が
     すげえカッコいいから俺、ここに住んじゃおうっかなって思って
     たのに」
織部  「え?」
エロ  「ケンさん」
明神  「でもこのオッサンを殺すのがアッラーの教えなの?」
エロ  「閣下・・・」
フセイン「コーランを否定するつもりですか?」
織部  「閣下違います。ジハードという言葉に誰かが都合のいい解釈をつ
     けたってことじゃないですか」
神田川 「そうだ。憲法9条をねじ曲げた解釈をしたのと同じだ。フセイン
     閣下はそれを許さないと仰ってたじゃないですか」
フセイン「だ、黙りなさい」
フーセン「閣下・・・」
百合子 「あなただってアメリカ大統領と同じじゃないですか!平和よりも
     自分の利益を優先してるだけじゃないですか!」
フセイン「違います」
百合子 「圧倒的に弱いものを徹底的に攻撃して、それをジハードだの聖な
     る戦いだのって。国のトップがそんなんだから世界から戦争がな
     くならないんです!」

    思わず百合子を蹴り倒すフセイン。
    手を縛られたままなので転げる百合子。

神田川 「百合子!」
フーセン「何をするんです?」
フセイン「ママ!この国の総統閣下は私です」
フーセン「私はあなたの母親です」
フセイン「ママ、イスラムの心を失わないでください」
フーセン「閣下、アッラーは殺人を望んでいないと思います。アメリカがル
     バムを攻撃した報復として、ジハードを都合よく解釈して人殺し
     をするのは、私も違うと思う。それでは永久に戦いもアメリカへ
     の憎しみもなくなりません」
神田川 「閣下、私がルバムにできることは何でも協力する。」
フセイン「信じられると思いますか?日本人はまともに宗教の信仰すらでき
     ないじゃないですか」
神田川 「それは違います!」
フセイン「何が違うんです。クリスマスの一週間後にお寺に行く国でしょ
     う」
神田川 「私たち日本人は家族を守るために生きているんです。いわば家族
     が宗教。私たちは『家族のため』になら命を賭けられます。少な
     くとも私はそうだ!」
百合子 「パパ・・・」
フセイン「家族が宗教ですって?」
神田川 「そうだ」
フセイン「私たちも家族は大切です。しかしそれ以上にアッラーが優先され
     るだけのこと」
神田川 「アッラーのためなら家族を悲しませてもいいんですか!あなたの
     お母様が悲しんでいるのに、捨て置くんですか?」
フーセン「・・・」
フセイン「・・・」
神田川 「・・・」
織部  「フセイン閣下、あなたも苦しいんじゃないですか?」
フセイン「・・・」
フーセン「閣下、この人たちを解放しましょう」
フセイン「ママ、ママ、分かってますか?彼らを解放しても爆撃は終わりま
     せん」
フーセン「彼らを殺しても、爆撃は終わりません」
フセイン「でも・・・でも・・・」
フーセン「この人たちを殺したら、私たちの国ルバムのプライドに大きな傷
     がつきます」
フセイン「ルバムのプライド・・・」
フーセン「きっとパパもムハンマドも同じことを言うはずです」
織部  「ムハンマド?」
フセイン「ママ、父も兄もアメリカに殺されたんです。私はこの国を守りた
     いだけ・・・アメリカに対抗するためならテロ組織のような外国
     人処刑も必要なんです」
織部  「フセインさん、ルバムって昔はいい国だったんでしょ?アメリカ
     に攻撃されるまでは幸せな国だったって、本で読みましたよ」
フーセン「チンチン、ごめんなさい」
フセイン「ママ・・・」
フーセン「ありがとう。私たちの国を守ってくれて」
フセイン「ママ・・・」
フーセン「・・・」
フセイン「・・・エロメイド、ベルマーレ、日本人を全員解放しなさい」
エロ  「わかりました。ベルマーレ」
ベルマ 「テニス」
フーセン「ありがとうございます。閣下」
神田川 「ありがとう、フセイン閣下」
不二子 「ありがとうございます」
ピーター「よかったです」
織部  「よかった、よかった。な、ピーター」
ピーター「はい!織部さんのおかげです」
全員  「・・・えええー」
百合子 「ピーター何で生きてるの?」
ピーター「アメリカンジョークです。起きるタイミングを失ってしまいまし
     た」
全員  「ええええー!」
織部  「でも、生きてて良かった」
百合子 「あれ?でもピーターはどうなるの?」
ピーター「本当だ。私はどうなるんでしょう?」
不二子 「彼はアメリカ兵です。総理が口出しできるものではありません」
百合子 「パパ!」
神田川 「不二子くんの言うとおりだ」
百合子 「そんな・・・助けてあげようとは思わないの?」
不二子 「総理が介入できるのは日本人だけです」
神田川 「不二子くんの言うとおりだ」
百合子 「総理としてじゃなく、同じ人間として聞いてるの!」
神田川 「無理だと言ってるだろう!」
百合子 「パパ!」
不二子 「百合子さん、総理が総理である以上、他国の問題には介入できな
     いのです」
百合子 「もういい。私がお願いする」
神田川 「やめるんだ!」
フセイン「アメリカの人(銃口を向ける)」
ピーター「は、はい!」
フセイン「私はアメリカ人をどうしても許せない。何故だかわかりますか」
ピーター「ダディとブラザーをアメリカの爆撃で亡くしたからですよね」
フセイン「そうです」
百合子 「閣下!お願いします。ピーターを助けてください」
織部  「僕からもお願いします」
フーセン「・・・・」
フセイン「・・・・・・あなたを解放することは・・・無条件ではできませ
     ん」
ピーター「は?」
フセイン「あなたも「ルバム無差別爆撃」の事実を知りませんね」
ピーター「ルバム無差別爆撃?何のことですか?」
フセイン「ここでその事実を学びなさい。そして祖国に戻ったらどこでもい
     いので新聞社に発表しなさい。またインターネットで公表しなさ
     い。あなたにできますか?」
ピーター「は、はい。何でもやります」
フセイン「但し、これはあなたの祖国に対するスパイ行為になるかも知れま
     せん」
織部  「え?そうなの?」
ピーター「分かっています」
織部  「え?分かってるの?」
ピーター「ええ、織部さん。私、分かったんです。戦争がなくならないのは
     私の国が思い上がっているからだと。私はアメリカのミサイルで
     子供たちが死んだのを見ました。百合子が泣いているのを見て、
     世界平和のために私が少しでもできることをしたいと思いまし
     た。百合子さんのおかげです」
百合子 「私のおかげ?」
織部  「でもあなた、さっきまでここで処刑されそうだったのに」
ピーター「だって私はアメリカ人ですから。ルバムの人が怒るのは仕方な
     い」
織部  「ピーター。あなたかっこいいですよ」
ピーター「アメリカンジョークです」
織部  「お前のアメリカンジョーク分かんないよ」
フセイン「ベルマーレ!」
ベルマ 「テニス」

    ピーターを解放するベルマーレ。

ベルマ 「ヨカッタネ」
百合子 「閣下。ありがとうございます。ピーター、よかった・・・」
神田川 「ピーターさんは日本大使館で保護させていただきます」
不二子 「その後は安全にアメリカまで送らせていただきますのでご安心
     を」
ピーター「ありがとうございます」
百合子 「フセイン閣下。私、ルバムに残ります」
神田川 「なんだって?」
百合子 「私、ここでみなさんと一緒に戦いたいんです」
神田川 「百合子、バカなことを言うんじゃない。ここは・・・」
百合子 「世界の火薬庫ルバムでしょ。でもこの国はきっと平和になる。そ
     れを見届けたいの」
フーセン「百合子ちゃん・・・」
神田川 「いいはずないじゃないか」
百合子 「私もう決めたの!」
フーセン「・・・神田川百合子さん。あなたの祖国は日本です。日本へ帰り
     なさい」
神田川 「そうだ。百合子、帰ろう」
百合子 「どうして?」
フーセン「ここは紛争地域です」
百合子 「そんなこと分かってます」
フーセン「・・・ここにいてはいけません。それは私のため、そしてあなた
     のため・・・」
百合子 「でも・・・」
神田川 「ほら、行くぞ百合子!」

    神田川、百合子の手を引いて無理やり引き離そうとする。

百合子 「いやだ、いやだ、いやだ」
織部  「そんな無理やり連れ戻さなくてもいいんじゃないですか?」
神田川 「邪魔をするな。百合子は私の娘だ」
織部  「僕の友達です」
神田川 「ふざけるな。百合子!」
織部  「とにかく手を離してあげてくださいよ」

    フーセンが近づいてきて、神田川を抱擁する。
    虚を突かれる神田川。

不二子 「総理!」
神田川 「何を・・・するんだ」
フーセン「神田川総理、あなたは常に自分が正しいと思っているんですか」
神田川 「そんなこと思っていません」
百合子 「思ってるじゃない。私の意見なんて何一つ聞いてくれない」
神田川 「そんなことはない」
フーセン「でも百合子さんはそう感じています」
神田川 「・・・」
フーセン「ちゃんと百合子さんの話を聞いてあげてください。そしてちゃん
     と見てあげてください。百合子さんがあなたを見限る前 
     に・・・」

神田川 「見限る?私は百合子のために・・・」
織部  「総理、あなたは百合子ちゃんのために日本に連れ戻すんじゃな
     い。あなたが百合子さんを愛しているから、百合子さんを連れ戻
     したい。そうですよね」
神田川 「そ、そうだよ。それが百合子にとって一番いいと思うから」
織部  「また。やっぱり自分が一番正しいと思ってる。どれが百合子ちゃ
     んにとって一番正しいかなんて、親が決めることじゃないでし
     ょ。ちゃんと言ってあげてください」
神田川 「うるさい」
織部  「じゃあ何で百合子ちゃんを連れ戻したいんですか?」
神田川 「俺が・・・百合子と一緒に暮らしたいからだ」
織部  「じゃあそれを百合子さんに言ってあげてください」
フーセン「言ってあげてください」
神田川 「何でだ?百合子はもう分かってるだろう。なあ百合子」
百合子 「言って・・・」
神田川 「・・・俺は、百合子と一緒に日本に帰りたい。俺は百合子を愛し
     ている。これは本当なんだ。信じてくれ。俺は百合子を愛してい
     るから、一緒に日本で暮らしたいんだ。百合子、俺と一緒に日本
     に帰ってくれないか。頼む!」

    間。百合子の心が揺さぶられる。

百合子 「これからは、私の意見も聞いてくれる?」
神田川 「聞く、聞くよ」
織部  「して欲しいこと、あるよね?」
百合子 「・・・・・・パパ」
神田川 「なんだ?」
百合子 「パパ・・・・・・頭ポンポンして」
神田川 「え?」
百合子 「頭ポンポンして!!」
神田川 「あ、ああ」

    百合子の頭をポンポンしてやる神田川。

百合子 「パパ・・・」
織部  「良かったね、百合子ちゃん」
百合子 「ありがとうございます」
フセイン「では、出国許可を出しましょう」
百合子 「そうだ閣下、ママと一緒に日本に来ませんか?そうすれば」
フーセン「私はルバム人です。おしょうゆの匂いは耐えられません」
フセイン「神田川総理。『ルバム無差別爆撃』は日本で公表していただける
     のか」
神田川 「必ず」
フセイン「では一つだけ。ルバム無差別爆撃が起こった理由です」
神田川 「聞かせてください」
フセイン「当時のテロリスト集団『アルカイダ』のメンバーがCIAに数名
     捕らわれました。その中に4人、ルバム国籍の者がいたからなの
     です。それをどう感じるかはそれぞれでしょう。ただ、そのこと
     も全て公表していただいて構いません」
神田川 「石油の利権のため、報復を理由に戦争を仕掛ける国もあるそうで
     す。フセイン閣下、色々あったが、個人としてありがとう」
フセイン「私も、日本の総理大臣のあなたを信じようと思います」
織部  「あ、そうそうそう。閣下!ミサイル発射台付きの車のお見積も
     り、戻ったら出しますんでご検討ください」
フセイン「ああ、それはもう要りません」
織部  「ええ!マジですか・・・ああー」
フセイン「その代わり、普通の自動車を100台、車種はこだわらないので
     見積もりを送ってください」
織部  「はいっ!かしこまりました!」
フーセン「私のアントニオも買わせていただくわ」
織部  「アントニオって何ですか?」
エロ  「アントニオはアントニオですよ」
織部  「明神くん、日本に帰ったら忙しくなるよ」
明神  「織部さん、俺、会社辞めます」
織部  「え?どうして急にそうなるの?」
明神  「俺、ここに住みます」
織部  「君、さっきもそんなこと言ってたけど」
明神  「俺、運命の女性に出会ってしまったんです」
織部  「運命の女性?誰?」
明神  「エロさん」
エロ  「はい?」
織部  「エロ?君?」
明神  「あの、えーと・・・結婚してください!」
織部  「結婚!」
エロ  「・・・オッケー」
織部  「軽いなー」
明神  「織部さん、俺、やったよ!結婚できるよー!」
織部  「全然ついていけない」
ピーター「アメリカンジョークですか?」
フーセン「あら、素敵じゃない。結婚したらルバム国民になれるわよ。ね
     え」
フセイン「はい。二人を祝福しましょう」
百合子 「おめでとう」
織部  「おめでとう」

    二人に祝福の拍手を送る。

    暗転。またはセット転換。
    Two Tries/Franky Goes To Hollywood
    ファーストシーンのような状態になる。

9に続く


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