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【文章力養成講座】ライター向けと企業研修の違い

ライター向けの文章力養成講座と企業向けの文章力養成講座の2パターンの講師を経験し、痛切に感じたことは「学びへのモチベーション」のちがいだ。

これまで、ライター向けの養成講座を行ってきたのだが、企業向けは今回がはじめて。ちなみに、ID(インストラクショナルデザイン)という、アメリカでは一般的で日本でも普及しはじめている人材育成の根本的なメソッドに則って構築している講座を実施している。
今回、文章力養成の研修をご依頼ただいたクライアントさんも、IDでセミナーを作っていたので、私たちの行ってきたことに関心を寄せてくださったのだと思う。

どんな講座をやるにせよ、アジェンダを練ったり、テキストを作り込んだり、課題を読んだりするのは、簡単なことではない。ある種の覚悟が必要だ。それが、はじめての試みならば、なおさら。
そして、同様にはじめて行うことには学びがある。今回はその学びが特に大きかった。

「学びへのモチベーションの必要性」

ライター養成向けの講座と大きく違うのは、受講者の学びに向かうモチベーションだ。ライターの卵は「文章で食っていきたい」と思っている。だから、私たちが行う講座にも、「学べることは吸い尽くしてやろう」、そんな気持ちで臨む。

ライターになる前や、駆け出しライターになった時の私も同様だった。受講して、いかに学びの吸収率を高めるかばかりを気にしていたように思う。課題は自分のベストが出せるように何度も読み直し時間をかけたし、講座が終われば講師に質問に行く。それが「ふつう」だった。

しかし、企業向け講座ではこのモチベーションは「ふつう」ではない。もちろん文章のレッスンに興味がある方もいるが、そうではない層も厚い。

少し自分のことを振り返る。
会社員だった頃、「3年目研修」なるものがあり、そこでは5つだか6つだか設定された講座をすべて受講しなければいけなかった。
例えば、経理研修は「私、経理部になることは死んでもない」と思いながら受けていた。(実際に、会社はそんな無謀すぎるチャレンジは絶対しない。)そのため、モチベーションは低い。数字が苦手な私にとっては、ただ時間がすぎるのをじっと待つだけの講座となった。
他にも、「マーケティング研修」は、苦痛まではいかないものの、「別にモノを売っているわけではないしな」と、ぼんやりテレビを観るような気持ちで参加していた。

つまり、研修に参加するに当たってモチベーションはなかった。そのため、内容はさっぱり覚えていない。学びの効率は最低レベルだったと思う。

「学びたい人を抽出する」という考え方


「学びたくない人を研修に参加させても意味がないから、もうやめる」というのも企業の1つの選択肢だろう。「学びたい人だけを抽出する」ことができれば、ライター向のオープン講座のように吸収率を高めることができる。

企業研修でいえば、実際に日々ライティング業務を担っている人だけに限定する。さらには、キャリアとして「文章力の必要性」を感じている人だけの任意参加とする。こうすることで、学習効率が上がる。

少し脱線するが、私は「自分のしたいこと」を伸ばすことで幸せな働き方ができると思っている。一方で、すべての科目で「オール5」を取りましょうという組織的な教育の雰囲気は苦手だ。
誰もが企業の中でありながらも個人事業主のように、得意な部分を生かして仕事をすることでパフォーマンスの高い組織になる。そう思っている。
教育から離れて組織の話になってしまったが。だから、平等意識で横並びに同じ教育を受けさせようとするのではなく、学びたいというモチベーションを核にして受講者を抽出していく方法は「アリ」だと感じている。

「学びへのモチベーションを設計する」

とはいえ、企業の方針として、「全員に学ぶ機会を設けたい」「ジョブローテーションでいろいろな部署を経験させる方針なので、最低限の力をつけさせなければいけない」という考え方もあるだろう。

その場合には、研修前にモチベーション生むような設計をする必要がある。
文章力の講座であるならば、業務の中で書く仕事が与えること。
書いていく中で、「なんでこんなに時間がかかるんだ」「うまく表現できない……」という体験をしてから、課題意識を持った状態で研修に参加させる。これにより、学びの吸収率を上げる。

自分で言いながら、もし私が1週間経理の仕事を命じられて、「な? 必要だろ? だから研修も行ってこい」と言われたら、発狂しそうだ。人のモチベーションをコントロールするのは簡単なことではない。
だから、教育には覚悟が必要なのだ。

受講者目線に立つということ

ライター向けの講座は既にモチベーションが仕上がっている状態での講座だった。それはそれで、「大きな期待に応えなければ」というプレッシャーもあったが、「ライターになりたいと思って、なった」自分と受講生は同じ目線だった。

しかし、企業向けの場合はそうはいかない。
「書くことなんて大嫌い」という人もいるし、「ぶっちゃけ文章力なんて必要ないよね?」と思っている人もいる。アンチでなくとも、「会社に言われたから〜」となんとなく参加している人も多い。

この大前提を理解しているつもりでいたけれど、「完全な理解」には至っていなかったように思う。
もしかしたら、既に企業の中にいた時の自分の感覚を忘れてしまっているのかもしれない。企業の中で生きる人たちのマインドに少し疎くなってしまったのかな。

今回は、学びへのモチベーションの重要性を考えるよい機会となった。当たり前といえば、当たり前のことなんだけれど。(これも含めてIDだろ、って言っちゃえばその通りなんだけれど。)
これから、大人向けの教育だけでなく、学校教育について考えていく中でも、とても深い学びの機会をもらったように思う。
やっぱりモチベーションをどう生んでいくかが、あらゆる学びの肝なんだ。

いつもありがとうございます!スキもコメントもとても励みになります。応援してくださったみなさんに、私の体験や思考から生まれた文章で恩返しをさせてください。