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ムガとわたし

「ムガ」
「ムガ」

まだしゃべりはじめたばかりの頃の娘(T子)がムガムガ言いだした。

息子が「カガ」と言いだしたのはもう少し大きくて、会話で意思の疎通ができたから「カガ=蚊」とすぐ特定できた。T子はもっと幼かった。


「ムガ」を推理する日々が始まった。


なんとなくムガに聞こえるけど、ほんとうはムガって言ってないかもしれない。念入りな確認が必要だ。


「ね、Tちゃん。ほんとうにムガ? もうちょっと大きい声で言ってみて」

「ムーーガーーッ!!!」


何回も発音を頼んだらムガを絶叫された。ムガ。リスニングに問題はないようだ。

では「ムガ」がいったい何を意味するのか。ガムと関係しているのか? それともムガール帝国?

私の知識の中でムガといえば・・・竹脇無我。

竹脇無我は昭和のイケメン俳優。もう亡くなっているが、初めてあの人を見たとき私本当に衝撃を受けました。こんなに甘いマスク(マスクは昭和語で顔立ちの意)の人間がいるのかと。正統派の二枚目なんだけどクールさもあって、また声もいいの。憂いがあるところが素敵と思っていたけど、のちに実際うつ病に苦しんでいたみたいでなんだか納得しました。
しかも名前、無我って。本名なんですよ、無我さんて(ちなみに加賀丈志は芸名)。


最初は「宇宙」という名前を父からつけられる予定であったが、母の反対で「無我」という名前になった。(Wikipediaより引用)


名前に我がつくなんて、京本大我か河相我聞か我修院達也ぐらいですわよね(けっこういた)。


しかし昭和19年生まれのイケメン俳優の存在を2歳の子どもが知っているわけもないし、万が一もし「ムガ=竹脇無我」だったとしたら・・・
ねえどうして?!


そうこうしているうちに、私のムガと向き合う日々はフィナーレを迎えた。

ぬいぐるみと絵。
彼女が差し出すその二つの物証により、ムガの真相は明らかになった。


ムガはくまだったのである


推理してみるに、KUMA の母音と子音を入れ替えると MUKA。

MUKA の KA が つたない発音により GA に聞こえていたようなのだ。

小さい子の場合、母音と子音が入れ替わってしまうことはよくあることらしいです。これが今回の私が #子どもに教えられたこと である。


そして時は令和。T子もすっかりお姉さんになり、鏡で自分の顔を見て「やだー。クマできちゃった」とはっきりクマと発音し、目の下にコンシーラーをほどこしたりなんかしている。

芸能界的には今や「ムガ」と言えば竹脇ではなく塚地。ドランクドラゴンというコント芸人でありながら名バイプレーヤーとして映画やドラマにひっぱりだこ。得難い存在感なのはわかるが、つい先日テレビで久々にネタを披露しているのを見てさすがのおもしろさに感服。ネタのほうにも力を入れてほしいと強く願った。芸人も俳優も、となると忙しいだろうからこの言葉を送りたい。

「たいへんだろうけど、ムガムチュウ&ガムシャラにがんばって! ムガ蚕もムガベ大統領も天国から応援しているよ!」

※ムガ蚕:インド のアッサム地方に生息する貴重な蚕。ムガベ大統領:37年間ジンバブエに君臨した元大統領。


時をもどそう。
ムガ=くまが判明したと思ったのもつかのま。今度はT子が

「メカ」「メカ」

と言いだしたのである。わたくし、今度はメカと向き合わねばならない。
幼児語探偵の日々は終わらない。

END


▼こちらもぜひどうぞ。言いまちがえ「カガ」バージョンです。


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