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オリジナルの「インク」を、作った日。

雑誌だったか、テレビだったか忘れてしまったけれど、以前どこかで「オーダーメイドのインク」を作る様子を見たことがあった。「オーダーメイドのインク!」実に魅力的な響きである。雰囲気だけでも文豪に近づけそうだ。いつか自分だけのインクを作ってみたい。そう思いつつも、数年の時間が過ぎていた。

チャンスというものは、ある日突然やってくるものである。たまたまタイミングよく「オリジナルインクを作るワークショップ」の情報見つけ、たまたま日程に空きがあり、たまたまいい具合に参加することができたのだった。「たまたま」も三回続けばもはや必然だと思う。わくわくしながら、連れと参加したのだった。

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テーブルの上には、複数のインクボトルが並んでいた。これだけでも「ああ、これを使って作るのか」と期待がふくらむ。表面的には平静さを保っていたが、頭の中は初めてマッキントッシュが自宅に届いた時のように、軽い興奮状態だった。

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作業の手順は、とてもシンプル。スポイトで一滴ずつパレットにインクを落としながら混ぜ合わせていく。その過程を表(レシピ)に「1番を1滴。3番を2滴」のように書き込みながら、ガラスペンにつけ紙の上で確認しながら色を探っていく。

今回は「山を登っている時に、夜の黒から、藍色に変化していく途中の空の色を作ると決めていた。藍色と黒の境目くらいの調子で、これならさほど難しくもないのではないか、と勝手にイメージしながら作業を始めたのだが・・・。

ところが、イメージはイメージにすぎない。現実は想像以上に複雑である。ほんの一滴加えるだけで、全然違う方向へ変化する。「ああ、さっきの方がよかった!」などと声を出さずに頭の中で絶叫しながら「もうすこし、なんというか、その」と少々、頭の中が混乱したりしながら試行錯誤を繰り返していく。

「これを加えると、こんな感じになるので・・・」「印象が強くなりますね!」などと、店員さんのアドバイスを受けながら、制限時間いっぱいを活用して、なんとかイメージに近いトーンをつくることができた。

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さて、これで本当に大丈夫かな? と若干不安になりつつ、とにもかくにもメモしたレシピを店員さんに渡して、瓶に詰めるインクの割合を計算していただく。あとはその割合にしたがって瓶詰めをすれば終了。これで、文字通り「世界にひとつだけのオリジナルインク」の完成である。

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このインクを使うには、コンバーターのついた万年筆が必要ということなので、帰りに文房具屋によって万年筆とコンバーターを買ってきた。セットで千円くらいだった。あとは、この万年筆にインクを入れれば準備完了。さっそく試し書きをしてみることにする。

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店員さんに「インクの名前を考えてください」と言われたので「夜と朝の境界線」という名前にした。あまり人気が出なそうな、売れなそうなネーミングだが、他に思いつかなかったのでこれにした。もしかしたら「夜の黒から、藍色に変化していく途中の色」の方がいいかもしれない。販売する時には(←しません)どちらがいいかアンケートをとってみたいと思う。

写真で見ると、少し色味が違ってみえるけれど、当初イメージしていた「夜の黒から、藍色に変化していく途中の色」に、だいぶ寄せられたような気がする。せっかくなので、このインクを使って何か作品をつくってみようかな、と考えている。

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