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【世界に一つだけの器】

僕にはKという、高校時代からの親友がいる。
同じ地区の演劇部で、高校は違ったけれど、役者として切磋琢磨してきた仲間だ。

Kは高校卒業後に、自分で劇団を立ち上げ、10年間演劇活動をした後、現在はサラリーマンをしながら、YouTubeやライブ配信などで活躍している。

そんなKと、山口県へ2人旅をしたことがある。
山口といえば、日本三名橋の錦帯橋や秋吉台の鍾乳洞(秋芳洞)、グルメならフグや獺祭が有名だ。
あまり印象にはないかもしれないが、萩のウニも絶品で、甘みが強く濃厚で、回転寿司で食べても、十分過ぎるほど美味しい。

でも、僕達の目的は、観光でもグルメでもなく、世界に一つだけの器を作ることだった。

山口県の萩市は、焼き物の陶器が有名で、萩焼は古くから、「一楽二萩三唐津」と謳われるほど、茶人好みの器を焼いてきたことで知られている。

土を捏ね、ろくろを回して、形を作っていく。
意外と難しく、歪な形になってしまう。
でも、それすらも楽しくて、まさしく、世界に一つだけの器に仕上がった。
Kが作った器も、少し歪んでいたが、本人も満足げだった。

さあ、これを窯に入れて焼いてもらうぞ!と思った時、係員の方が手直ししますねと言って、形を整えてくれた。
歪さはまったくなく、僕とKが作った器は、どっちがどっちかわからないほど、同じ形に整えられてしまった。

いや、そういうことちゃうねん!
変な形でもいいから、オリジナリティが欲しいねん!
これやったら、100均で買うのと一緒やん!

数週間後、世界に一つだけどころか、世界中に溢れかえっている器が家に届いた。

ナンバーワンにならなくてもいい、オンリーワンに僕はなりたい。

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