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【夢の舞台】

僕が新喜劇のオーディションを受けたのは、2005年の夏でした。

あれから10年。
2015年7月、吉本新喜劇入団10周年、佐藤太一郎企画その14で上演したのは、西野亮廣さん脚本の『グッド・コマーシャル』でした。

10周年の記念公演は、どうしても西野さんとグッド・コマーシャルで共演させていただきたくて、一緒に飲みに行かせていただいた時に出演のお願いをしました。
西野さんは、二つ返事でOKして下さいました。

グッド・コマーシャルは三人芝居。
西野さんに、「あと一人は誰にするん?」と聞かれました。
「太一郎が一緒にやりたい人がいてるなら、一緒にお願いしてあげるよ」と。
出演して下さるだけでなく、10周年に花を持たせてくれるために、僕ではオファーできないような人にも、一緒にお願いしてくれるというのです。

西野さんは、挑戦する人に底抜けに優しいです。
それは、挑戦する人の痛みを、誰よりも知ってるから。

僕は藤井隆さんと共演させていただきたいと言いました。
新喜劇の中で、誰みたいになりたいかと聞かれたら、藤井隆さんのような存在になりたいと答えています。
藤井隆さんの、役者としての存在感、芸人としてのパワーに憧れています。

西野さんと藤井さんの三人で、大好きな『グッド・コマーシャル』を上演したい!
西野さんの後押しもあり、藤井さんも快く引き受けて下さいました。
こうして憧れの存在である、西野さんと藤井さんとの共演が実現することになりました。

ところが、当初は2015年9月に上演予定だったのですが、藤井さんは当時NHK大河ドラマ『真田丸』に出演が決定していて、撮影スケジュールの変更で、7月にしか舞台に出演できないと連絡がありました。
もし上演するなら、2ヶ月前倒しすることになります。

2015年の夏は、6月に『夏の魔球』を上演したばかりでした。
僕は何もしなくても、お客さんが来てくれるような売れっ子ではありません。
一夏で、3300人を動員するなんて、僕にとっては途方もない数字でした。

でも、このチャンスを逃せば、この3人でグッド・コマーシャルを上演することはできないかもしれない。
初めて佐藤太一郎企画を立ち上げた時と同じように、これがダメなら吉本を去る覚悟で、僕は7月に上演することを決断しました。

それからは、告知・宣伝・手売りの毎日です。
西へ東へ駆けずり回り、チケットを買ってくれると連絡があれば、どこへでも直接手渡ししに行きました。
新喜劇の合間に、NGK前で毎日手売りもしました。
文字通り、死に物狂いで観に来てもらう努力をしました。

2015年7月22〜23日。
なんばグランド花月で2日間公演。
西野さんも手売りに協力して下さり、本番は両日とも立ち見まで完売御礼になりました。
トータル1800人以上のお客様がご来場下さいました。

満席のなんばグランド花月で、尊敬する先輩と一緒に、大好きな作品を演じる。
そして、終演後のお客さんから熱い拍手。
一生忘れることのない、夢の舞台でした。

つづく

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