「四季報オンライン」で効率よく割安株をみつける
日本企業への投資に対する感心の高まりとともに、東洋経済社が発行する会社四季報の活用法にも注目が集まっています。
四季報からの情報をもとに、将来有望だけれども、現在割安な株をいかに見つけるか。ネットで検索すると、多くの投資家が四半期ごとに、四季報に載っている4,000社近い企業の情報にくまなく目を通すように薦めています。
確かにそれだけの時間、思考力、気力、体力を四季報読破に注ぎ込める状況の人は良いのですが、多くの人は、そうではないでしょう。仕事や私生活で他にも優先順位の高いことがある場合、なかなか四季報にリソースを割くことができない。私自身がそうです。
そこで、物理的に四季報の全ページ、4,000社に目を通すのではなく、サブスク型の「四季報オンライン」をフル活用することで、自身の要求する条件をクリアした企業群を短時間で抽出し、ある程度数を絞り、そこから割安株を探索するのはいかがでしょうか。
今日は四季報オンラインで、限られた時間とかけられる手間を無駄にせず、最大限に有効活用する方法についてお話しします。
手順としてはざっくりと以下の感じです。
自分が企業を選別する際に重要と思う要素をいくつか決める。
それらの要素について、条件を決める。(例:PERは最低でも20以下など)
自身が決めた企業選別のための要素と条件を四季報オンラインに登録
その条件にあった企業を全4000社のなかから抽出し、データと共にリスト化。
抽出した企業を一社ずつチェック。必要に応じて、深掘り。
最終的に自身が納得した割安株を購入
イメージを持っていただけたでしょうか。自身の経験から、この方法を用いると限られた時間を効率的に使え、最終的に自分にあった投資先企業を見つけられます。
1. 清原達郎さんが重要視する条件をクリアする企業
自身が四季報オンラインをサブスクするきっかけになったのは、中小型株投資を専門とした元ファンドマネージャー、清原達郎さんの著書「わが投資術」の中で、その有用性について書かれていたからです。
実際にここ2、3ヶ月の間に、四季報オンラインから見つけた10社のうち、6社について既に投資済み、残りの4社については株価動向を見ながら投資予定です。
では、まずは企業選別に重要となる指標を決めましょう。
清原さんは著書の中で、「ネットキャッシュ比率」という指標を投資先選定の際の重要チェック項目に挙げています。簡単に言うと、清原さんは、通常のPER数値だけを見て判断するのではなく、会社の持つ手元流動性の高い資産で負債を返済した後の現金、いわゆるネットキャッシュが時価総額に占める割合を考慮した「ネットキャッシュ比率調整後PER」を見ることで、より正確な投資先選定の判断ができるとしています。
「ネットキャッシュ」の定義は以下になります。
ネットキャッシュ=流動資産+投資有価証券(7掛け)ー負債の部総額
これは会社を清算する時を想定して考えるとわかりやすいです。清算の際に、手元にある比較的流動性の高い資産を負債の返済に宛て、その後に残る現金になります。
そして、ネットキャッシュ比率は以下になります。
ネットキャッシュ比率=ネットキャッシュ金額 ÷ 時価総額
時価総額には負債を返済しても残るネットキャッシュ分も含まれているで、その比率を算出します。例えば、ある会社のネットキャッシュが100億円で時価総額が500億円だとしたら、ネットキャッシュ比率は100億円÷500億円=20%になります。
この会社の通常のPERが18だとしたら、ネットキャッシュ比率調整後PERは以下のようになります。
ネットキャッシュ比率調整後PER= (1-20%)×18=14.4
例えば、日本企業の平均PERの15を投資対象の条件として投資先候補リストを作ると、この企業は選定の対象から外れてしまうのですが、ネットキャッシュ比率を加味した上でのPERは14.4なので、十分に投資対象として、検討に値することになります。
2. 自身のリスク許容度に応じた追加の指標を設定
同時に、自分は清原さんのようなプロではないので、清原さんが著書で書かれていた条件に加え、自分が重要視する要素も加味して、企業を選ぶようにしました。言い換えると、より保守的な選定条件を設定しています。例えば、
来季予測を含む3期連続で営業利益が増益(上昇基調である)
時価総額は100億円以上 (ある程度の大きさには成長済みである)
営業利益率は10%以上 (付加価値のあるビジネスを提供している)
ネットキャッシュ調整後のPERが15以下 (まだ割高でない)
ROEが8%以上 (最低限の株主還元がなされている)
これらを設定した理由は、単に保守的に選ぶためだけでなく、4,000社の中から選別される最初のスクリーニングで、企業の数を150社以下に絞りたいからということもあります。もちろん、厳しい条件を設定することにより、将来有望な企業を見逃す可能性はあります。それを承知の上で、私の場合、今はダメダメだけど、将来はテンバガーになるポテンシャルを秘めた企業よりも、すでにここ数年、良い感じに仕上がり始めている上昇基調の中小企業株を選びたいと考えています。
なお、上記の条件はあくまでも私の場合の一例であり、各投資家個人によりリスクの許容度や要素は異なるために、ご自身で調整していただければと思います。私もここからさらに、有利子負債条件を0、または〇〇億円以下としたり、自己資本比率が70%以上の企業などと追加で抽出条件の設定をすることもあります。
3. そのほかにも参考になる指標もチェック
上の条件で抜き出した企業群リストについて、各社のデータに以下の指標の数値を表示することが可能です。
外国人株主比率
有利子負債
自己資本比率
PBR
この中でも外国人株主比率は気になります。多くの中小株の投資家はまだ市場で発掘されていない、知る人ぞ知る割安企業を探し当て、株価の2倍、3倍、あわよくばテンバガー(10倍)を目論んでいるため、この外人株主比率は低いほうが良いのでしょう。私の場合は逆に、外人比率が20-30%ほどあると、外資機関投資家の監視が効くので、経営的にポジティブに捉えてます。その分、すでに外資ファンドなどに目をつけられており、テンバガーは狙いにくいかもしれませんが、より投資リスクが中和されると考えています。
4. 実際の四季報オンラインで条件設定してみる
では今までお話した条件を実際に四季報オンラインのスクリーニング画面で設定してみましょう。以下が実際のスクリーニング画面です。自身でカスタム設定しなくても、「おすすめ」抽出条件として、例えば「営業利益の高い銘柄」などの条件設定が用意されているので、そこから試してみるのも良いでしょう。
では早速、前半でお話しした条件を設定してみましょう。3期連続で営業利益が増加している企業はすでに、サンプル条件として登録されているので、ここをクリックします。
すると、以下のように「スクリーニング条件」として3期連続で営業利益が0より大きい、すなわち増加しているとが記されています。
さらに、独自の条件を追加で設定します。先にお話しした「ネットキャッシュ比率調整後PER」を求める式を登録します。この条件名を「My NC調整PER」と命名。
それ以外にも先にお話しした、時価総額や外国人比率、有利子負債額なども抽出項目として登録します。今回は抽出企業数を150社以下に絞るため、有利子負債200億円以下、営業利益10%以上、調整後PERが15以下、時価総額が100億円以下、などの条件を設定してみました。
この条件で検索するとどうでしょう。ジャーン!以下のように一瞬にして132社が抽出されました。これをネットキャッシュ調整後PERの低い順に並べ替えます。
あとは、ここから地道に一社ずつ詳細をチェックしていきます。興味を持った企業は四季報からの情報にとどまらず、企業のHPをチェックしたり、関連情報をAIに相談してさらに深掘りしてみるのも良いでしょう。
5. あわせてチェックしたい定性的なこと
四季報や会社のHPだけでなく、例として以下のようなサイトから投資先企業の現職、退職済み従業員といった関係者や株主の意見が参考になる場合があります。ただし、なかには煽りや信憑性の低い情報も混じっているので、注意しましょう。
Open Workや転職会議など転職関連サイトで現職社員や元社員からの評価。
Yahoo Financeの企業別掲示板における株主からの評判
中小企業によくあるのが、まだ会社が発展途上のため現職や元社員が待遇の悪さや業務が効率化されていないことを指摘する投稿です。そんななか、「待遇や組織はイマイチだけど、社長はアイディアマンで仕事熱心。信じられる」といったポジティブなコメントも見つかるので、原石を見つける良いヒントにはなり得るでしょう。
6. まとめ
いかがでしたでしょうか。
この方法の良いところは自分の知らない未知の企業に出会う可能性を残しつつ、自身の設定したストライクゾーンから外れた企業の分析にリソースを取られないことです。
もちろん、マトを絞らないで幅広に本の四季報をじっくり読むことで、思いがけない発見もあるため、それは否定しません。ただ、時間や思考体力といったリソースが限られた中で、自身の条件にあう割安株をみつけたい人には、四季報オンラインによるスクリーニングは最も有効な方法のひとつとなり得るでしょう。2024年6月現在、1,100円/月でサブスクできるので、1ヶ月だけでもお試しになってはいかがでしょうか。
ぜひ、賛同するエコノミストの意見や、ご自身のこだわりを条件に反映して割安株を選定してみて下さい。
なお、私が本記事を書く際に参考にした東洋経済社のサイトのリンクも以下に貼っておきますね。
今日も最後まで、お読みいただき、ありがとうございました。
免責事項:
当記事は特定の銘柄の投資を奨励するものではありません。また、内容の正確性を保証するものでもありません。投資はご自身の判断で自己責任でお願いします。