To 不定詞+進行形の形[want編] 【英語の勉強#3】
願望を表すwant to 不定詞の形は、口語でも文章でもよく使われる表現です。特に会話の中で、自分が何をしたいのかを人に伝えることは、コミュニケーションをとる上で非常に重要なことですよね。
先日Youtubeで動画を観ていて、上手くニュアンスを掴むことができないフレーズに遭遇しました。
This isn't really a neighborhood you'd want to be visiting just for tourist purposes.
ニューヨーク市内の"The Hole"と呼ばれる地域について、投稿者の方がこのように語っていたのです。この地域は、治安も衛生もあまり良くないことで知られています(興味のある方はwikipediaを読んでみてください)。こうした事情をあらかじめ知っていると、この方が言いたいことは伝わってきます。観光目的で行くような場所じゃないんだ、と。
(ちなみにこんな場所のお話でした。ニューヨーク市内とは思えない風景です。)
私が気になったのは太線の部分です。"want to visit"ではなく、"want to be visiting"を選んだ理由があったはず。ですが、私にはその理由が分からなかったのです。
なので、want to 不定詞+進行形について色々と調べてみました。今回は、多くの例文を通して、ニュアンスや使い分けについて、共有したいと思います。
そもそも文法的に"あり"なのか
答えは"あり"です。"want to be doing sth"という形は文法的に正しいです。ニューヨークタイムズ紙が"Does Joe Biden Want to Be Doing This?"というタイトルの記事を出しています。
Google検索をかけても、"want to be doing sth"を日本語で紹介されている記事は見つかりませんでした。ほとんど目にしない/耳にしない使い方だとは思いますが、正しい文法です。知ってて損はありません。
まずはニュアンスの違いをチェック
"want to do sth"と"want to be doing sth"の決定的な違いは、文章の時勢における動作の様子にあります。
(A) Anyway, my boss asked me to do that, and I said "OK, I will."
(B) Wow, is that really what you want to do?
(A) Not really.
という会話があったとしましょう。Aさんは上司の命令を嫌々受け入れたようですが、この会話の時点では、Aさんはその嫌な作業をまだ行なっていないようです。これからやるんですね。
では次の会話文を見てみましょう。
(A) Anyway, my boss asked me to do that, and I said "OK, I will." So, here I am!
(B) Wow, is this really what you want to be doing right now?
(A) Not really.
先ほどとは状況が異なります。この会話の時点で、Aさんは既に嫌々何かを行なっているようです。
"want to do sth"は、これから先のどこかの時点でやり(始め)たい/取り組み(始め)たいと思うことを表現しています。一方で"want to be doing sth"は、これから先のどこかの時点で既にやっていたい/取り組んでいたいと思うことを表現しています。
違いを理解して使い分けよう
さらに具体的な例を見てみましょう。就活面接などで良く問われる質問に次のようなものがあります。
(1) Where do you see yourself in 10 years?
10年後の自分がどこで何をしているのか、展望について教えてください、という旨の質問です。将来のことをしっかり考えていますか?と企業側は気になっているようです。
これとほぼ同じ意図の質問がこちらです。
(2) What do you want be doing in 10 years?
直訳すると、10年後に何をしていたいですか?、という質問になります。これを、
(3) What do you want to do in 10 years?
にすると意味が変わってしまいます。例文(2)では、あなたが10年後には既にやっていたい/取り組んでいたいと思うこと、つまり将来の展望が、質問の答えとして期待されています。一方、例文(3)では10年後にやり(始め)たい/取り組み(始め)たいと思うことが答えとして期待されています。例文(1)に意味が近いのは、明らかに前者(2)です。だんだんニュアンスが取れてきましたね。
最後に、ビジネスマナーに関する例文です。
We'll want to be standing when we shake hands to say hello and goodbye.
握手をする(欧米ならハグだってあり得ますね)ときには、あらかじめ立った状態でいるべきだ、と言っています。"want to stand"に言い換えると、あらかじめというニュアンスが出せませんね。
ちなみに、
We should be standing when we shake hands to say hello and goodbye.
と言い換えるのはOKです。実は先ほどの例文中に出てくる"want to..."は助言や命令を表す使い方です。この使い方について紹介した記事もあります。
まとめ
シチュエーションごとに"want to be doing sth"という形が、どういうニュアンスで用いられるかを見てきました。"want to be do sth"が、これから先のどこかの時点でやり(始め)たい/取り組み(始め)たいと思うことを表現する一方で、"want to be doing sth"は、これから先のどこかの時点で既にやっていたい/取り組んでいたいと思うことを表現しています。使い所は難しいですが、自分が伝えたいことを意図した通りに正確に伝えるために、ニュアンスの違いを意識して使い分けていきましょう。
P.S.
そもそもこの記事を書くきっかけになった例文
This isn't really a neighborhood you'd want to be visiting just for tourist purposes.
ですが、結局どういう意図で"want to be visiting"と表現したのでしょうか。"The Hole"という地域は現地では各紙・インターネット上で取り上げられて、多少なりとも有名な場所のようです。ですから、訪れてみようかな(want to visit the neighborhood some day)、と興味を持つ人もいるのでしょう。しかし実際に訪れてみる(be visiting there)と、いわゆる"shitty"な場所ですから後悔することになるのかもしれません。現地を訪れてからそうなって欲しくない、という(言葉は少し強いかもしれませんが)忠告の意味が込められていたのだと推測しました。