テクノロジーをもたない会社の攻めのDX
日頃感じていたDXに対する問題意識
デジタル技術を活用することによって飛躍的な成長を遂げる会社がある一方で、逆に世の中のデジタル化が進むなかでビジネスそのものが成立しなくなって危機に陥る会社もあります。世界中でデジタル化が急速に浸透する中、日本は1960年から1990年の高度成長期に形成された業界構造、事業形態、組織文化を温存し、停滞の30年を過ごしてきたことでデジタル後進国と言わざるをえない状況を生み出してしまいました。デジタル化する社会に適応した企業に転身できるかどうかが、これからの日本企業の生き残りを左右すると言っても過言ではありません。
さて、世の中では「デジタル化社会の到来」や「デジタルトランスフォーメーション(DX)」といった言葉が飛び交っていますが、「それはIT業界やネット企業の世界の話だ」「自社の業界とは無縁だ」と思っている企業経営者やビジネスパーソンが少なからず存在します。私は、IT業界の産業アナリストという仕事柄、経営者向けセミナーで講師をしたり、個別企業に対してIT戦略へのアドバイスをしたりしていますが、多くの経営者がデジタル化の本質を理解していないと感じています。
この書籍を執筆しようと思った理由
本書を執筆しようと思ったきっかけは、日本経済がコロナショックから立ち上がり、元気を取り戻すためには、多くの企業がデジタル時代に適応した企業に生まれ変わることが不可欠だと思ったからです。そして、その中で重要な役割を担うのが、IT企業でもネット企業でもない、製造業、流通業、金融業などの事業会社であり、いわゆる非IT企業がデジタルシフトにおいて主役を演じなければならず、まさに攻めのDXを推し進めていかなければならないと考えたからでもあります。
本書では、非IT企業、非デジタル企業であるさまざまな業種の企業がデジタルを活用していくことによって飛躍的成長を遂げる可能性を示していきます。また、そのような企業の経営者がどのような考えを持ち、どのようにデジタル化を従業員と進めていくかという、非IT企業・非デジタル企業のDXのあり方や進め方を解説します。コロナショックによってリモートワークが推進され、図らずも働き方のデジタル化を強いられた企業も多いのではないでしょうか。しかし、DXは単に書類をデジタル化したり、会議をWebで行ったりすることにとどまるものではありません。アフターコロナを見据え、経営そのものを、そして組織やビジネスをどのようにデジタルにシフトしていけばよいかについても示していきます。
DXに関しては、技術的に難解な説明は多数聞かれますが、本書では私たちの身近に起こっていることや、一般的な企業が直面している問題に目を向け、技術者でない方々にわかりやすく解説することに心掛けました。本書は、日頃IT技術やネット社会に苦手意識を持っていたり、他人事と思っていたりする経営者やビジネスパーソンにこそ是非読んでもらいたいからです。また、そうした非IT企業の非IT人材がDXの本質と可能性を正しく理解し、それぞれが一歩を踏み出すことこそが、企業の変革を確実に前進させ、日本に元気を取り戻すことにつながると信じているからです。本書が、そのための指南書として少しでも役立つことを願っています。
ここまでの文章は、新刊「テクノロジーをもたない会社の攻めのDX」の「はじめに」の部分を引用したものです。
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