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【読書録#1】「時をかける少女」~匂いの持つ魅力~

時をかける少女を読んでみた

先日、筒井康隆さんが書いた「時をかける少女」を読みました。短い物語で40分ほどで読み切ることができました。

この話は主人公である中学3年生の「芳山和子」と同級生の「浅倉吾朗」、「深町一夫」を中心として展開されるSF小説です。

芳山和子は、ある日理科室でラベンダーの香りを嗅いだことでタイムリープすることができるようになり、その出来事の回りで物語が進みます。

物語の詳細については、他の皆様の感想で読むことができると思います。私の書評としては、この物語における「香り・匂い」の存在から思ったことを綴ります。(そのため、一般的な読書感想を期待なさった方、ごめんなさい。)

私にとっての特別な「匂い」とそれがもつ力

皆さんの好きな匂いは何ですか。私は自分にとって好きな匂いは、何か心に染みる力があると思っています。特別な香りは、言葉で表すには難しい何か素敵な魅力を持っていると思います。

好きな香りというと、アロマやお香、石鹸の香り等々、その人によって異なるものが挙げられるのではないでしょうか。上記の香りは私も好きなものです。ただ、わたしにとって特別な匂いは、そのような一般的なものではなく、ある特定の個が持つ匂いです。

具体的には、好きな異性の香りや自分の愛犬の匂いです。自分の大好きな存在の香りを感じると、なんとも言えない幸福感を抱きます。今でも、好きな人の香りは自分にとっていい匂いなのか、自分の好きな香りを発する人のことを人間は好きになってしまうのか、どちらかわかりません。

特別な香りは、私たちの記憶に残り続けます。ともすれば、一度出会うと自分の身体に刻みこまれてしまうのかもしれません。久しぶりに出会っても、すぐ過去の記憶を呼び起こしてくれます

物語における「匂い」の位置づけ

ここで一度物語の中での匂いの存在を改めて振り返ってみます。芳山和子は、あるきっかけでタイムリープできる薬の匂いを嗅いでしまい、意図せず時間旅行するようになってしまいます。その匂いがラベンダーの香りです。

和子は、ラベンダーの香りを忘れてしまうとタイムリープできなくなってしまいます。匂いを忘れると時間を旅できなくなる。香りの持つ力を失ってしまったからなのかと私としては理解しました。

結局その薬を作って未来から過去に戻ろうとしていた人によって、そのタイムリープ・その人(和子はその人のことを好きでした)の記憶は和子から消されてしまいます。物語の最後、和子はたまたまラベンダーの香りを見つけます。そのとき、消された過去の記憶そのものを明確に思い出すことはできませんでしたが、ラベンダーの香りから何か懐かしい気持ち、大切な記憶がある、ということを思い出しかけます

私はここで、改めて筒井康隆さんも「匂いの力」を感じていたのではないかと思いました。好きだった人に纏わる香りの力は、忘却したはずの記憶のかけらですら思い出そうとさせてしまう。そんなある主体にとって特別な香りの持つ力を物語の最後に再確認できました。

最後に

ふと思ったことですが、「芳山和子」の「芳」は芳しい(においがいい)という意味を持つ感じです。主人公の名前を付ける際、このような観点を意識なさったのか、とても気になります。

上述したように、今回は「時をかける少女」を読み、「香り・匂い」について思ったことを書き連ねました。

「時をかける少女」については、「時間」という観点からも感想を書こうと思っております。

記事をご覧いただき、ありがとうございました。



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