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episode1 鼻歌少年

 
 7月13日の宮入りが終わると、それまでの喧騒が夢幻であったかのように、平野郷だんじり祭りはさっと幕を閉じる。毎日、登下校の際にその舞台となる杭全(くまた)公園を横切る僕は、そこに漂う、生ゴミに火薬を混ぜ込んだような匂いを嗅ぐといつも「今年も終わってしまった」と、寂しい気持ちになるのだった。
 同じ大阪でも岸和田のだんじり祭りとはまた違う、幽玄で厳かな空気の中に、隠しきれないやんちゃさが漂うこの平野のだんじり祭りが、僕は大好きだ。

  僕が生まれ育った、この大阪市平野区というところは、お世辞にも治安がいい町とは言い難かった。ドラマで見るような不良がそこら中にいたし、「この人と町で会ったらやばい」と言われている地元の有名なワルみたいなのは各世代に何人もいて、僕はその人たちと道ですれ違うたびに、いつも斜め上の空を見上げながら相手に聞こえるように鼻歌を歌い「僕はあなたに無害ですよ」とやるようなところがあった。情けないけれど、それが僕だ。

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いま一度、人生を振り返りました。こんなどうしようもないやつでも、俳優になり、そして仮面ライダーになることができたという道のりをありのまま書き記しています。 50日で完結するハッピーエンドです。 ぜひ最後まで読んでください✨