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episode44 誰かのために


 珍しく2本同時に決まった仕事を、右手中指の大怪我によって失いかけていた僕がとった行動というのは、紛れもなく「最悪の一手」だった。

 どうしてもこの現実を受け入れることができず、普段はけして行かない近所のパチスロ店に行ったのである。川口さんは必死で動いてくれている。それがわかっているだけに、自分が置かれたこの状況を正面から受け止めることができなかったのだった。
 朝起きてパチスロ店に入り、ただただその機械を見つめて、他のことを考えなくて済むという状況を求めていた。勝った負けたはどうでも良かった。
 毎日必死で重い冷凍牛肉を運んで貯めたお金を、ほとんど数日で使い切ってしまった。右手の包帯は、何度も何度も機械に擦れることで、先が濃いネズミ色に変色していた。
 現場で負った怪我ということでアルバイト先からは労災が降り、生活自体はなんとかやっていけたものの、一人の人間としては完全に腐ってしまっていた。

 そんな風に数日を過ごし、もうドラマの撮影は2日後に迫っているという状況で、その日も僕は朝からパチスロ店にいた。入り口から入ってすぐの席についていたから、自動ドアが開くたびに外の通りから丸見えになって、それがすごくストレスだった。
 そこへ、
 「松田くん、何してんの?」

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いま一度、人生を振り返りました。こんなどうしようもないやつでも、俳優になり、そして仮面ライダーになることができたという道のりをありのまま書き記しています。 50日で完結するハッピーエンドです。 ぜひ最後まで読んでください✨