鹿の残響


 脱ぎ捨てられた長靴が田植用ではないという噂で満ちた木立。形容詞の鹿は異なる重力で風にのり、風はテレビから吹きはじめた。

魚卵が浮いている。それだけで夜の闇が広がった。納屋は摩擦であふれていた。オルガンの音のように、ただ果実が熟すのを待つ。

屈葬の話をし出すと親戚中若返る。そして鹿が駆けるように午後は、イヤリングになった。喪服からのぞく素足を気にする女性達。

 「一度でいいからストリップを観たいのです」「でも君は、芋を蒸かす為の神様でしょうに。ほら十一月を米泥棒が渡っていくよ」

ときおり左利きの農夫はみた。複数形の鹿が駈け出すのを。映写機のように颯爽と、鹿の霊は石炭へ繋がる。掌にも空腹がのこる。

草花がざわめく。魚をみたからだった。新しく生まれた水滴と副詞。微熱ほどの誘拐犯が、おにぎりと体言止めを運んでいます。

鹿は、血から自由になった。背中のように直喩を拒み続けている。遠くから金色に見える体で、手近な石油の色を知ることもない。

色鉛筆をもつ指の間に散らばる書きなれない片仮名が滑り落ちてたくさんの貝を含んだ土になったがそれは幼い頃の骨折だった。 

鳥の美しさを鹿が思わない日はありません。隣に絵画泥棒が寝ていてほしいとお考えになったこと。ところで関係ない銃声ですね。

。油絵具。夏風邪。いちご狩り。陳謝。カフェオレ。筆まめ。くすりゆび。贋作。十一月。四号線。筆談。素数。絵手紙。薬剤師。

鹿がたしかに駆ける。それほどの映画を見たことがなかった。水瓶にも沈殿していく鹿の成分。その残像には腱鞘炎の痛みが残る。

、うで弥次郎さどごのマケんにさアわらスコ預けれいまんだ水のようにカ飯ば食いわアん玩具商いのウぢィにャ干しタ鱈コの食う夢をど、

淡水魚の味。そんな七並べの戦いに、思いを馳せる日々。痰をきる。肺呼吸で割算をとく。雨上がりのような、恋人の魚の食べ方。

可愛い離婚届に、田植えの歌を添えてみた。植物の言葉によって二人の距離は決まっていく。水のように後悔は、飽くことがない。

湖水浴。従妹にも浮力がなかった。鹿の気配が主語になりだす。誰の霊魂も水面で揺れて、明日には何人か、犯罪者を許している。


これも気に入っている作品です。
冊子にも掲載予定でいます。
二行詩のような形。こういった形式の詩を他にも書いています。
探してみてね❤


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