畦道の風

少年が、予期せぬ便意で駆けている、じゃりの音、

置き去りにされた、夏を、結わえる、

カフェオレと、あぜみちの、風の中になら、納税する。

生まれ故郷が、いつも一日足りないことを、

掬いながら、大豆の刈取り。転作田のような人々が、

補助金の話をしている、公会堂は、

日にあてた、座布団の、においがしています。

結局、与党は、年金の支給日に、

かんてんの素を、安くしてくれますか。

              いいや、部落の民生委員は、

        やまいもを、形が似ている順に、並べています。

膝をつかない。雨上がりの、草刈りをした、女の人は、

登米の方の出だといった。手でよせてから、

おだやかに。鎌の入れ方。煮出した麦茶。

熟成堆肥、きりかえし、籾糠の、ひとりごとをいう、

その温度。気軽に汗をかいてよかった頃に、

川遊びで、人が死んだ。おとなたちは、

TAKARA缶チューハイという一択の酒を、のみつづけ、炎天と、

菜種かすの狭間で、明日の母が、定期貯金を、

解約する為に、生きている。納屋にしまった、

ゆりかごが、きしむ音がするリンゴ農家。窓口の女性は、

その家の、長女。農協の職員は、長女で、ひしめき、

ネフローゼ。少年法。みんな、

共同墓地で親類の、墓の場所がわからなくなると、笑顔になった。

今は、甲状腺を、気にして歩く、土手の下を、

仮定法過去の、ノートを持って向かったはずが、金魚のような、

乳房に触れたこと。わたしの、みずみずしくない網膜にも、

蛙の卵のぬめりけで、時折あらわれ出て、わだかまり、

洗い終えた、苗箱の臭いを、ただよわせながら、

あぜみちの、風に、さらされ、つづける、

月刊ココア共和国に、掲載してもらった作品です。
三年前の作品とあって、やっぱまだ粗いかな? と思うところもありますが気に入っています。
今編んでいる冊子にも掲載予定です。
たしかクマガイコウキ先生に「いいね」をつけてもらえた作品でした。
クマガイ先生のご冥福をおいのり申し上げます。


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