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【後編】リフティングを6,700回落とさずやり続け、学んだことを書こうと思う。

はじめに:リフティングってどうやって数えるの?

ご閲覧いただき、誠にありがとうございます。イシカワ サトシです。
私は普段、WEBマーケターとして働く傍ら、趣味で小説やアニメのブログを執筆しています。

しかし、フィクションにたくさん触れることで、自身の経験談をどこかで執筆したいなと思ったのです。振り返るとネタになりそうな経験をたくさんしましたので。

今回はその第二弾。
リフティングにまつわるお話、後編です。予めお伝えしますが、基本的に実話を元に話を構成しています。しかしプライバシーの関係上、数値等で少しだけフィクションを入れています。

前編は下記のリンクからご覧くださいませ。

それでは話を進めましょう。前編のお話を簡単に振り返ると、こんなことを書きました。

1, 小学校の頃、リフティング6,700回落とさず行った。
2, 前回の反省を生かし、信じてもらうために奮闘。
3, 大人になった今、自分を信じるためにyoutubeを漁る。
4, 10,000回リフティングをしているyoutuberがいて、自分の疑いが晴れた。
5, リフティングで学んだことを少々語る。

リフティングのコツというよりも、リフティングを通して「信頼」や「モチベーション」について学んだって話を執筆しています。

前編でも執筆させていただきましたが、私が小学校の頃のサッカーチームでは、下記のような方針でリフティングをします。

・大体1年に3ヶ月くらいの周期で、リフティングを落とさずに何回できるのか、をチャレンジする時間が与えられる。
・20人くらいのチームメンバーは一斉にリフティングをスタート。
・リフティングは自ら回数を数える。
・ボールを地面に落とした人は、コーチに回数を申告し、チーム練習に戻る。
・ボールを落とさず続けている人は、そのままずっとリフティングを続ける。

リフティングを続けることと同じくらい大変なのが、リフティングをずっと数え続けること。コーチも20人全員分のリフティングの進捗をチェックできるわけではありません。なのでチームメンバー全員が、自分で正確に数を数えることが求められます。

そのため、自分で数えた数が本当に正しいのか、という、チームメンバーから疑いの目が向けられることが起きるのです。私のように小学校のサッカーチームに通っていた人の中で、同じような経験をした人がいるんじゃないでしょうか。

リフティングの回数はどうやって共有されるのか

このように「リフティングをずっと続ける」という種目は、ある種、チームメンバーとコーチの信頼関係で成り立っているような種目です。なので1,000回以上の大記録を起こした場合としても、嘘をつくメンバーがいたら種目として成り立ちません。

少し当初の状況をお話ししますと、私が通っていた小さなサッカーチームは、基本的に近隣の小学生でチームを構成します。また1年生〜6年生までいるので、先輩後輩の関係が生まれます。そのため何が起きるのかというと、リフティング回数の歴代記録が近隣の小学校内で共有されるのです。

特に明文化まではしていなかったのですが、大記録が生まれた場合、サッカーチームのメンバー、コーチはもちろんのこと、OBやOG、はたまた保護者まで共有されます。これに関しては、チームメンバー経由で勝手に広まるのです。

今思うと本当にすごいのですが、当時の私がやったリフティング6,700回でも歴代1位にはなれませんでした。。私の2つ上の先輩に8,200回やった先輩がいたのです。。私もその場面を見ていたのですが、2時間ぶっと通しでリフティングしてました。正直とんでもないです。私の場合は、1時間半連続でやっていたので、納得の結果です。

今はどうなっているかは分かりませんが、僕の2つ上の先輩が残した8,200回という記録は、チームメンバーはもちろん、OBやOG、保護者の方々などチームに関わる人は大抵知っていましたし、ある意味、伝説のように扱われていました。なので、もしこのレベルのリフティング記録が生まれると、近隣のサッカー小僧達にとってヒーロー的なポジションになることもできたのです。

リフティング10,000回を超える猛者が現れた!?

このように狭い地域のサーカーチームだからだと思いますが、リフティングができると、近隣のサッカー小僧からの羨望の眼差しを得ることができます。しかし、私が6700回リフティングをした5年後に事件が起きました。

なんと、「リフティング10,000回やったヤツがいる」、という情報が流れたのです。

リフティング10,000回は当時のサッカーチーム内で、ダントツで歴代一位の記録です。結構歴史が長いサッカーチームだったので、今までのOB・OGも話を聞いて驚愕したことでしょう。私も「とうとうそんなやつが現れたのか!」という気持ちでした。正直悔しい気持ちもありましたが、それ以上に「うちのチームにもそんな凄いヤツが生まれたのか!」という気持ちの方が強かったです。

その記録を達成した子とは前々から知り合いでした。その子は、私が小学6年生の時に、小学2年生だった男の子。一緒にサッカーをしたこともあり、元々サッカーは上手な子だったので全く疑いもありませんでした。そして当然ですが、近隣でサッカーをやっている後輩にはチヤホヤされていました。

歴代1位の大記録だがどうもおかしい

しかし、冷静になって考えてみたところ、こんなことを思ったのです。

そもそもリフティング10,000回やることって不可能じゃない!?

なぜかというと、練習時間の問題があったからです。今までの歴代最高記録は8,200回。2時間かけてリフティングをしていました。グラウンドは2時間半借りていましたが、グラウンド整備の時間も必要です。8,200回やった人は、ボールを落とした後に休憩をして、片付けに戻ってました。いわば練習時間の間、ずっとリフティングしていたのです。

私は8,200回リフティングをした人と一緒に練習をしていたのでわかるのですが、水を飲まずに8,200回もリフティングをしていたら、普通は立っていられません。私も6,700回やった時に経験したことがありますが、ずっとリフティングに集中していたのが「プツン」と切れるので、疲れが一気に来るんですよ。

なのでリフティング10,000回という大記録は、練習時間を鑑みても不可能に近いことが分かったのです。これはある意味、やったことある人、見たことある人にしかわからないことでした。

その時、申告を受けたコーチはどう思ったのか

また疑問だったのが、「リフティング10,000回やった」という申告を受けたコーチはどうしたのか?ということです。

「リフティング10,000回やった」と申告を受けたコーチは、私を指導してくれたコーチでもあります。なのでもちろん私や、8,200回やった先輩の様子も知っています。またそのコーチも3,000回やったことがあったので、ある程度どれくらい時間がかかるのかも把握しています。そこで気になった私は、コーチに尋ねてみたのです。尋ね方としてはこうです。

「リフティング10,000回やったらしいですけど、何時間かかったのですか?」

今でもその様子を鮮明に覚えているのですが、コーチからはこう答えが返ってきました。

30分しかやっていないよ。

そこで全てを悟りました。コーチも、その子が嘘を付いていることが分かっているなと。多分、時間的にも2,000回くらいしかやっていないなと。正直、かなり悲しい顔をしていたのを記憶しています。「30分しかやっていないよ」という言葉内の、「しか」で察してくれと言わんばかりに。

コーチもある意味、想定外の出来事で動揺していたのでしょう。確かに今までのリフティング回数の歴代記録は、OB・OGたちから現メンバーへ脈々と伝えられていました。しかし「どれくらい時間かかった?」まではみんな知りません。なので正直なところ、「言ったもん勝ち」なのです。

ただ明らかに違う場合は、コーチ側も「本当にやったのか?」と詰めることも出来たでしょう。しかし、8,200回の記録は7年前ですし、私が残した6,700回の記録も5年前ですので、当時を知っている人は誰もいません。また、グラウンドの周りには保護者や関係者もたくさんいます。その中で「コーチが大記録を信じてあげなかった」という噂が広まると、それはそれで問題になるのです。仮にそれが嘘だった場合、今度はその子の立場が危ういですし。

少年のエゴで全てが台無しになる瞬間

あれから10年以上の月日が経過しています。今でも彼はリフティング記録で歴代一位のままでしょう。だって追い抜く自体が不可能ですから。

聞いた話ですが、あれから数ヶ月後、リフティングの回数を競い合うことは無くなってしまったみたいです。サッカーチームのコーチの心境を察するに、歴代一位の記録を塗り替えることは不可能になりましたし、子どもたちが申告してくる回数に嫌気が指したのでしょう。

その子の嘘に気づいた私は当時高校2年生。学生ながら「子どものエゴイズム」を感じた瞬間でした。確かに、いくらでも嘘をつく環境は整っていますし、もしリフティング10,000回の記録が世間に広まったら、後輩や保護者の方から羨望の眼差しで見られたことでしょう。

私の通っていたサッカーチームは、50年近くの歴史のあるチームです。コーチも基本的にOB・OGで構成されており、リフティングの記録は脈々と引き継がれていました。しかし、その子の「リフティング10,000回」という申告により、ゲーム自体が存続出来なくなってしまった。一人のエゴイズムによってゲーム自体を壊してしまったのです。決して破られることがない記録を残して。

その子は僕にも言ってきました。「サトシくん!リフティング10,000回超えたよ!」と。彼がどんな気持ちで言ってきたのかは、私には分かりません。私も「よかったね。」としか言えませんでした。

これほどまで「純粋で優しくない嘘」も、そう滅多にないのでは。

次回もお楽しみに〜。

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