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荻窪メリーゴーランド

「荻窪メリーゴーランド」
著者:木下龍也 鈴木晴香
太田出版
https://www.ohtabooks.com/publish/2023/08/25151906.html

愛することの寂しさはメリーゴーランドの寂しさと同じだ。魔法にかけられたような恋しさとどこか物憂げな感覚。ふたりでいるのに何故かいつもひとりで孤独でもある。

  手袋を外してから手を繋いでも皮膚のぶんだけ遠いと思う

  交わっているのにもっとほしくってポニーテールをしっかりつかむ

  言葉まで脱いでしまったようだったふたり名前だけを呼び合って

孤独なひとりとひとりが重なり合おうと求め合うから愛なのだろうか。

二人の歌人が言葉を紡ぎ合うことでそれぞれの歌が化学反応を起こしてやがて歌集全体がダイナミックな愛の物語となって昇華されてゆく。
そしてこの二人の愛のストーリーは本を閉じた後も読者の中でずっと続いていくのだろう。そうまるで、終わりのこないしりとりのように。

 一年の夜空すべてを見届けて<永遠>で終わらせるしりとり

 君を撮るためのカメラがあたたまる太腿のうえ 海まで遠い

荻窪メリーゴーランド
とても濃密で感傷的な体験だった。

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