1分小説「知らない方がいいこと」
1年ぶり。まだ1年ぶりのはずだが、その友人はひどく太っていた。
「え、まじで...。おまえどうしちゃったの?」
「何が?」
「いや、そのさ、太ったでしょ?」と僕が笑いながら言った。
「あ、やっぱりわかる?」と友人も笑う。
「遺伝子検査をしたんだよ」
「遺伝子?」
「だからさ、仕方ないんだよな」
「遺伝子の検査がなんで関係あるんだ?」
「唾液から、自分の体質がわかるんだよ。基礎代謝とか内臓脂肪とか」
僕はそこでようやく要領を得た。
「なるほど、遺伝子検査の結果、自分が太りやすい体質だって出たんだな」
「逆だよ」と友人は真顔で言った。
「遺伝子的に太りにくい体質だとわかったんだ」
「え?」
「それで安心して、この1年、好きなだけ飲んで食べてたら、このザマさ」
(おわり)
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