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言葉のことばかり【ニュー】

新橋。

いきなりですが、新橋は深い。

新橋は駅前でおじさんのインタビューとか
よくやっている、サラリーマンの街。

世の中のお父さんの
ほとんどはサラリーマンだから、
世の中の一番正しいお父さんの街
…なのかもしれない。

お父さんの街は意外と早く店が閉まる。
夜10時くらいになると、もうすでに末期。
次の日も早いので、
平日にそんなに飛ばしちゃ保たない、
…のかもしれない。

うそのような話だが、その時間になると、
「まっすぐ歩いている人がひとりもいない」
街になったりする。

しっかり夜中までやってる店もあるのだが、
それはうわべからは見えなかったりする。
(毎日通えばわかってくる)

とにかくちっちゃい店がいっぱいあって、
安い店ばっかりかと思うと、
高級なところもあって…。
とにかく新橋は奥が深くて、
その橋からは、底が見えない。
(川はないけど…)

ポンヌフ。

そんな新橋の駅前(駅前ビル)に
「ポンヌフ」という喫茶店がある。

そういうタイトルのフランス映画もあった。
しゃれた響きである。

実は「ポンヌフ」とは
「新しい橋」という意味らしい。
新しい(Neuf) 橋(Pont)。

だじゃれであった…。

しゃれた響きとだじゃれの違和感。
これが新橋の奥の深さである。

ポンヌフがある新橋駅前ビルは
ビル自体が相当古い。

新しい橋にある新しい橋という店が
相当に古い街の
相当に古いビルにある
相当に古い店だったりする。

決してカフェテリアという感じではない。
しかし、ナポリタンが名物で相当にうまい。

新しいは新しいという
意味ではないのか。

この場合、新しいという言葉は
すでに正しい使い方をされていない。

いや、それぞれ、そのときには
新しかったんだと思う。

「今」という瞬間は、
そう言ったときにはすでに
「過去」になっているので、

実は「新しい」も、
次の瞬間には古くなっている。

つまり新しいには
使うタイミングがほぼない。
のだ。

これで何が起こるかというと、
新しいという名前がついたものは
たいがい古い。
という事態だ。

ニュー。

新橋にはニュー新橋ビルってのもある。

写真見てもらえばわかるが、
これがニューってのはすでにギャグである。

ホテルニュー岡部じゃないけど、
いまどきの「ニュー」は
意味が逆にオールド
だったりする。

漢字の「新」はそこまではいかない。
新蓬莱みたいな中華料理店の名前だと
古いというより格式や伝統を感じるし、
新横浜とか新大阪だと
比べる駅が隣にあるから
それよりは新しい
というイメージを保てる。

しかしニュー新橋ビルは、
その古さが人気でかなり賑わっている。
ホントはとっくに建て替えないといけない、
耐震性にかなり問題があるビルなんだが、
いろいろあって建て替える気配はない。

ちなみに冒頭に出てきた新橋駅前ビルは
見た目古いが耐震工事が終わってて
大丈夫みたいです。
(この二つのビルは混同されやすい)

新しいと言えば言うほど古く見えて、
一回りしてそれが魅力になってるって、
不思議だけど嫌いじゃない。

つまり「ニュー」という言葉はいま、
人から新しいと見えてるということ。

おもしろいなあ。

次回の言葉は「線の内側」です。


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