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夏休みも学びの旅へ!高校生・大学生約60名が参加した「ラーニング・ジャーニー」レポート

こんにちは。地域を旅する大学 さとのば大学のnote編集部です。

さとのば大学は、現在夏休み真っ只中。在校生の講義は10月までお休み中ですが、そんな中でもあちこちで さとのば大学の学びは進行中です。

その一つが、さとのば大学がさまざまな地域と連携しながら主催する、高校生・大学生を対象とした2泊3日の短期地域留学「ラーニング・ジャーニー」です。

夏休みや春休み、ゴールデンウイークといった長期休みに合わせて開催し、今回で7回目を迎えたこのラーニング・ジャーニー。この夏は過去最多となる全国14の地域が留学先となり、7月から8月にかけて日本各地で学びの旅を開催しました。

ラーニング・ジャーニーの目的は、普段住んでいる場所とは全く違うまちに旅をして、日常生活では出会わない人に出会うこと。そしてリアルな地域で五感をフル活用しながら刺激を受け、対話を通じて理解を深めるなかで、これまでに気づかなかった新しい自分の一面を発見すること。

そんな自分の世界を広げる2泊3日の旅に、この夏、全国各地から延べおよそ60名の高校生と大学生が参加してくれました。

今回のnoteでは、そんな学びの旅 ラーニング・ジャーニーをレポートします。


旅のお供は地域の魅力や自分の気づきを書き留める「フィールドビンゴ」

ラーニング・ジャーニーでは、旅に出かける前の目線合わせや地域に飛び込む準備として、オンラインで「事前セッション」を開催しています。そこでは、それぞれが旅先でどんな風に過ごせば最大限楽しめるのか、学びを持ち帰れるのかを、さとのば大学が大切にしている4つの『WAY』に基づいてインプット。

旅をその時限りのものではなく、帰ってきた後も自分の新しい価値感や指針へと繋げられるように。旅で感じ取った気づきを さとのば大学の視点で整理できる「フィールドビンゴ」もお渡しして、いざ旅へと出発です!

知らなかったまちに一歩飛び出す、越境体験

■枕崎の旅

今回の地域留学先のなかで最南端。鹿児島県枕崎市をフィールドにした学びの旅には、首都圏から高校2年生の2人が参加してくれました。

東京からのアクセスは飛行機と電車を乗り継いで実に5時間。いつものまちから飛び出して行ったことのない遠くのまちへ、大冒険が幕を開けました。

枕崎市はカツオ工場や茶畑、大自然などの古くから伝わるものと、廃校活用やドローンスクールなどの新しいものが交わりあうまち。都会から出てきた高校生にとって、ここにある自然や暮らしは自分たちの日常とかけ離れたものばかり。

カツオ漁業が盛んな枕崎の市場を見学
全国的にも有名な薩摩酒造の酒蔵

刺激を受けながらまちを巡り、話を聞く中で地域の人たちが「このまちを後世に残したい」という願いのもと取り組んでいることを知りました。参加してくれた高校生の中にも、「こんなに魅力溢れるまち。もっとたくさんの人に知られたら良いのに。」という思いが湧き上がったようです。きっとその思いは、これからの学びにも繋がっていくことでしょう。

■三好の旅

ところ変わって徳島県三好市では「秘境」といわれる祖谷(いや)地方を舞台に旅を開催しました。参加してくれたのは秘境というキーワードに惹かれたという総勢9人の高校生・大学生の皆さん。

渓谷沿いの急斜面に家が建ち並ぶ祖谷の景色は圧巻で、まさに「異文化」ともいえる秘境暮らしに興味津々の参加者たち。傾斜地での暮らしや農業を維持するためには、土が流れていかないように、肥料を山で自給自足できるように、などさまざまな工夫が凝らされていることを知りました。

昔から山と暮らしを共にしてきた祖谷

観光スポットとして知られるかずら橋を訪れた際には、単なる名所としてではなく、山で採れるかずらを暮らしの中で活かしてきた地域の人たちの知恵や技を知り、地域の魅力の背景にはその土地固有の文化が秘められていることにも気が付きました。

多くの観光客でにぎわっていたかずら橋

各々が気が付いたまちの魅力や、もしくは違和感を互いにシェアするワークショップでは、参加者一人ひとりが違う視点でまちを眺めていたことも知り、「そういう視点があったんだ」「なるほど、面白い考え方だね」と、それぞれに響いたポイントが多様であることも知ったようです。

旅の中でのワークショップは、学びを言語化し、対話して深める時間になった。

■糸魚川の旅

新潟県の糸魚川市は、ジオパークにも認定されるユニークな地形を特長に持つほか、米どころであり、豪雪地帯。3日間、糸魚川ならではの歴史や文化に触れ、農産業の現場にも尋ねました。

「市野々集落」の田んぼでは、美しい里山の風景を眺めながら、実はここが限界集落で糸魚川の財産である農業と農地、集落を守るために米作りを続けていること。草刈りなどの管理コストをかけて維持し続けるのが大変ということなど、景観の裏側にある苦労や課題を聞きました。

食べ物を作ることで命を守り、国土を守る。そんな使命感を持って農業に取り組むあぐりいといがわがお米作りをしている市野々集落で、スタッフの青木さんの真剣な話を聞く。

旅の中ではそんな「農業を取り巻く問題」を解決するためにどうしたらいいのかを、参加者全員で考えました。ベースとなるのは、さとのば大学の思考ツールの一つでもある「プロジェクト曼荼羅」。課題を自分自身のやりたいことや、自分自身が在りたい姿と紐づけながら、マイプロジェクトとしてアイディアを考えます。

発表ではそれぞれが自分の「らしさ」や経験を織り交ぜて、「自分だったらこんなことがしてみたい」と、それぞれの言葉でプレゼン。農業の課題について話してくれた青木さんも、高校生たちの考えた施策はとても新鮮で実際にやってみたいものばかりで、「いいアイディアをもらえた!」というコメントも飛び出しました。

出会ったことのない人の、出会ったことない価値観に触れる体験

■加賀の旅

石川県加賀市では、北は北海道から、首都圏、関西圏、そして地元加賀といった多様な地域から、高校生と社会人というこれまた多様なメンバーが参加してくれました。

参加者を迎えてくれたのは、サングラスをかけ下駄を履いて登場した、この旅のコーディネーターの佐竹宏平さん。名古屋生まれの佐竹さんは、加賀の風土に魅了された移住者の一人。

そんな佐竹さんが案内してくれたのは、想いをもって加賀を選んで移住してきたIターン者やコミュニティスペースを守っている地域の方、過疎化が進む限界集落の最後の住人など、さまざまな加賀の担い手の方々

日常生活ではなかなか出会うことのない、多様な人たちとの交流を深めながら、さまざまな生き方・暮らし方のロールモデルに触れました。

空き家を改装して作られた民間図書館「おんせん図書館みかん」で地元の方々、台湾人留学生と絵しりとりで交流
大土町最後の住人の二枚田さん。70歳を超えても、やりたいことをしてわくわくしながら話をされ、かっこよく生きるその姿は参加者に大きなインパクトを与えてくれました。

なぜ加賀に来たのか、なぜ加賀に暮らすのか。出会う人たちがそれぞれご自身の人生を、生き生きした表情で話してくれた時間は、参加者にとっても刺激的だったようで、高校生からは「未来の選択肢の一つに地方で過ごすというのもいいかもしれない。」という前向きな声も聞かれました。

■和気の旅

人間の生活に欠かせない「食」をテーマに旅をした岡山県和気町でも、たくさんの出会いと学びがありました。

まずは交流拠点”ENTER WAKE”の和菜食堂でおいしいお弁当をいただき、作り手の石原さんにお話を伺います。食堂を開く前は主婦だったという石原さん。

「ご飯を作るということは、大切な人の身体を作るということ。心を込めてご飯を作るということは、食べる人を大事にすることなんだよ。だから、自分の食べるものをきちんと選ぶことは自分を大切にすることだよね。」

普段の食に対する見方や考え方が変わるお話は、参加者の胸にも刺さったようです。

「包丁の音に気をつけてみて。やさしい音で切ると美味しいごはんができるから」と石原さん。

その後も普段はなかなか接点のない生産者さんのもとを訪れ、食べ物のありがたみを感じたり、自分たちで食料を調達して調理したり。食料調達の一環で、鶏の屠殺も体験しました。もちろん初めはみんな緊張気味で、なかには目に涙を浮かべる参加者も。1羽、2羽と絞めるにつれ、少しずつ見守る位置が近づいてきた参加者たち。そして3羽目。気づけば、見るだけのつもりだった参加者たちが、首を落とした鶏を湯につけたり、羽をむしる作業を全員が体験しました。

貴重な体験をさせてくれた精耕舎さんは、農的生活を営みながら民泊受け入れもしている

「せっかくの機会だからやろうと思った」「年下の子がやっているから、背中を押された」それぞれのきっかけがあったようです。

命をいただく重みを感じ、新しい考え方や価値観に触れた参加者。きっと日々の生活やその後の人生にも影響を与える、大きな経験となったことでしょう。

五感で刺激を感じて、新しい自分と出会う

■郡上の旅

岐阜県郡上市では、山深い源流域での自然体験を大切に伝えている長良川カンパニーの方々が案内人。高校生5人と大学生1人を迎えて、旅がスタートしました。

築120年を越える古民家が今回の旅の拠点。「なぜこの家は涼しいのか?人間は涼しいといつから感じるようになったのか」という問いに、普段は意識しない五感に神経を集中させ、自分本来の感覚に意識を集める参加者たち。涼しい、心地いいと感じる素直な感覚をもとに、なぜだろうとその背景を探ります。

家の作りの歴史や構造と暮らしが連動していることを知り、先人の積み上げてきた暮らしを感じる空間に変わっていった古民家。

源流域の豊かでときに厳しい森。ひとたびその中に入ると、川の音、セミの声、自然のにおいに、耳でも鼻でも森を感じます。心の底から深呼吸しながら、自分の身体がどのように刺激を感じるのかを素直に受け止めます。

先人の暮らしがこの自然を残してきたことを知ると、森や川の見え方が変わりました。

この美しい自然は当たり前のようにあるものではなく、郡上に暮らしてきた先人たちが手を入れながら残してきたもの。そんな話を聞きながら、自然や地域、暮らしや生き方について思考を巡らせます。

自然のなかで自分の感覚と繋がり、心を解放しながら、日々のモヤモヤや違和感を地域の大人たちに投げかけてみる対話の時間。さとのば大学では、自分の内省を深めるリフレクションと対話の時間を特に大切にしています。なかには「いつもは聞くばかりで自分の話をしないけど、川の音や焚火に癒され、素直に感じていることを話せた」という参加者も。

「事前に調べたウェブサイトやパンフレットには書いていない、郡上の風土を身体全体で感じた」と、リアルな旅でしか得られない、感性に刺さる体験を持ち帰ってくれたようです。

■川崎の旅

開催地によっては、地元から参加してくれた人も。宮城県川崎町の旅に参加してくれたTさんは生まれも育ちも川崎町。開催を知った家族の勧めで参加してくれました。

旅の拠点は、山や川が面積の9割近くを占める自然豊かなまちで、サステナブルな暮らしを追求する「百(もも)の宿」。参加者はチェーンソーでの木の伐採や薪割りなどを体験しました。

川崎町が地元のTさんも、本格的な林業体験は初めて。地域の資源を活用しながら、地球にもやさしい暮らしを目指す案内人の想いや、それを実現する技術やスキルに直に触れながら、体いっぱいに疲労感と達成感を受け取ったようです。

チェンソーの重さと音の大きさにびっくり。慎重に、でも力強く、いざチャレンジ。
ガソリンと木屑の匂いが混じった独特の匂いは、意外にも良い匂いでした

最終日には参加者の希望で、蔵王まで足を延ばしてご来光を拝みました。Tさんはこの時のことを「走り出してしまう程テンションが上がった」と振り返ります。

地元に暮らす人たちにとっては、いつもの景色、いつものまち。だけど、案内人の視点を通すことで、改めてまちを再発見できたり、初めて出会う旅の仲間との交流を通して、少し緊張するけどなぜか素直に対話ができたり。

Tさんも案内人そして町外からの参加者のまちを見る目線に触れたことで、まちの魅力や課題に改めて気づけたといいます。

美しい蔵王からの日の出を見に、早朝4時に出発したのもいい思い出

さまざまな出会いを通して刺激を受け、昨日までの自分が持っていなかった視点、知らなかった自分に出会えるのも、ラーニング・ジャーニーならではです。

旅の学びは「事後セッション」で言語化

それぞれの旅を通じて、まち、人、じぶんとの出会いを果たした参加者たち。旅先で感じてフィールドビンゴに書き留めた自分なりの気づきや、誰かから聞いてなるほどな~と思ったこと。時には、モヤモヤや違和感。事後セッションはそんな感覚を言葉にし、互いに対話することで学びをより深めていく作業です。

同じ地域に行った参加者同士はもちろん、違う旅先を選んだ人とも共有しながら、地域共通のことなのか、地域独自のことなのか、いろんな視点で振り返ります。

事後セッションを終える頃には、さまざまに豊かな資源がある「地域」という場所を再発見し、「また行きたい」「もっと話を聞いてみたい」「違う場所にも行ってみたい」そんな気持ちが湧き上がります。

事後セッションでは同窓会さながらに再会を喜び合う姿も

さとのば大学の”リアル”を体験する短期地域留学

「地域に暮らして、旅しながら学ぶ」というさとのば大学のリアルは、写真や言葉ではなかなか伝わりきらないところがあります。

実際に地域に飛び込むことで、ユニークなまちの魅力、そしてそんなまちを形作ってきたさまざまな人の営みや、今なお守り続けている人との出会いがあります。五感をフル活用して旅での出会いを楽しむことで、これまでに触れることのなかった価値観や、自分でも知らなかった新しい自分の一面に出会えるかもしれません

そして旅の参加者や地域の大人たち、さとのば大学の講師やスタッフとの対話を通じて、きっと昨日までの自分とは少し違う新しい視点が磨かれ、自分の世界が広がる体験ができるはずです。

\ぜひラーニング・ジャーニーへのご参加を、お待ちしています/

郡上での一枚、皆さんいい笑顔!

次回のnoteでは、インターンとして女川での旅に参加してくれた高校生の目線で、ラーニング・ジャーニーの学びをお伝えします。お楽しみに!


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