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オードリー・タン 日本人のためのデジタル未来学

【今日の本】

「オードリー・タン
日本人のためのデジタル未来学」
早川友久 著 ビジネス社 2021年


コロナウィルス発生源とされる中国と日本以上に地理的に近く、経済的にも密接な関係があり人的往来も多い台湾が、なぜコロナ対策に成功し、日本は失敗したのか?


コロナ禍を通じて、日本が台湾に学ぶべきものはたくさんある。
その代表的なものが、政府や社会のデジタル化であり、それを象徴する人物がオードリーである。


日本がデジタル革命を成功させ、希望の持てる”未来”をつくりあげるために絶対的に必要なエッセンスを、日本にわかりやすく紹介しようということが本書の出発点である。


❶[3セレクト]

①逆転発想

オードリの5G政策。まず4Gの利用率が低い場所に5Gの設備を確保することが、政策として重要という逆転発想。

「都市ではなく、地方から先に整備する」ことを政策として決定した。一般的には、5Gのような最先端のインフラ整備や設備投資は、手始めに都市部から行われていく。イレギュラーとも思える台湾政府の政策に、オードリーの理念が隠されている。

それは、「インターネットの平等」だ。一般的なやり方では、場所や環境といった障壁を超越できるというインターネットの優位性がまったく発揮されない。この発想は、オードリーが大切にする哲学で、台湾社会の強みのひとつでもある「インクルージョン」、つまり「誰も置き去りにしない」という価値観ともリンクしている。この概念が、デジタル革命を考える上で大きな鍵となる。


②デジタル革命で見逃せない概念

デジタル技術は便利だけれど、デジタルが得意な人と、そうでない人で社会に格差が生じてしまうことは絶対に避けなけばならない。台湾のマスク政策が、デジタル一辺倒であったならば、結果的に社会の分裂を引き起こすことになっていた。オードリーの頭の中には、「誰もが使える」という価値観がある。

「デジタルの側が、苦手な人に寄り添うことも重要です。パソコンとキーボードが苦手なら、タブレットとペンを使えばいい。テクノロジーはあくまでも人間の手伝いをしてくれるもの。使う側の人間が自由に選ぶようにすればいいのです」(オードリーインタビューより)


③オードリーを育てた家庭環境

オードリーの父方には、外省人の祖父と本省人の祖母がいた。祖母にとって祖父は、正直な人柄の上背が高くて見目麗しく、「タイプ」だったそうだが、「軍人だから、外省人だからという理由だけで軽蔑された」叔父以外の家族や親戚は皆2人の交際に反対したという。祖母はこっそり祖父を実家の近くまで連れて行き、いきなり家族と引き合わせると、初めて祖父を見た家族は、真面目な態度で接する人柄に好感を抱き、一気に反対から賛成に転じたという。


子供たちは孫たちに、自身がもつ日本に対するネガティブな感情を押し付けるということは決してなかった。
オードリーが語る。

「徹底して自由を尊重する家庭だったからこそ今の私があるのです」


祖父母が貫いた結婚以来いまに至るまで、オードリーの一族は、自由な家風という伝統を積み上げ続けてきたという。


❷[エピソード]

 ーインクルージョン=誰も置き去りにしないー
インクルージョンとは、例えば、”ゼロサム”のように「ひとつ増えれば、ひとつ減る」というものでは決してない。誰かが入れば、他のひとが押し出されてしまうような考え方ではない。


台北市が2016年から進める「Play For All」政策によって設置された「インクルージョン式公園」車椅子のままのれるブランコのほか、段差を設けない砂場、障害がある子供でも遊べる滑り台や回転式遊具が設置されている。
インクルージョン式公園の理念:共通点と相違点を見極め、お互いに学び、寛容になることで「インクルージョン」が社会の重要な価値観と精神になることを期待している。

「車椅子ブランコを使うのは、障害をもった子供だけではありません。もしかしたら怪我をして、限られた期間だけ車椅子を使う子供もいることでしょう。誰もが多数派属することもあれば、ときには少数派に属する場合もあるわけです。マイノリティを経験した人間は、自分がその他大勢になったときでも、少数派の人たちを排除するようなことはしなくなるのです」


”共に生きるだけでなく、共に融合する”(インクルージョンの鍵)

【心に響いたオードリーの言葉】
「相手が間違っていたとしても、そこから学べることは必ずあるし、自分の考えが絶対正しいわけでもない」
「同性婚への賛成派も反対派も、「家族の価値」が大切だと感じているのは一緒なのです」
「誰もが受け入れられるような、新しい解決策を創造するのが本当の民主主義の意義」
「社会イノベーションとはみんなの問題は、みんなで助け合い解決するということです」
「自分とは異なる様々な考え方をする人の話を、絶え間なく聞き続けていく」


❸[今日からのアクション]


年齢も、地位も、学歴も関係なく、全ての人(個)を尊重し、受け入れ、政策に反映させていくオードリーの考え方、生き方、価値観に政治を超えた人間的愛を感じる。


住みやすく、生きやすい世界を作るために、これからのリーダーに求められるのは、単に学歴や地位や前例から考える能力だけではなく、オードリーのような「柔軟性」「共感能力」「プロセス思考」「逆転発想」「多元思考」だと思う。


既存のやり方や考え方を鵜呑みにしないようにしていこうと思う。


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