見出し画像

私服の”乱” @タイの高校

先日の放課後、タイ人の同僚に1時間ほど愚痴を聞かされた。
内容は、昨今のタイのデモについて。

日本でもニュースになっているので詳細は省くが、ざっくり言えば今タイでは反政府派VS擁護派でやり合っていて、大使館からは連日デモのお知らせがメールで届いている。

中高生もこのデモに反政府派として参加したり、参加せずとも白いリボンを身につけたり、毎朝の国歌斉唱の時には三本指を挙げたりして意思表示をしているのだが、学生デモはその矛先が教育改革(?)へと向かっている。

学生たちの一番の主張は「厳しい校則をなくしてほしい」というものだが、それってデモでどうにかなるものなの?と正直思う。

その愚痴の中で、新しいタイ語を2つ教わった。

モブ・ムンミン
「モブ」はデモ、「ムンミン」は最近作られた言葉で「子供っぽい」「幼い」という意味なのだそうだ。

つまり、「子供っぽいデモ」という意味で、これは反政府派を揶揄する言葉らしい。

同僚曰く、「反政府派のデモはハリーポッターやハム太郎、最近はアヒルのボートをデモのシンボルにしているし、デモのリーダーはいつも紙を読みながら話していて意見が幼い」という理由でそう呼ばれているそうだ。

ミニオン
これは擁護派(特に王室擁護派)を指す言葉。なぜなら、王様のシンボルカラーが黄色で、彼らはいつも黄色い服を着ているから。もちろんこれはキャラクターから来ている。

画像1

愚痴の終盤、「学生デモのリーダーが、SNSで明日から私服で登校するように呼びかけている」と聞かされて驚いた。それでも、うちの学生は(少なくとも日本語の学生は)そんな過激な行動に出ることはないだろうとも思った。

次の日。

全校で約40人の学生が私服で登校した。(100人以上の学校もあったそうだ。)日本語の学生も5名ほどいた。結局、私服の学生は朝から別室で校長先生の話を聞くだけで、授業も普通に受けることができた。

私は学校に入れないんじゃないか、学校に入れたとしても授業には参加できないんじゃないかと思っていたのでこの対応にも驚いたが、教育省の指示だったと後から聞いた。

その後の会議で学校の方針は決まったものの、どこまで厳しく取り締まるかは各担任によって違っているからまたややこしい。先生たちの中にも反政府派、擁護派がいるのだろう。

日本語のクラスだけでも高1の担任の先生は「私服ダメ、絶対派」。高2は「自分の責任派」、高3は「勉強さえしてくれれば私服容認派」とはっきり分かれている。

「制服を着ること=愛校心」と捉えている高1の先生にとっては、耐え難い事態でかなりストレスを感じている様子。「国歌斉唱の3本指も私服の学生も見たくない。どうして学生たちはこんなことをするんだろう?自分の学校が嫌いなの?注意するだけで涙が出る」と泣きながら言った。

私も初日はショックだった。タイの校則に関しては、私も厳し過ぎると思っている。それでも、私服登校はさすがに心がモヤっとした。

その理由をはっきりと言語化できないが、「学生のことはわかっているつもりだったのに、そうではなかったこと」、「コントロールできないところに行ってしまったような感じがしたこと」が一番大きい。「規律を重んじる」「謙虚な」学生像から大きくかけ離れた今回の行動に、少なからず恐ろしさも感じた。

しかし授業をやってみると、このモヤモヤはすぐに消えた。私服の学生も含め、みんないつもと変わらず真面目に授業を受けている。なんならちょっと楽しそう。

その様子を見て、学生がストレスなく喜んで登校できるなら別に私服でもいいのかな?とちょっと思ったりもした。

外国人の私が側から見る分には、学生たちは「学校が嫌い」「制服が嫌い」というよりも、「ただ反抗したい(そしてそれをSNSにあげたい)」「私服登校という強硬手段に出ておいて、他の小さい(髪型や持ち物の)規則を変えさせたい」という思いの方が強い気がする。

後期が始まったばかりなのに、いろんなことが起こった1週間だった。来週からどうなるのか見通しが全くわからないが、早くいつもの平和なタイに戻って欲しい。

そう思うのも外国人の勝手なエゴであろうか?




読んでくださってありがとうございます!いただいたサポートは、ありがたく使わせていただきます。100円=約30バーツ。学校の食堂で昼ごはんが食べられます。ありがとうございます。コップクンカー。