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地震から身を守る⑤生活再建(家、お金、心)・安否確認方法 小さなお子さんがいる家庭向け防災ガイド

2021.09.29by 上沢 聡子

この記事は、マガジンハウス社Hanakoママwebに寄稿したものを許可を得て転載しています。
ライター以外の仕事である、防災士・「赤ちゃんとママの防災講座」主宰者上沢聡子として書いたものです。


Part5 生活再建(家、お金、心)・安否確認方法

9月は防災月間。コロナに気をとられて忘れがちですが、災害はいつ起きてもおかしくありません。首都直下型地震は30年以内に70~80%、さらに広域の南海トラフも同じ確率で起きるといわれています。

5回目は、地震から1週間。復旧・片付けや生活再建を考えはじめる時期のこと。そして、安否確認方法です。

地震から発生から3日目、そろそろ片付けを開始したい
在宅避難も3日目。そろそろ部屋を片付けたい。軍手にスリッパで、と。

ちょっと待ってください!
割れたガラスや陶器は軍手を突き抜けます。冬の皮手袋があれば、軍手と重ねてお使いください。

足元も素足にスリッパでは危ないです。足を怪我すると、ばい菌が入り、炎症を起こす可能性があります。仕上げに掃除するのですから、靴を履きましょう。

どの家からも大量の地震ゴミが出されます。ゴミ収集は数日間~数週間停止するかもしれません。自治体や地域が発表するゴミ出しルールに注意して行いましょう。

片付けのその前に写真を!

さっさと片付けをはじめたいところですが、まずは写真を撮りましょう。何も手を付けていない状態、一番ひどい状態がベストです。

家電、家具、窓ガラス、扉、壁、床、洗面所、トイレ、天井、ベランダ、屋外の壁の亀裂、塀、屋根、自転車、車などの破損状態。

これらは、罹災証明書や保険金請求のための大切な資料になります。一番ひどい状態を記録しておくことが重要です。

【罹災証明書とは】(*1)

罹災証明書は、自然災害により、住家を含む物件等が被害を受けた場合に、保険会社の損害保険、勤務先の助成金等の請求や、各種被災者支援策を利用するために、自治体が発行します。

火災保険金の請求等に必要な「罹災届出証明書」、および住家への軽微な被害に限り、「罹災証明書」は、被害を受けた写真等の申請書類に問題がなければ、即日発行が可能。

全壊、半壊など詳細調査が必要な深刻な事例では、自治体職員が現地調査を行います。

【罹災証明書によって受けられる支援】(*1)


(1)公的支援
・被害のあった家屋や土地の固定資産税や国民健康保険料の一時的減免や猶予
・被災者生活再建支援金、義援金
・公的書類の手数料無料
・仮設住宅や公営住宅への入居(優先順位が高くなる)
・災害復興住宅融資

(2)民間支援

・金融機関から有利な条件で融資を受けられる可能性
・私立学校などの授業料減免の可能性
・災害保険の保険を受給(地震保険については罹災証明書は不要)
・自治体よる被災者支援制度

被災するとショックで何も手につかなくなりますが、生活再建のため、支援を得るためにも、写真は撮っておきましょう。

(*1)【罹災証明書とは】【罹災証明書によって受けられる支援】の出典:

ベリーベスト法律事務所「罹災証明書とは?知っておきたい発行方法と受けられる各種支援」https://best-legal.jp/afflicted-certificate-2786/

台風21号が大阪を襲った時、私のアドバイスをもとに家の屋根、外壁、自動車の被害を、実母が写真に撮りました。
結果、窓口での罹災証明書の認定はスムーズで、早く保険金も支払われたそうです。

台風21号の際の被害写真撮影、罹災証明書申請・認定・保険金給付までの実体験(筆者実家)はこちら:http://oyakobousai.wp.xdomain.jp/2019/06/18/risai-2/

被災後の地域情報の入手方法

その地域に特化した情報、例えばどの道路が開通した、ゴミの回収、銭湯の再開、などは、どこで入手できるのでしょうか?

①ラジオ
やはり頼りになるのは、ラジオ。ラジコなどのアプリできくこともできます。

②自治体などの公式アカウント(Twitterなど)
自治体広報、防災課、社会福祉協議会、その他団体や店舗・企業などいろいろなところが発信しています。知人や誰かがつぶやいた噂ではなく、公式アカウントが発信した情報を優先しましょう。

③Yahoo!防災速報アプリの「災害マップ」機能
災害の危険が迫っている時にユーザー同士で状況を投稿して共有できるほか、メディアなどの連携パートナーによる投稿情報を地図上で確認できます。 https://notice.yahoo.co.jp/emg/sokuho/service/userreportmap.html

 安否確認は、NTT災害伝言ダイヤル・伝言板「171」

災害直後は、多くの人が親族知人の安否を確かめようとします。そのため、緊急度の高いものを優先するために、90%以上回線規制が行われます(*2)。
(*2)総務省https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/net_anzen/hijyo/yusen.html

【災害用伝言ダイヤル171】
そんなときも、NTT「災害用伝言ダイヤル171」は、必ずつながります。
https://www.ntt-east.co.jp/saigai/voice171/index.html
ひとつの電話番号を決め、その電話番号にメッセージを録音する=>受け取り側がきく=>メッセージを返す、という仕組みです。

NTTウェブサイトより

使用方法は上記ウェブページをご参照ください。

これは災害時に立ち上がるサービスですが、1月と9月の数日間、毎月1日と15日は体験利用できます。

私も夫、実母、弟と体験利用してみましたが、かなり手こずりました。

まず、どの電話番号に伝言を残せばよいのか? 自宅の固定電話? 誰のスマホ? というところから。

ガイダンスに従って操作すればよいはずなのに、なかなか進みませんでした。

是非、ご家族や親族での練習をおすすめします。

【web171 災害用伝言版】
ひとつの電話番号を軸に、文字入力で伝言のやりとりできるのが「web171災害用伝言版」です。

携帯電話、スマホ、パソコンなどのインターネット経由で伝言を文字入力できます。その伝言内容は、あらかじめ登録しておいたメールアドレスや電話番号に通知されます。 https://www.ntt-east.co.jp/saigai/web171s/shikumi.html

【災害用伝言ダイヤル171、web171災害用伝言版の使い方動画】
残念ながら、これらは文章では分かりにくいサービスです。

以下のサイトで、各3分程度の動画で「災害用伝言ダイヤル171の録音」「再生」「web171災害用伝言版の登録」「確認」が説明されています。

大切な相手に、このサービスを知らせてあげてください。
今年は私も、夫、実母、弟でこの体験訓練をします。

https://www.ntt-east.co.jp/saigai/movie/171play.html

被災後の子どものケア

被災後はバタバタしていますが、少し落ち着いたら、お子さんの様子をみてあげましょう。

【身体面】
アレルギー、下痢や胃腸障害、脱水などに気をつけてあげましょう。まだ自覚できず、訴えられない年ごろの子供に対しては、周りの気づきが必要です。

肌の色が悪い、皮膚が脱水の際は、経口補水液を。3回目の記事で作り方を説明しています。

「かくれ脱水」チェック法(*2)
(1)爪の色をチェック
爪を押したあと、色が白色からピンク色に戻るまで3秒以上かかる

(2)手の甲をつまんでみる
脱水状態の場合「富士山」のように盛り上がった皮膚がすぐに元に戻らない。

(3)尿の回数、色をチェック
おしっこの回数がいつもより減っている。尿の色が濃くなっている。

(*2)出所:かすかべ生協診療所http://www.kasukabe-sin.net/think/th04.html

【こころ】
子どもも災害によるストレスや恐怖を感じています。夜泣き、情緒不安定、赤ちゃんがえり、いつもより泣く、いつもより泣かない、地震ごっこ、過度の甘えなどの変化が表れるかもしれません。

反対に、災害直後は何も変化がみられなくても、落ち着いたころにどっと変化があらわれることも。
周囲にあわせて、子どもなりにがんばっている場合もあります。親の不安を感じ取りやすいので、難しいですが親が落ち着くことも肝心です。

(*3)出所:宮城県「災害時のメンタルヘルス」 https://www.pref.miyagi.jp/uploaded/attachment/247738.pdf

5回にわたり、地震への備えをまとめました。やるべきことがたくさんありすぎてどうしよう、ますます不安になった、と感じる方もおられるかもしれません。でも、防災士の私でさえ、できていないことは多いです。

周りと協力しながら、少しずつ取り組みはじめましょう。皆さんの生活スタイルや好みに応じた備えができればいいですね。

お子さんを守るのは、あなたです。
でも、ひとりで背負い込まないで。
一歩踏み出せば、世界は変わります。

◆「赤ちゃんとママの防災講座」では、乳幼児親子向け防災の知恵・スキルを毎月配信、講座を随時開催しています。


防災講座の様子

上沢 聡子
防災士、「赤ちゃんとママの防災講座」主宰
大阪で阪神大震災を経験。東京で出産後、「今、被災したら子どもを守れない」と奮起し、乳幼児親子向け防災を始動。同活動で「第9回健康寿命をのばそう!アワード母子保健分野厚生労働大臣賞優秀賞」を受賞。ミキハウス雑誌などに寄稿。東京都語学防災英語ボランティア、中野区防災リーダー。小学生ママ。
http://oyakobousai.itigo.jp/wordpress/
oyakobousai@gmail.com


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