金がなけりゃ


あるトタン屋根の下に、3人家族が住んでいた。

そこでは母と父と娘が3人で住んでいた。

父親は低賃金の日雇い工場で働いた。

母親は体が弱かったため家で内職しかできなかった。

そんな2人の収入ではまだ小さい娘に贅沢はさせられなかったけれど幸せであった。

だがある時悲劇が訪れた。

工場の閉鎖だ。

その工場は社長の意向によって製造コストと労働賃金のバランスがうまくいかないことから閉鎖が決まった。

新たな働き場所を探す父親だったが、学歴も満足でない父親になかなか新たな働き場所は見つからなかった。

そしてしばらく金が入らない日々が続いた。

みるみるうちに家族は衰弱していった。

野草や、雨水を飲む日々が続いていたあるとき、娘は母の腕の中で息を引き取り亡骸となった。


「金がなけりゃ…うまいもんも食わせられん。

 金がなけりゃ…生きることも許されん。

 金がなけりゃ…    金がなけりゃ…」



あるところに父、母、息子の裕福な家族がおったそうな。

その家族は代々お金持ちの家庭で、なんでも父親が地元に根付いた企業の歴代社長であり、今の父親は4代目であった。

家族は毎日幸せで、

当たり前のように暖かい帰るおうちがあり、

当たり前のように子は学校へ通い、

当たり前のように高級なステーキをほぼ毎日食べていた。


そんなある時。


父親は、ある者に刺殺された。

刺した者は去り際に呟いた。

「お前が工場を閉鎖するから悪いんだ…」


亡くなった男の妻は、警察の死体安置所で夫の真っ白な顔を見ると膝から崩れ落ちて泣いた。


「私たちが何したっていうのよ…

 夫が何したっていうの…

 金持ちだったから妬まれ、疎まれることになるなら

 お金なんていらない。

 金がなけりゃ…     金がなけりゃ…   」



 


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