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まぶしすぎる夏、「響け!ユーフォ二アム」

今更ながらネットフリックスでアニメ「響け!ユーフォニアム」をみている。
元吹奏楽部、ユーフォ奏者だった私にとって、アニメが始まった時から気になっていた作品(小説の存在はあとから知った)。

吹奏楽経験者なら懐かしくなるあるあるネタが作品中に散りばめられていて、学生時代を過ごした音楽室の空気や匂いが蘇る。

繰り返し練習したソロパート。
各教室に散らばって吹き散らかしたパート練習。
全体合奏中に飛ぶ指揮棒。
識者が腕をふりあげた瞬間に揃うブレス音。
薄暗いステージ袖。
みんなで4階から下ろしてトラックに積み込んだティンパニー。

どの部活もそうかもしれない。
汗と悔しさと憧れと。あの10代の自意識と戦った自分が蘇ってくるのだ。

夏のコンクール。

燕尾服を着た顧問の先生が指揮台に立ち、タクトを上げると同時に、
部員が楽器を構える瞬間の音まで見事に再現されていて、
20年近く経ったいまの私の脳裏にもあの緊張感とその心地よさがうかびあがる。

全力でうまくなろうとしながら、もがく登場人物たちに涙がこみあげる。
あぁ、なんてまぶしいんだろう。

あのときもっと音楽に打ち込めばよかった。
唇が痛くなるくらいに練習をすればよかった。
いま思い返せば、中途半端にやりすごしていたよう気もする。

でも当時の私は部活だけでなく授業も恋愛も友達関係も、全てのことに対し、大人になる一歩手前の名前のない不満とやるせなさを抱きながら、
全力でぶつかっていたような気もする。
部活はそのなかのひとつに過ぎなかったから、そこだけに全てのエネルギーを使うことができていなかった。

教室の窓から外を歩く人を眺めては、あの人はいま外を自由に歩いているのに、なんで私たちはこの狭い教室に閉じ込められているんだろうと、誰に対するものでもない憤りを感じていた。

あの時間は二度と取り返せない一瞬で、私はまさに思春期の渦中にいたのだろう。

役に立たない、いなくてもいい人にはなりたくなくて、人に嫌われたくなくて、人の輪の中にいたくて、良くも悪くも、爪痕を残そうともがいていたことは覚えている。
そんな愚かで愛おしい10代。

私たちが出た夏のコンクールの結果はどうだったっけ?
いまとなっては覚えていない。

あのとき、一緒に先生に怒られながら、見えないゴールに向かって吹き続けた友人たちはいま、どうしているだろう。

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