幸せになりたい

こちらの続編です。
読んでない方はこちらから。





あの子が好いてくれているみたいだ。

何を話しても恥ずかしそうにしていて、会話が成立しないほどの返事だけを残してどこかへ行ってしまう。いつも顔を真っ赤にして目を合わせるのですら難しそうにしている。

あの子が他の人に対してそんな反応をしているのは見たことがない。だからこそそう思ってしまう。

恋愛は無縁だと思っていた人生だけど、好きな人への反応くらいは分かる。

それはもう漫画のような分かりやすいリアクションをする。それが可愛くてついからかってしまうこともある。


そんなあの子から突然「いつか、どこかの誰かと幸せになってください!」と言われた。


急すぎてよく分からなかったけど、その言葉が頭を離れることはなかった。

ーいつか、どこかの誰かと幸せになるー

「幸せ」は1人でも十分味わえるものだ。

美味しいものを食べたり、面白い映画や本を見つけたり、趣味に没頭したり。

今までも「幸せ」を1人で沢山感じてきた。


誰かとの「幸せ」だって感じたことがある。

学生時代に部活で優勝したとき、仕事で目標を達成できたとき、友人とスポーツ観戦をしたとき。



だけど、誰かと幸せに「なる」というのは継続的なもので、生涯ずっと誰かと幸せでいつづけるということだ。


「幸せ」の形は色々あるけれど、あの子に独り身だとバレていたということになる。

それもそう。
自分はどこの誰が見たって独り身だ。


独り身でいることになんの抵抗もない。
というより、自分は独り身でいるべき人間だと思っている。

誰かと幸せになるなんて想像すらできない。
だから、一生独り身でいるべき人間だと自負していた。

ただ、あの子からそんな言葉をもらうことになにか違和感を感じた。



好いてくれているはずなのに他の人との幸せを願われている?


好きだけど自分では手に負えないということなのか。それとも好かれていること自体が勘違いだったのかもしれない。

どちらにせよ虚しくなった。



「いつか、どこかの誰かと幸せになってください!」

これは仮に好きでいてくれたとしても 無理、論外だということだ。

分かっていた。分かっていたけど、言葉にされると辛くなる。

それなら何も言わず関わらないでほしかった。


自分も素直に人を好きになって、好きな人と結ばれたい人生だった。


いつか、どこかの誰かと幸せになりたい。


そんなこと自分は考えてはいけない人間なのだ。


もうあの子とも距離を置かないといけない。

勘違いかもしれないけれど、あの「好き」という感情がバレバレな可愛い反応を見られないのは寂しい。

だけど、その「好き」という感情すら本物ではないことが分かってしまった。



自分がまた虚しくなるだけ。





あの子も自分も 女だから。

※このお話はフィクションです。


偶然の答え / 櫻坂46


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