私の好きな人

私には好きな人がいる。

だけど、気持ちは伝えられてないし、付き合うなんて夢のまた夢だと思っている。というか付き合えるなんて微塵も思っていない。


私の好きな人は他の人とは違う。

たとえば私がイメチェンしたとき、他の人は「あれ?髪切った?かわいい!」って褒めてくれるけど、その人は「なに?いきなり短くしてどうしたの?」とニヤニヤしながら聞いてくる。

たとえば私が落ち込んでるとき、他の人は「どうしたの?大丈夫?」と慰めてくれるけど、その人は「暗い顔しちゃってー!」と茶化してくる。

たとえばすれ違って私が挨拶をしたとき、他の人は挨拶を返してくれるけど、その人は挨拶を返してくれたあと必ず「最近どう?」とか「そういえばあのときしてくれた話すごく良かった」とか、話す機会を与えてくれる。

そんな「普通」には当てはまらないナチュラルな気遣いとかっこよさに惚れてしまった。


適度にコミュ力のある私は、普通の人に対してのうまい返事の仕方は寝ててもできる。
なんなら相手が確実に喜ぶ返事をすることだってできる。それくらいの引き出しは持っている。

だけど、その人はいつも予想外で、用意していた言葉を使えた試しがない。そういうところも含めて好きになった。



今まで誰かを好きになるのは単純すぎる理由だった。

小学生だったら「足が速い」とか

中学生だったら「部活頑張ってる」とか

高校生だったら「勉強できる」とか

大学生だったら「服がおしゃれ」とか

それはただの条件や身に付けているものであって、その人自身の要素ではなかった。

だから、急に足が遅くなって、部活を頑張らなくなって、頭が悪くなって、服がダサくなってもその人のことが好きか?と聞かれたらと真っ直ぐに好きとは言えなかったと思う。きっと流行りの蛙化現象を起こしていたはずだ。

そんな簡単な感情だったから今思えば本気で好きではなかったんだろう。

でも今は違う。

私の好きな人は、足も速そうだし、何事も頑張って取り組んでいるし、勉強も割とできそうだし、服もおしゃれだけど、それがすべて逆になっても胸を張って好きだと言える。

そんな条件や身につけているものはどうでもいい。

その人の内側から滲み出る優しさと、かっこよさと「普通」に当てはまらないところが好きで、それはその人が今まで生きてきた重みなのだ。


うまく言い表せないけれど、「普通」(=一般的)ではないということは、きっと私の知らないところでたくさんの苦労や悲しみを抱えてきて、人の痛みをよく分かっているんだろうと思う。

優しさやかっこよさには惚れ惚れするし、予測不可能なところも漫画でよくある「フッ、おもしれぇやつ^_^」みたいな気分になる。実際、そんな上から目線ではないけど。



私がその人のことを好きだということは、一切、誰にも言わずに私だけの感情として心に秘めておいている。

なんでかというとそれくらい自分がガチだから。本気で好きになってしまったから。

その人は私にとって唯一の存在で、私にとっては欠かせない大切な人だ。


でも、その人からしたら私はきっと大勢の中の1人で、好きでも嫌いでもない、本当にただの脇役Dくらいの存在でしかない。

その人の予測不可能な言動にうまく返せず言葉を詰まらせてる人間を好きなわけがない。

そんな私にすらこんなに優しくしてくれて、かっこいいところを見せてくれるなんて、一体その人は好きな人に対してどんな態度を取るのだろうと気になってしまう。

私は本気で好きだけど、報われたいとは思っていない。本気で好きだからこそ、その人の幸せを応援したいから、私の存在なんかで邪魔をしたくないのだ。


「いつか、どこかの誰かと幸せになってください!」


……いつも私はそう願っている。


その人が幸せになれるまで。
私はずっと応援している。






※このお話はフィクションです。

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