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経営社会学の公開に先立って〜初めに〜

「社会学の眼をもって学び感じてきた経営や企業のこと」を共有したいと思い、適切な概念が見つからなかったので『経営社会学』なるものを(恣意的に)唱え、記述してみました。

会社員やフリーランスをやって15年ほどですが、社会の1つの中心プレーヤーである「企業」なるものが一体いかなる論理・倫理で運営されているかを調査する、というのが小生が働き始めた頃からの隠れたミッションでした。スパイのように内部調査をしていく感覚です。

その中で、人文科学的なもの、社会学的なものがどのように役立つか、もしくは役立たないかを、いろいろな観点でテスト・検証して参りました。
またこの調査の過程では思わぬ形で、企業で勤めることのまたとない喜びや奇跡を経験し、仲間を作ることができました。(思わぬというのも、正直あまり企業というものに期待していなかったからでした。)

なのでこの私論は、企業運営・経営を頭から批判し、学術(社会学など)を称賛するものではありません。むしろ逆で、企業・事業を通した哲学や思想は、十分に社会学に影響すべきであり、当然社会学の知見も健やかな経営に生かされるべきと確信を深めました。
なので、ここでは、その行ったり来たりが語られることになります。
そのような観点でご賞味いただけましたら幸甚でございます。

構成と筆者紹介

まずこの記事で、「初めに」を紹介し、その次の記事で目次、本文へと入っていきます。
筆者は、最初にメーカーズシャツ鎌倉(SMR株式会社)で8年勤めたのち、日本のベンチャー企業FlagshipにてPM・経営企画、その後コンサルを経て、2024年3月より日本のSaaS企業で勤務をする34歳・東京出身です。ご参考までに。

初めに
〜神よ、変えられるものを知れる知性を、変えられないものに耐える冷静さ(忍耐)を、そして変えるための勇気を〜

経営や仕事を語る上で、企業だけを語っても足りません。なぜなら企業は社会の一部(さらに社会は世界の一部)といえるからです。
とはいえ社会だけ行っても足りない。多くの人にとって人ごとである(これ自体は問題)からです。
社会・企業と相関する形で、企業文化のあり方は、社会・文化に応じ、発展しているといえます。

この本の趣旨は、新たに社会・世の中を生きていく若者に「社会学の知見を使ったものの見方、生き抜く力を与えられること」と、

また、そんな若者を巻き込みビジネスを行っていく経営者・経営陣・マネージャーに、継続した発展のために、「会社の社会化、会社に社会学の知見/ベストプラクティスをどう取り込むか」をお伝えすることにあります。

同時に、「社会ってこういうもの、世界ってこういうもののはずだった」と自分が思いだすため、でもあるかもしれません。

筆者である私は、社会に出てから、約15年、社会とはどのように回っているのか?を調査しているつもりで、社会人をしてきました。

その中で出会えた数々の奇跡から、素晴らしい先生方に出会え、直接学んだことが、この本の礎になっています。

先に結論を言うと、やはり、これからのビジネスマン・経営に社会学は不可欠だと考えています。
社会学が耳慣れず、また不十分であれば、文系学問と言っても良いと思います。
*話を分かりやすくするために、ここでは社会学で進めます。

社会学は、座学でもあり、実践です。

宮台先生からお借りしますが、教育と、社会化の違いで考えると分かりやすい。
教育は、教育意志の完徹。企業で言うと、こんな人材に育ってほしいと思い、クレドを復唱させたり、技能訓練・研修を行います。
一方、社会化とは、教育意志を超えた経験全てから学び、社会に適応する能力を高める(適応、とは違う)ことを言います。

同様に、会社化とは、個人が会社で、会社が社会で、生き残る術を学ぶことだといえます。
例えば、どう会社の中で自分の潜在能力を発揮させるか、チームのcreativeを最大限発揮するかだったり、業界の不文律などがそれにあたります。

要は、会社から教えられたクレドや研修だけでは当然通用せず、世の中が当然と思っていることをやったら当然会社は倒産します。

この社会・会社の、前提・背景・文脈・因果を伝えるのが社会学だと思っています。

そんな重要な社会学をお伝えする機会は社会になく、経営者も従業員も、丸腰で社会に、会社に、世界(global)に挑まないといけません。
その為の少しばかりの知恵を、本書では共有していきたいと考えております。

ちなみにここでは、世界と言いました。
世界では、長い闘争、ジェノサイドを経て、各国世界で生き残る術を記憶し継承しています。
中国ではどの国でも中華村を作り、来たる同国の人間のために生きるノウハウを準備しており、同国の人が来たら最善を尽くしてバックアップします。
欧州では、差別的な態度・発言が徹底して忌避され、多様な国々・国籍の中でうまく立ち振る舞い・生き残る知恵を伝えています。
Harvard businee schoolでは外交的であることを推奨・特訓し、どんな状況でもリーダーシップを発揮できる振る舞いを授けています。
それでは、日本・日本人は、世界で戦う上で、何が引き継がれているでしょうか?

みなさんには、人生で学んだたくさんの知恵があると思います。

本書では私が稚拙ながらお伝えしますが、本来、知恵の輪は広く社会に構築されるべきです。(これを知識社会化と言います)
皆さんにも、その和の一人になっていただきたいと考えています。
ご自身で学ばれたこと・気づき、ご自身が得意なこと・領域など、どうぞ声を大にして(もしくは隣の同僚にひっそりとでも)おっしゃってください。
*鬼滅の刃、炭治郎が善逸などから学んだこと(どのように走るべきか)が生きるシーンをご想起ください。

本書をきっかけに、そのような場を設けていければ幸いです。

最後に、この本の動機をお伝えし、本論へ進ませてください。
重要なキーワードである「感染」です。
鬼滅の刃・煉獄さんの言葉を借りると「自分の心を燃やす」ことで、「人の心を燃やす」ことです。

「自分の心を燃やす」。
それは、自分の強み、付加価値、天性を理解した上で、それを発揮していくこと、にあると思います。

とはいえポイントは、結果は、意図を超えていくと言うこと。良かれと思ったことが良くない結果を、逆もまた然りです。
そう、社会(この場合、世界と言い換えても良い)は、当然人々の意図とは関係なく作動します。その行動の結果を踏まえ、引き受けていくことしか、私たちにはできません。

けど、そこで足踏みしないで、動機が良いこと、動機が利他的であることも重要と思うのはいかがでしょうか?

時々「自ずと体が利他的に動いてしまう」ことがあると思います。それは社会化によるものだったり、ゲノムに書き込まれているものだったりします。
そう、私たちは社会の中で、利他的に振る舞えるかどうか、常に試験にさらされています。

このように、結果だけでなく、動機に着目した時に、利他的であることを意図していると思える人がいます。きっとあなたの周りにもいるはずです。
母親・父親かもしれませんし、友人・恋人、職場の同僚・上司かもしれません。

人は、そんな利他性”だけ”に「感染」します。
逆に言うと、利他性でないことには、感染しません。(嫉妬はします。)
煉獄さんの議論に戻りました。

なぜ今、自他ともに心を燃やすことが重要か。

まず、幼少期から、コスパが重んじられ、誰もが高収入だけを目指す・・それも重要な部分はあるけれど、それだけではうんざりではありませんか?

また、多くの場面で、社会・会社で世界が誤作動/不作動を起こしていることがわかっています。
日本に固有の問題、例えば自殺率、生産性が上がらず、給与が上がらないことや、
世界で起こっている問題、ポピュリズムや戦争があります。
資本主義・競争主義で解決できない問題が、必然的に明るみに出てきたと言われています。

その打ち手は何か?

マザーテレサが言う「世界中の人が自分の玄関口をきれいにしたら、世界は平和になる」に近い実践的な倫理。
自分が誰かの利他性に気づき(炎の受け渡し)、利他的な目的(炎)のために自分を発揮し、他の人にも感染させる(炎を受け渡す)勇気、実践、その全てを含んだ知恵だと考えています。

知恵とは、知識と違い、実践を通し、体/頭蓋骨で体得している生きる術だと思います。(ギリシャ時代に言われていたエピステーメーがしっくりきます。)
時間と、繰り返しと、一人での努力が不可欠です。

その炎が連鎖することは良い会社・社会の始まりで、必要条件に過ぎません。
けれど、「社会が〜、会社が〜」と他人事のように語る前に、まずは自分に引きつけて、心を燃やすことから始めるのはいかがでしょうか。
*何%(7%など)が動けば、全体が動く、という話もあります

けれど、そういう機会がある人は、まだ恵まれているかもしれません。
今では、家族もかつてのようでなく、地域もなく、本も読まれない。
企業も、コンプライアンス重視で、余計なコミュニケーションを削ぎ落としています。

こんな中で、心燃やせる機会がある方が珍しいと考えています。

なので、この本が、そしてこの本を通して知っていく本や、この本がきっかけで出会える人たちから、炎の連鎖が始まることを、切に祈っています。

筆者も社会における手痛いミスから、多くを学びました。
そこでご迷惑おかけした方には本当に申し訳ないし、助けてくださった方々には本当に感謝しています。
その傷、痛みがあるからこそ、人が弱い生き物であることを前提に、深く伝えることができると考えております。

先ほど奇跡のような出会いと申しました。そしてこの本は、当然のことながら、多くの部分を先人たちの知見から借りています。
中でも貞末良雄氏(元鎌倉シャツ会長)からの教えは、私を感染させ、心に火をつけるに十分でした。また15年余私淑する宮台真司先生から預かったものは計り知れません。

そう、この本は独自の統計もなく、借り物の概念で構成・編集されています。
引用した先人たちのご著書を末尾で紹介しますので、是非原著にあたってみてください。(万が一違うところ見つけたらご指摘いただけますとありがたいです。)

宮台氏曰く、Giftとは、ドイツ語で毒の意味も持つ。返さないと、次の人にパスしないと居心地が悪い、それもこの本の動機になっています。

全くもって私自身の修行はまだ不十分と自覚していますが、皆様へ少しでも還元できれば、筆者としてこれ以上の喜びはありません。

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