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懐かしい が似合ってる

勉強中、髪の毛をなんとなく手櫛でとかしていたら昔のおばあちゃん家のにおいがした
昔のおばあちゃん家のにおいなんて全く忘れてしまっていたのに、また思い出せたことが、何かに出会えたようにうれしかった

昔のおばあちゃん家は平屋でこじんまりとしていて古さが蓄積されているような、それでいてやっぱりおばあちゃん家でしかない家だった

深くてアルミでできた湯舟 あっついお湯 せまいけれど何かにぴったりとはまっているような大好きだったお風呂場

玄関なんか使うことなんてなくて、ちょっとした土でできた坂をのぼって、小魚が泳いでいる壺とか、海藻がしめじめと育っている脇を通り抜けて、少し薄暗くて暖かい何かがそこにはあった

人生で一番素晴らしかった景色はそこだったと答えるかもしれない

恒例のザリガニ釣りをした後に、いつもと同じいつも楽しみにしていたつぶっとオレンジジュースを自動販売機で買ってもらった。お兄ちゃんは黄色と青のシュワっとしたやつでそれも何一つ変わらない景色だった

異常なほどに四つ葉のクローバー、五つ葉のクローバー、六つ葉までも見つかって、それはもう嬉しくてわたしでも何年も何年も押し花にしたものを大切にとっておいていた あれがちぎれてしまった時は何か別な物を失ってしまったような心地がした。

おばあちゃんが作る料理はどれも美味しいはずだけれど、卵でとじた大根か、じゃがいもか、何かのケーキ的なものだけは美味しいと思えなくて逆にそれだけがすごく鮮明に記憶に残っているんだ
きっと苦手な自分が悔しかったんだと思う。すごくおいしそうなのに何故か食べられない自分が。

おばあちゃんが書いた私の母の子供時代の絵が壁に飾ってあって、妙に不穏感を漂わせているのだけれど目が離せなくて気付いたらなくてはいけないものになっていた
昨年頃だろうか、新しくなったおばあちゃん家の押し入れにしまってあるその絵を見たけれど、やっぱり何だかあの頃とは少し違って見えたんだ

今はもう戻ることのできないあの家に、何か大切なものを置いてきているような気がして
たまーに、たまーに、ふらっと通り過ぎて見たくなって車を走らせる
横目で見ながらも今はその家を直視できなくなってしまった。
若干の後ろめたさと、綺麗なままの何一つ変わらない思い出でであってほしいという我儘な願いのせいだろう

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