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筋トレのコツ5:「使えない筋肉」なのは単に「体の使い方」を知らないだけ

この記事では筋トレを続けていく上で重要になるコツの中でも、いわゆる「使える筋肉」と「使えない筋肉」についてまとめています。

ウェイトトレーニングで鍛えた筋肉が「使えない」と感じるのは、トレーニングの方法が間違っており、体の使い方を知らないからです。であるならば、それを覚えるようにトレーニングをすれば良いだけの話です。

こういったトレーニングに対する誤った考え方を改める人が増えない限り、日本は一生「トレーニング後進国」のままです。

特にオリンピック選手は全国民からなるピラミッドの頂点です。トレーニング後進国のままでは、いつまで経ってもピラミッドの底辺は広がっていきません。またどっちにしたって少子高齢化であり、ピラミッドは崩れ始めています。危機感を持つべきです。


「使えない筋肉」の原因を考える

バーベルやダンベル、あるいはトレーニングマシンなどを利用した「ウェイトトレーニングで鍛えた筋肉」は、スポーツや実生活などでは役に立たない「使えない筋肉」などとよく言われます。

特にそのような「使えない筋肉」については例えば、

・不自然な筋肉のつき方になり、体のバランスが悪くなる。
・体(筋肉)が固くなり、可動域が狭くなる。それにより怪我をしやすくなる。
・反応や感覚が鈍くなり、咄嗟の事に対応できなくなる。
・体が重くなり、素早い動きができなくなる。

など、とにかく散々な言われようで、ネガティブな印象を持っている人が非常に多いです。

一方、ウェイトトレーニングはせずに、スポーツ内で行う実際の動きの中で、あるいは実生活の動きの中で鍛えられた筋肉は、「使える筋肉」とよく言われています。

特にそのような「使える筋肉」については例えば、

・自然な筋肉のつき方になり、体のバランスが良くなる。
・筋肉が柔らかくなり、可動域が広くなる。
・反応や感覚が鋭くなり、咄嗟の事にも瞬時に対応できる。
・自分の思う通りに体をコントロールでき、怪我をしにくい。
・体が軽く、素早い動きができる。

などとされ、とにかくポジティブな印象を持っている人が多いです。

しかしそうして「ウェイトトレーニングで鍛えた筋肉が使えない、役に立たない」などと言われる原因の多くは、

・筋肉が大きくなった事で、自信がつくなどして、体の使い方そのものが変わってしまう。
・元々効率の良い体の使い方をしておらず、それが筋肉が大きくなった事で、ハッキリと自覚できるようになった。
・ウェイトトレーニングの種類や方法を知らないまま、効率の悪い方法で筋肉を鍛え続け、その上で心身のケアも怠ってしまう。
・元々心身のケアができていなかったが、運動量が増えた事でその影響が表に出てきている。

などというように、ウェイトトレーニングそのものが問題なのではなく、他の問題の方が大きいと私は考えています。以下ではそれについて説明していきます。


ウェイトトレーニングは長期的に考える

例えば肩や腕の筋肉を鍛えている人にありがちなのが、ボールを前に向かって投げる時、顎を強く噛み締めたり、腕・首・肩などに目一杯に力を入れた状態で、腕だけを思いっきり振り回そうとしてしまう事です。それでは当然体は上手く連動せず、勢いのあるボールを投げる事ができません。

そもそも投球動作は全身運動です。例えば右利きなら、ボールを投げる前に一旦横向きになり、右足に重心を乗せた後、左足を前へ踏み出す事になります。しかしいきなり足を踏み出すのではなく、なるべく右足で粘って、その踏み出しを遅らせ、踏み出した足を着地した瞬間に腰が急回転するようにします。そうする事で前へ踏み出す際のスピードが速くなり、それに伴って腰の回転スピードも速まり、それによる勢いを利用して腕の回転も速める事ができます。

ウェイトトレーニングをし、筋肉が大きくなり、それに伴って筋力が上がると、途端にそのような「力に頼った体の動かし方」になってしまいます。そのような選手はプロでもいます。それではせっかく上がった筋力も活かされませんし、短期的にはパフォーマンスが上がったとしても、毎回運動する度に余計に体力を消耗するため、そのパフォーマンスは長続きしていきません。

特に1年中試合があるような競技スポーツでは、「各試合での疲労が少ない」という事は非常に重要な事です。無駄な力を使わずに体を動かす事ができれば、短期的なパフォーマンスが向上し、「楽に勝てる」ようになります。それによって毎試合での肉体的なダメージも軽減でき、その積み重ねは長期的なパフォーマンスの安定にも繋がっていきます。当然それは「選手としての能力」としても評価されるはずです。


多種多様な動作・状況を想定したトレーニングを行う

球技スポーツでは、そうしてボールを投げ終わった後、あるいはボールを投げる前に、「自分が予測していなかった事」が起こる場合があります。

特に「対戦相手の人間」あるいは「ボール」は「必ずしも予測した通りに動く」とは限りません。ボールが変な方向に弾むかもしれませんし、あるいは味方選手がミスをするかもしれません。しかしどのような特殊な状況になったとしても、瞬時にその状況を判断し、常に最善の行動を取らなければならないのです。

つまり「単に速いボールを投げる事ができる」というだけでは「選手としての能力が高い」とは言えません。その意味では「特定の筋肉だけを鍛えるようなウェイトトレーニング」を行っているだけでは、真にパフォーマンスの高さ、及び選手としての能力の高さには繋がっていかないという事は言えると思います。

しかしそれは別の言い方をすると、「特定の筋肉だけを鍛えるようなウェイトトレーニング、以外のトレーニングを行えば改善できる」という事です。

特にウェイトトレーニングには様々な実施方法があります。例えば重たいダンベルやバーベルあるいはトレーニングマシンを使わないトレーニング、自分の体だけを使ったバランストレーニング、複数の筋肉を連動させるようなトレーニング、軽いウェイトを使って素早い動作を行うトレーニングなどがあります。

また実際のスポーツの動きに近い動きを取り入れたトレーニング、逆に実際のスポーツとは関係のない別のスポーツの動きを取り入れたトレーニング、体を動かし血流を促しながら筋肉を解すようなトレーニング、あるいは「特定の動作の前後にランダムな要素を加え、瞬時に状況を判断させる」ようなトレーニングを行う事もできます。

そうした様々なトレーニングを行って、体の動かし方を覚えていけば、「筋肉がつく事による体の使い方の変化(精神的な部分も含め)」は後からいくらでも改善できます。また多種多様な状況や動作をトレーニングに取り入れて行えば、不意に予測していない状況に遭遇しても、瞬時に体をコントロールできるようになります。それによっては、あらゆる状況でのパフォーマンスの向上・安定化に繋がり、怪我もしにくくなると思います。

おそらく多くの人はこのような「ダンベルを上げ下げするトレーニング以外の方法」を知らないからこそ、いざ慣れないウェイトトレーニングを行った時、マイナス面ばかりが表に出てきているように感じて、勝手に「役に立たない」「使えない」「不自然」「重い」「固い」「遅い」などのネガティブな印象を持ってしまっているのです。


「効率の良いトレーニングの方法」を知ろう

筋肥大を目指すようなウェイトトレーニングでは、「特定の筋肉に効かせる」ような「決められたフォーム」で、「できるだけ反動や勢いを使わず」に、「その筋肉の持つ筋力だけを使って」体を動かし、更に「敢えて筋力を余分に消耗させるように力を使っ」て、「目的の筋肉に大きなストレスを与え」て、「短時間で効率的に筋肉を疲れさせる」必要があります。

またそうして筋肉を疲れさせたら、十分な栄養と十分な睡眠を取り、心身の回復を待つ必要があります。つまり回復して万全の状態になってから再びトレーニングを行う必要があり、毎日ハードなトレーニングを行えば良い訳ではありません。

しかし今までウェイトトレーニングを行った事がない人の場合、そのような「効率の良いウェイトトレーニングの方法」を知らない事が多いです。

例えば「腹筋」という「起き上がって戻す」という動作は知っていても、実際には「効率良く筋肉を鍛えるような体の動かし方」になっていない事があります。動作は同じでも中身が違う訳です。その結果、何十回、何百回と同じ動作を繰り返し、しかもそれを毎日に近いペースで、高頻度に続けてしまいます。

そのような事をすれば、筋肉の肥大が起こる前に疲労の方が上回り、咄嗟の動作に対応できなくなったり、柔軟性が低下したり、心がついて来なくなったり、あるいは怪我をしやすくなってしまったり・・・という事が起こり得ます。それは「ウェイトトレーニングが原因」なのではなく、「ウェイトトレーニングの方法が間違っているから」です。

また一旦ウェイトトレーニングを始めると、そのように効率の良い方法を知らないまま、「継続する事」に強い使命感を感じ、精神的・肉体的に疲労があったり、体調及び調子が優れないにも関わらず、無理にトレーニングを続けようとしてしまいます。その時々のコンディションを考えず、ただひたすら「肉体を消耗させる事」に固執してしまうのです。

特にウェイトトレーニングを始めれば運動量が増えるため、以前よりも「活動と休息のバランス」の重要性が増しています。心身のケアを怠った状態でトレーニングの量だけを増やしていけば、マイナス面が大きくなってしまうのは当然の事です。それは「ウェイトトレーニングだけが原因」なのではなく、「心身のケアを怠っているから」です。

時間は有限であり、心身も有限です。「ただウェイトトレーニングを行う・続ける」のではなく、できるだけ効率の良い方法でウェイトトレーニングを行い、実際に行っているスポーツとのバランスを取りながら行いましょう。


筋肉が可動域を制限する可能性について

例えばボディビルダーなどのように、筋肉を大きくする事を何よりも優先させる場合、筋肉の盛り上がりによって、関節の可動域が狭まる可能性があります。

例えば太ももの内側の筋肉が大きく発達した場合、歩いたり走ったりする時、その内側の筋肉が邪魔をして、足を真っ直ぐ前へ出す事ができなくなります。つまり股関節の可動域が狭くなっているのです。それによっては着地の際、膝の関節や股関節に不要なストレスがかかり、怪我のリスクが高まるという事は十分に考えられます。

ただしそれは、例えばボディビルダー、相撲の力士、ウェイトリフティングの選手、ヘビー級の格闘技の選手、競輪・スピードスケートの選手などのような、非常に大きな筋肉を持っている場合に限った話です。競技によっては全く当てはまりませんし、それどころか日本人の体格では当てはまらない人の方が多いです。

特に日本はプロのスポーツ選手でも、ウェイトトレーニングを行う習慣のない選手はたくさんおり、そのような選手も例外なく怪我をしています。体を鍛えている大きな選手が怪我をするとそれが目立つため、「体を鍛える=怪我をしやすい」という印象を持ってしまいますが、実際には体の小さな選手、体の細い選手もたくさん怪我をしているのです。

前述したように、その原因の多くは「そもそもの体の使い方」や、運動量が増えたのに「心身のケアが疎かになっている事」、あるいは「トレーニングの実施方法やその種類」による問題です。やはり「ウェイトトレーニングそのもの」だけが原因ではありません。

特に「筋肉への血流の悪化」は、筋肉そのものの機能を低下させ、関節の動きを悪くさせ、柔軟性・筋力・持久力を低下させます。スポーツ選手のように日常的に運動習慣のある人でも、例えば同じ姿勢で長時間いるなどの生活習慣によっては、筋肉の血流が悪くなる事があります。

つまり例えば肩や肩甲骨を日常的に動かしている野球選手でも、肩コリをして、それが原因で可動域が狭くなります。サッカー選手もずっと座っていれば、股関節の筋肉が凝り固まってキック力が落ちる・・・という事があり得ます。その場合、血流を悪化させる根本的な原因が改善されなければ、ストレッチをいくら繰り返しても本来の可動域は戻ってきません。

そのように「可動域の制限」は、必ずしもトレーニングや筋肉の大きさだけが原因ではありません。ましてやウェイトトレーニングだけが原因で体が固くなる訳ではないのです。


何をもって「役に立たない」「使えない」とするのか

例えば階段を上り下りする時に使われる筋肉や、その際の体の使い方は、森の中で原始的な生活をしているような人たちからすれば、絶対に必要のないものです。

そう考えると「不自然な筋肉」という言い方をするとすれば、現代人の殆どが「不自然な筋肉」と言えると思います。つまりどのようなスポーツ選手で、どのようなトレーニングをしていたとしても、そのスポーツをするために体を鍛えている時点で、みんな「不自然」なのです。

例えば海外のサッカー選手やバスケの選手は、ボディビルダーほどではないものの、ウェイトトレーニングを行って、体を鍛え、大きくしています。何故ならそうしないと相手選手とコンタクトした時、当たり負けしてしまうからです。

しかしサッカーやバスケで使っている筋肉は、実生活では何の役にも立ちません。ドリブルしたり、ジャンプしたり、キックしたり、ヘディングしたり、あるいは誰かと体をぶつけ合ったり・・・当たり前の事ですが、それらは家事をしていれば殆どしません。つまり一般の人からすれば、サッカーやバスケの筋肉は「不自然」「役に立たない」「使えない」はずなのです。

ただ、それに対して一般の人たちは「不自然」「役に立たない」「使えない」とは決して言いません。何故なら、そのスポーツの事をよく目にしていて、ウェイトトレーニングによって鍛えた筋肉が役に立っているという事をよく知っているからです。

一方、例えばボディビルダー。ボディビルダーは他のスポーツ選手と比べても、とりわけ筋肉が大きく発達しているため、一般の人からは散々な言われようです。「不自然」「役に立たない」「使えない」「固そう」「重そう」の他、「あそこまで鍛える意味あるの?」「何のために鍛えているの?」など、時には職業や人格そのものを否定される事も・・・。

しかしボディビルダーばかりがそうして色々言われてしまうのは、単純に「そのスポーツの事を知らないから」です。特にボディビルの大会なんかは、一般の人では見る機会すらありませんし、活躍している選手が毎日どのような生活習慣をしているのかについても、テレビで特集を組まれる事は殆どありませんからね。

当然ボディビルのために鍛えた筋肉も実生活では役に立ちません。まぁ買い物をして重たい荷物を運ぶ時には、他のスポーツ選手よりは役に立つと思いますが、何10kgもあるような荷物を1日に何度も運ぶような生活習慣はかなり特殊ですから、やはり普通に生活をしていたらその大きな筋肉を使う場面はあまりありません。

何が言いたいのかというと、「不自然」「役に立たない」「使えない」などというのは、全てのスポーツで同じ事が言えるという事です。ボディビルに限らず、サッカーもバスケも、そのスポーツの事を知れば、その筋肉が役に立たないとか、使えないとか、そういう評価はできなくなります。深く知れば知るほど「そういう次元の話ではない」という事が分かると思います。

また重たいバーベルを持ち上げるウェイトリフティングの選手。彼らは普段から「瞬間的に力を入れるようなトレーニング」を行っているので、ジャンプ力を重点的に鍛えた訳ではないのに、軽量級の選手では垂直跳びを1m近くも跳ぶ事ができます。

それだけ高いジャンプ力があれば、バレーやバスケでも有利に働きそうです。しかしボールの扱いには慣れていないので、それだけジャンプ力が高くても、空中では上手くボールを扱えません。そもそもウェイトリフティングは個人競技なので、自分の周囲にいる選手の動きには対応できません。

つまり「役に立たない」「使えない」というのは、結局「体の使い方を知っているかどうか」なのです。バーベルを上げ下げするようなウェイトトレーニングだけをずっと行っていれば、ウェイトトレーニング以外の運動が不得意になってしまうのは当然の事です。であるならば、やはりバーベルを上げ下げする以外のウェイトトレーニングを行えば良いだけの話です。

まぁウェイトリフティングやボディビルの選手が、ボールを使った練習やトレーニングを取り入れて、それが実際の競技に役に立つとは到底思えませんが、それはサッカーやバスケでも同じはずです。ウェイトリフティングやボディビルの選手が行っているウェイトトレーニングが、サッカーやバスケでもそのまま役に立つかというと、そういう訳ではありませんよね。その競技に合わせたトレーニングを行うのは当然の事で、それはどのスポーツでも同じはずです。


ちなみに「ウェイトトレーニング」の中には、低負荷・高反復となるように行う「スピードトレーニング」という方法もあります。特にこのスピードトレーニングで扱う重量は最大筋力を基準に考える必要があります。つまり筋肥大によって基本的な筋力が向上すると、このスピードトレーニングで扱う事のできる重量も増やす事ができるのです。

このため筋肥大に対してネガティブな印象を持っている人でも、結局、筋肥大を起こすようなトレーニングは行わなければなりません。「ウェイトトレーニング=こういうもの(ダンベルやバーベルを上げ下げするもの、体が固くなる、重くなる、怪我をしやすくなるなど)」という固定概念は、自分の「選手としての幅」を狭めるだけだと私は思います。

以上です。何かのお役に立てれば幸いです。

「サポート」とはチップのようなものみたいです。頂いたチップは食品やサプリメントなどの検証に活用させていただき、後日記事にしたいと思います。