うるうるの日
「お母さん、発表の日いつやったっけ? ああ、あれか! 一日おまけのうるうるの日!」
「うるうるの日ってなんなん? それを言うなら閏日やろ。そう、2月29日ね。お母さん、もうお休みの予定入れといたけん。発表、楽しみにしとるね〜」
次男は小学四年生。
長男が小学四年生の時の最後の授業参観は、二分の一成人式というものがあった。10歳までの成長を見てもらうために、子どもたちが参観日に一人ずつ発表をするというものだ。
現在高校一年生の長男が小学四年生の時の成人はまだ20歳だったから、ちょうど10歳にあたる小学四年生が二分の一になる。
そのため、二分の一成人式と銘打って、授業参観の際に成人式のような式典が用意されていた。しかし、今回はそのような式典はなさそうで、通常の授業参観と同じ案内がされた。
特別な何かはないのかもしれないが、本人が色々と発表の練習をしていることは知っていた。
そのため私は発表を楽しみにしながら学校へと向かった。
いつもならギリギリに教室に入る私だが、今日は遅れてはいけないと思い、早めに学校に到着。
「俺、ちゃんと言えるけん。任せといて」
と登校前に次男が自信満々に言っていたが、果たしてどうなのだろうか。
昨年か一昨年の参観の際は、下を向いてもじもじしながら発表をしていた印象が残っている。今日は、とりあえずちゃんと最後まで発表できたら褒めてやろうぐらいの気持ちで参加した。
私は用意された席で次男の順番を待った。
黒板にはスクリーン。そこに子どもたちが自分で作ったと思われるパワポで作った資料が映し出される。発表内容は、将来の夢、なぜそれになりたいのか、夢を叶えるために必要な力、それを身につけるために今の時点でできること、そして締めの言葉。
みんな、素晴らしかった。
緊張のせいか早口ながらも、練習を頑張ったのだろうなという感じで次々に発表していく。
みんなの発表を聞きながら、今の小学生はすごいな、と思う。
私が小学生の時はここまで求められていなかった。間違いなく。
彼らは将来、私たちの頃よりももっと、高度な技術や能力が求められる時代を過ごすんだろうな、と思うと、少しだけ胸がキュッとした。
そして次男の番。
私はスマホのカメラを構える。スクリーン越しではなく、ちゃんと彼の発表を見たいと思い、録画しつつもスマホの画面は通さずに彼の発表を見守った。
彼はしっかりと大きな声でハキハキと発表していた。
大きくなったなあ、と思う。
タブレットを使いこなし、適切な言葉を選び、夢を語る息子に胸が熱くなった。
私にとって、この10年という時間は本当にあっという間だった。
君、この間私の股の間から生まれてこんかった?
歩けるようになったの、一週間前じゃない?
保育園卒園したのって、一昨日よね。
それで小学校入学って、昨日やったろ?
って聞きたくなるぐらいに、あっという間。
でも、彼にとってはたくさんのことを吸収してきた10年なんだなと思う。
子どもの10年は大人のそれとは違って、とてつもなく濃いものなのだろう。
たかが10年、されど10年、大切な10年。
私が彼をそばでしっかりと見守れる大切な10年だったのかもしれないと、過ぎ去ってやっと気づいた。
まだ彼は少年だ。
しっかりしてきたとしても、決して目を離してはいけない。
そしていつか、私の目を必要としない日が来ようとも、心は離さないこと。
それを忘れないようにしたい。
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