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焼きそばに降る、黒ごまと塩こんぶ。

曇天。

ゴールデンウイーク最終日。予報では雨、雲、雲。この天候は、連休最終日くらい出かけずに家でゆっくりしなさいよとの神のお告げと信じ、私はその日、ぐうたらすることに決めていた。

ガラガラと窓を開け空を見上げてみると空には暗雲が立ち込めている、ということもなく、意外に雨は降りそうにない天候。濡れずに犬の散歩に行けるのはラッキーだなと私は思う。我が愛犬の名はポッキーだけど。

私は散歩に行き、帰ってくると早速、家の掃除をした。気づくといつの間にか昼になっているではないか。リビングでゲームをしている小学五年生の次男が、腹が減ったと飯を要求してきた。

時間はいつの間にゴールデンなウイークに溶けてしまったんだろうか。つい今しがたゴールデンウイークの始まりに歓喜したと思ったのに、もう最終日じゃないか。あまりにあっという間すぎる時間の流れに私は驚いた。

小学生の頃や中学生の頃、要は子どもの頃は1日が長く感じた。休みの1日は反比例するように早く感じていた気がする。これに関しては子どもの方が経験がとか、なんか色々言われているような気がするが、私は大人になったにも関わらず、いまだに平日の1日が長いと感じている。もちろん休みの1日はあっという間に終わるけど。

私が平日を長く感じるのは、それは仕事がつまらないと思っているからに他ならない。たまに真剣に働くとあっという間に時間が過ぎていくので、もっと真剣に働いた方がいいんだろうなぁ(遠い目)。

授業中に空を眺めていたり、教壇に立つ先生がサスペンダーとベルトの両方をしていた理由を考えていた頃から、私は全く成長がない。

今だって、職場のあの人は強制縮毛をどのくらいの時間かけてしているのだろうかとか、座ったまま腹筋を鍛えるためにはどういう体勢で座ったほうがいいのだろうかとか、そんなことばかりを考えている。

ごめんなさい。いくつになっても子どもみたいで。

なんてセンチメンタルを装ってみた。そもそもセンチメンタルの意味もわかってない。いくつになって子どもみたいなんて言ってみたかっただけで、本当はしっかり大人になっていることぐらい私だってわかっている。

だって、ブラックコーヒーだって飲めるし、ビールだって美味しい。ワインだってウイスキーだって焼酎だって飲めるし。ピザにはタバスコだってかけるし、お寿司にはわさびもつけるし、公共交通機関で席だって譲れる。あ、それは子どもだってできるのか。私は子どもの頃はできなかったけど。

焼きそばだって、カップのソース焼きそばだけじゃなくて上海焼きそばだって作れるんだ!

だって、大人だもん!

めちゃくちゃ美味そうだなと思いながら、私は台所でパッケージを眺めた。よく考えたら偏食の小学五年生の次男は上海焼きそばは食べないよなと思い、私はスーパーへ走る。彼のためにソース焼きそばを買うのだ。それに上海焼きそばは二人前しかないので、家族四人で食べるには足りなさすぎる。ソース焼きそばも作って、焼きそば食べ比べと行こうじゃあないか。

私はまず普通のソース焼きそばを作った。多分どう考えても、上海焼きそばから作った方がフライパンを洗わずにソース焼きそばまでいけそうな気がするが、次男はとてもとてもお腹が空いている。まずは彼のためにソース焼きそばを作らなければならない。

ソーセージを炒め、もやしとニラを炒め、レンチンしておいた麺も炒める。ガーリックパウダーとごま油も入れて炒める。しっかり炒めたら粉末のソースをふりかけて、じゅうじゅう焼く。ソース焼きそばの完成。我が家のソース焼きそばには目玉焼きのトッピングが定番なので、フライパンを一度洗って、目玉焼きも焼いていく。結局、フライパンを洗うのは宿命だったようだ。

目玉焼きが完成したら焼きそばの上に乗せて、まずは次男にソース焼きそばを食べさせる。

次は下茹でしておいた上海焼きそばの麺をカリッと焼いていく。焼き終わったら皿にあげて、フライパンで上海焼きそばの具材を炒める。いちいち皿にあげるという作業は好きじゃないけど、今日はゴールデンウイークで余裕もあるし、ちゃんと皿にあげてみた。普段なら絶対しない。先に具材を入れて、麺を炒めて、火は通ってればいいでしょって思う。けど、今日は余裕があるから。大人だし。

具材が炒まったら、麺を入れて、ソースも入れてさらに炒める。液体のソースがなくなるまでしっかりと炒めたら上海焼きそばの完成。

先に入れておいたソース焼きそばと目玉焼きの隣に上海焼きそばをよそう。我が家の目玉焼きは蒸し焼きスタイルだから表面が白くなるのに、今日はオレンジ色だった。ああ、これは……と思っていたら、空から黒ごまと塩こんぶが降ってきて、目玉焼きに顔ができた。

どこかでちゃんとリアルな目玉焼きを自分のアイコンっぽくしたいと思ってたから、夢がひとつ叶った。ゴールデンウイーク最終日に、大袈裟だけど私は一つの目標を達成することができた。

なんて書いてみたけど、別に今まで目玉焼きに顔を書いて自分のアイコンに似せようなんてこと思ってなかったし、ちょっと思いついただけ。でも、ちょっと顔がいじわるそうな感じになったから、もう一度、もうちょっとアイコンに近い感じで黒ごまと塩こんぶを空から降らせたい。

まずは綺麗に目玉焼きを焼く練習から始めようかな。








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