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アルプスの境界守 スイス・ベリンツォーナ城壁群 

スイスには世界遺産が12か所もある。
ユングフラウ、ベルン旧市街、ベルニナ鉄道など名だたる有名観光地が並ぶ中、新しく2000年に登録された文化遺産。それが「ベッリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群」だ。

ラピュタのようなイメージ図

ベリンツォーナはスイス南部、イタリアとの境界にあるティチーノ州の州都だ。使われている言語もイタリア語で、街はイタリアの雰囲気が色濃い。特にスイス北部からやってくると、電車を降りた瞬間、真っ青な空に強い日差しが差して、まさしく南に来たのだと実感する。

駅前

電車駅を含む街は谷にあり、それを囲む山の上に三つの城壁がそびえたっている。電車の中からすでに目に飛び込んでくるこれが、世界遺産の「ベッリンツォーナ旧市街の3つの城と防壁・城壁群」だ。

これらの城壁は中世後期の13世紀から15世紀の頃に作られたものだという。この辺りはアルプスを越えて南と北をつなぐルートの要衝で、ずっと地理的・政治的に重要なポイントだった。古くは紀元前から人が住み、初期的な要塞は紀元前4世紀にはできていたという。
今ある城壁も、長い間軍事的な防衛の拠点であり、さらには密輸などを防ぐ関所のような意味も担っていた。その歴史的価値が認められ、世界遺産に登録されたわけだ。

城壁の通路

3つの城壁には名前がついており、カステルグランデ Castelgrande、カステッロ・ディ・モンテベッロ Castello di Montebello、カステッロ・ディ・サッソ・コルバーロ Castello di Sasso Corbaroという。それぞれ「偉大な城壁」、「美しい山の城壁」、「カラス岩の城壁(カラスのように黒い岩の上に立っているため)」という意味を持つ。なお、後者二つは冬と春は開いていないので、行くときは要注意だ。

年中開いており、メインになっているカステルグランデは、内部が近代的に改装されて、レストランや博物館も整備されている。

城壁の内側は芝生になっていて、地元の人たちがピクニックしていた。中には、ダンスの練習をしている学生らしき人たちもいる。青空の下で城壁ピクニックとは、なんて素晴らしきぜいたく。
時期によっては音楽祭が開かれることもあり、青空ホールのようにもなっているようだ。

城壁内部は芝生になっている

城壁の斜面はのどかなブドウの段々畑になっている。茶色の岩肌ときれいな緑が調和して、すっかり平和な景色だ。街を見渡す塔に登れば、いまや城壁の外側にも街が広がっているのがよくわかる。そのなかに紛れるように小さくたたずむ城壁を見ると、境界を守るという当時の役割を終え、いまはもう静かに眠っているように見えた。

街に溶け込む城壁

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ベリンツォーナのもう一つの見どころは、土曜の朝市だ(時期によっては縮小版が水曜にもある)。

赤と青のテントがずらりと並んで、見た目にもかわいい。チーズや乾燥肉などスイスおなじみの畜産製品のほか、イタリア語圏らしいピザやポレンタも売っている。石鹸やアクセサリーなどの小物もあって、歩いているだけでも楽しい。

かわいいテント

塔のある広場では、スイスおなじみアルプホルンの演奏もやっていた。

スイスの山で見ることもあるアルプホルン

他にも、近くにはアルプスのふもとや、ティチーノ渓谷を通る散策路もあるようだ。次に行くことがあったらぜひ歩いてみたい。

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