うまいことパン丸められない話
11日よりパン作り修行が始まり、はや3日。
お世話になっている修行先のパン屋さんは、夫婦がパンを作っている。そこへ私が「お邪魔」して、パンを丸めている。パン作りの基礎は、丸めることなのだろう。
師匠は、パン生地と大親友というか、もはや家族なので、大変巧く操り、形成し、ツルンとかわいい生地にしてゆく。
師匠と同じようにパン重と呼ばれる箱から、さながら赤ちゃんのような記事を取り出し、ベビーパウダーの様に粉をまぶして、いざ丸めんとするこのとき、私の甘さが出現する。
妙に、生地が手にくっつき、丸まったかと思えば、生地のおしりが開き、師匠のパン生地とはまるで別人のようなハリの無いものになってしまう。
困ってしまうのだ。売りモノを私が丸めるたびに、「私の食料」になっていくのは。
忍びないのだ。
師匠夫婦は大変美しく、スムーズにパンを丸め、わんさか形成してゆく。
私は四苦八苦では足りず、三十二苦位してやっと1個丸めるのだ。
突然修行をお願いし、夫婦に迷惑をかけながらやっている私の様を、パン生地たちは見ているのだろうな。
「あぁ、こいつはご主人様ではないべ。」と、まだ仲良くしてはもらえないのだろう。
これは単に、師匠と私とで、骨格、パン作りに適した骨格が違うとかそういうことではなくて、単に、血が違うのだ。
いやはや、早くパンと仲良くなって、少しは巧いこと、丸めたいもので、そんな私の気持ちは、姑にいびられる新妻と似ているかも知れない。
赤ちゃん肌のパン生地たちは、百戦錬磨の鬼姑なのだ。
なんて言っているから、私はパンを、丸められない。
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