LUNA SEA同タイトル小説『Déjàvu』

【LUNA SEA同タイトル小説におけるマイルール】
*LUNA SEAの曲タイトルをタイトルとする
*タイトルの意味と、曲から受けるインスピレーションをもとに創作する(歌詞に沿った話を書くわけではない。歌詞の一部を拝借する場合はあり)
*即興で作る
*暗めなのはLUNA SEAの曲のせいです(笑)特に初期…
ノーマルの創作はこんな雰囲気です

 時計の針の音は、いつしか鼓動へと変わる。とくん、とくん、と規則的な音。どこから聞こえる? 時計から? いや、まさか。
自分から? 胸に手を当てる。違う。違うリズム。どこから?
 
フローリングに置いてある黒いアタッシュケースが目に入った。西日の当たる部屋で、それは存在感を放っていた。単なる仕事用のカバンのはずで、いつか見た光景……と思うのも当然のことだった。いつか見た光景ではなく、見慣れている光景だ。けれど、自分は鼓動が聞こえやしないかと、それに耳を当てるのだ。それこそが、いつか見た光景。知っている行動。ケースの中から音が聞こえる……なんてことは、なかった。
 アタッシュケースを机のわきに置きなおし、持ち手を離す手を止めて、もう一度床に平置きする。ロックを外して中身を確認してみるが、書類とパソコンが入っているだけ。いつも通りだ。

 逆さに落ちていく。意識が落ちていく。夢で足を踏み外した時のゾクッとするような一瞬の恐怖が駆け巡った。目覚めてほっとする。どくん、どくん、という鼓動の高鳴りが全身から聞こえる。切ないような苦しさを感じながら、何気なくアタッシュケースに目をやった。それはいつも通りの場所に鎮座していた。今はまだ西日の当たる時間ではない。いつも通りの朝だ。

 
 西日の当たる時間。もうしばらくしたら、太陽が沈むのだ。一日の終わりが近づく、気だるい時間だ。いつもなら、気づかない時間。休日の自分の部屋でならば、感じられる時間だ。西日とフローリングと黒いアタッシュケース。

アタッシュケース……長く使えるようにと買ったんだっけ。まずは見た目からでも仕事ができるやつになろうと、気に入るものを探したんだっけ。

太陽の熱と光を感じて、鼓動は早くなる。やはり鼓動の発信源を探そうとして、アタッシュケースに耳を当てようとする。ロック部分がきらめいて、その光に目をつぶった。
まぶたの裏で繰り広げられる世界は、どこまでも高く広く、高く広く。
空高くから見た自分は、一人だった。

仕事をする自分、ひとりで部屋にいる自分、誰かと対峙している自分。それぞれ違う。同じだけれど、別の人間のような振る舞い。鼓動の速さも違う。この鼓動はいつの自分だろう? どの自分だろう? 自分はひとり。
一致する、一致する、一致する。

いつか見た光景。初めての自分。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?