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「創業100周年」から「次の100年」へ。千秋庵製菓の新たな道への挑戦。

千秋庵製菓がまさに創業100年目を迎えようとしている時期に入社し、さまざまな課題の解決に取り組んできた川口敦弘(かわぐち あつひろ)さん。現在も、製造、物流、外商、商品開発などに奮闘しています。今回の【一日千秋】では、川口さんのこれまでの経歴や千秋庵製菓に入社した当時のこと、大きな節目となった業務提携についてのストーリーを伺いました。

【プロフィール】
川口 敦弘(かわぐち あつひろ)
出身地 北海道旭川市
1989年(平成元年) 日本電気株式会社 入社
          (中略)
1995年(平成7年)   株式会社香貴 入社
1996年(平成8年)   株式会社ピックルスコーポレーション旭川 工場長
2007年(平成19年) 株式会社香貴 製造部長
2017年(平成29年) 千秋庵製菓株式会社 取締役 製造部長
2023年(令和5年)   千秋庵製菓株式会社 取締役 担当部長


千秋庵製菓に入社するまで


― 千秋庵製菓に入社するまでの経歴をお伺いします

川口:私は千秋庵製菓に入社するまでに、本当に色々な仕事を経験してきました。実は、私が一番最初に入社をしたのは日本電気株式会社(NEC)で、業務用システムの提案営業担当として、6年ほど勤務していました。その後、家庭の事情もあって別の会社で仕事をしていたのですが、ご縁があって1995年に株式会社香貴(漬物専門メーカー)に入社することになりました。株式会社香貴に入社した直後は、社内のシステム構築と導入を進めることになり、過去の経験を活かすことができました。さらにその後、株式会社香貴の関連会社である株式会社ピックルスコーポレーション旭川で、漬物工場の工場長に着任しました。そして2007年に株式会社香貴の本社に復帰し、製造部長として製造部門全体を管轄するとともに、経理やシステム関連など、様々な業務を担当していました。

ー 本当にたくさんの仕事を経験されていたのですね。そこから千秋庵製菓に入社するまでには、どんなストーリーがあったのですか?

川口:株式会社香貴に復帰をして10年後、その当時お世話になっていた会計事務所の税理士の先生から「千秋庵製菓の製造部門の体制を強化するために力を貸してほしい」というお話をいただきました。
「千秋庵製菓」と聞くと、私には山親爺のテレビCMの印象が強烈に残っており、とても馴染み深い会社でした。その後、色々と考えた結果、「このお話をいただけたのも何かのご縁だし、何とか千秋庵製菓を盛り上げたい!今までの経験を活かして貢献したい!」という気持ちが高まり、2017年に入社をしました。

入社後に感じた千秋庵製菓の課題と改革の道のり

― 入社当時の千秋庵製菓についてお伺いします。

川口:入社直後は製造部長というポジションで、製造工場の体制を強化することをはじめ、社内の様々な仕組みづくりの舵取り役を担っていました。
そして何よりも重要だったのが、千秋庵製菓が「4年後(2021年)に創業100周年を迎える」という大事な時期だったということです。しかし、2017年当時の千秋庵製菓は、創業100周年を迎えるまでに解決しなくてはならない、大きな課題を抱えていました。

ー どんな課題があったのですか?

川口:私が入社した当時に感じたいくつかの課題のうち、主なものとしては「製造体制に関する課題」「商品開発に関する課題」でした。当時の私は、これらをひとつずつ解決していくことが先決だと感じていました。

「製造体制に関する課題」の一例としては、私が入社した当時の製造部門は、「商品をたくさん製造していた時代のままの体制」になっており、「人員配置(人数)が適正ではない」という課題がありました。私はこの状態を改善するために、商品ごとの作業工程と製造メンバーひとりひとりの業務内容を見直し、さらに製造メンバーを適材適所に配置転換して少しずつ体制を整えていきました。その他にも、製造工程の一部や包装工程に機械を導入して、効率的な製造と商品の保存性の向上を進めました。今改めて振り返ると、本当に日々奮闘していましたね…。

そしてもうひとつの大きな課題が「商品開発に関する課題」でした。

ー 「商品開発に関する課題」とは、どのようなものだったのですか?

川口:当時の千秋庵製菓は「商品の種類はたくさんあるが、売上の大半をノースマンと山親爺が占めている」という状況で、ノースマンと山親爺以外に核となる商品がありませんでした。私は千秋庵製菓に入社してすぐにこの現状に直面をして「このままでは…変化の激しい現代社会に対応できない…」という危機感を感じました。

新千歳空港内を視察(2018年)

川口:そこで私は、この課題を解決するために「身近なお菓子を、より美味しくすること」「時代のニーズにあった新しい商品を開発すること」の2つを掲げました。

まず最初に取り組んだのは「身近なお菓子を、より美味しくすること」です。これは具体的に言うと、すでに製造・販売をしている千秋庵製菓の定番商品(どら焼き、最中、饅頭、大福など)を、今よりもっと美味しく、もっと新しく感じるような商品にブラッシュアップすることを指しています。各商品の製造を担当している菓子職人たちと何度も議論と試作を重ね、ひとつずつ地道に改良を進めていくことで、少しずつ成果がではじめました。
その一方で、「時代のニーズにあった新しい商品を開発すること」は、なかなかうまく進みませんでした。百貨店や新千歳空港、スーパーマーケットの銘菓コーナーなどを積極的に視察し、同業他社の商品やアイデアを参考にしながら何度も何度も新しい商品の試作を行いましたが、なかなか思い描くような商品を開発することができず、本当に苦労をしました…。思い悩んだ結果、「千秋庵製菓はノースマンと山親爺に特化して、その他の商品を全てやめるしかないのではないか…」と考えてしまうこともありました…。

商品開発会議(2021年)

千秋庵製菓の新しい展開

― 入社直後から様々な課題を解決していき、4年後の2021年9月に「創業100周年」を迎えました。さらに翌2022年1月には株式会社COCとの業務提携に至りました。その経緯についてお伺いします

川口:新しい商品の開発がなかなかうまく進まないという課題がありながらも、千秋庵製菓は2021年9月5日に創業100周年を迎えることができました。しかしながら、「千秋庵製菓の次の100年」を見据えた時に、「千秋庵製菓にとっては、商品開発を自社のみで行うよりも、商品開発の分野に強みを持つ企業とタッグを組んだ方がメリットが大きいだろう」と考えるようになりました。そんな考えを抱きながらご協力いただける企業を探しているところに、商品・ブランド開発に大きな強みを持つ株式会社COCとのご縁をいただき、2022年1月に業務提携が実現しました。
この業務提携によって、「千秋庵製菓だけでは実現ができなかった新しいお菓子の開発ができる」という期待が高まったことをよく覚えています。

― 業務提携直後の動きについてお伺いします

川口:業務提携が結ばれた直後、中西さん(代表取締役社長)が副社長として着任されました。そこで株式会社COCのメンバーも含めた新体制で、新商品開発を行うプロジェクトチームが発足するとともに、「若い世代に向けた商品開発を行う」という方針が掲げられ、急ピッチで商品開発が進んでいきました。

巴里銅鑼の誕生

ー 業務提携が結ばれた後、最初に発売された新商品が「巴里銅鑼」ですが、その経緯についてお伺いします

川口:巴里銅鑼は、株式会社COCとの業務提携後、初の共同開発商品として2022年4月1日に発売された商品です。新商品の開発を進めていくにあたり様々な議論がありましたが、当初掲げられた「若い世代に向けた商品開発を行う」という方針に基づいて「ふわふわのオムレット生地」「なめらかな生クリーム」を使うという方向で開発が進んでいきました。
千秋庵製菓の商品の歴史を紐解くと、過去には主力商品のひとつとして、洋生ケーキを製造・販売していた時期がありました。しかしながら、巴里銅鑼の開発を始めた当時は、ほとんどの洋生ケーキの製造・販売を終了しており、現代の嗜好に合うような商品を開発していくためには、ノウハウが不足していました。そこで、きのとやグループ(現 北海道コンフェクトグループ)の1社であるKコンフェクト株式会社の商品開発チームの協力を仰ぎ、技術指導を受けることで、現在の巴里銅鑼で使用している「なめらかな生クリーム」と「ふわふわのオムレット生地」を完成させることができました。さらに、この生クリームと生地に、千秋庵製菓の強みである「あんこ」や「求肥」の製造技術を掛け合わせて、現在の巴里銅鑼が出来上がりました。

ー 業務提携直後から、グループ各社のノウハウが活かされたのですね。巴里銅鑼が発売された時の反響はいかがでしたか?

川口:巴里銅鑼は、当時の千秋庵製菓の発想と技術だけでは絶対に開発できなかった商品だと思っています。発売直後は、商品そのものの見た目のインパクトが大きいこともあり、テレビなどのメディアで取り上げていただく機会が増えました。その後、SNSなどを通じて徐々に巴里銅鑼の情報が広がり、若い世代のお客様に千秋庵製菓を知っていただけたとともに、古くから千秋庵製菓をご利用頂いているお客様にも受け入れていただくことができました。そして巴里銅鑼は今や、ノースマンや山親爺に続く千秋庵製菓の代表商品へと成長しました。そしてどういうわけか…2022年4月以降、私がテレビに出演する機会も増えました…(笑)。

《巴里銅鑼の製造工程をご紹介》

①オムレット生地の種をつくる
②トンネル窯で生地を焼く
③焼きあがった生地の焼き具合をチェックする
④焼きあがった生地を半分に切る
⑤生地の上にあんこを絞る
⑥求肥をシート状に加工しカットする
⑦あんこの上に求肥をのせる
⑧求肥の上に生クリームをたっぷりしぼる
⑨オムレット生地を上にのせる(完成)
⑩完成品を筒状のカバーを使って袋の中に挿入する
⑪金属探知機を通過させて完成

― 発売からたった2年で一気に千秋庵製菓の代表商品のひとつになったのですね。巴里銅鑼は季節限定の味も好評ですが、どのように開発されていますか?

川口:季節限定の味はすべて、巴里銅鑼の製造担当者と一緒に開発をしています。
通年商品として販売をしている「こしあん」はとても人気がある商品ですが、飽きを感じさせないためには、季節ごとの旬の食材を使った商品を展開していくことが必要だと考えています。
そして、この季節限定の味を開発するにあたり、一番はじめに使った食材は「栗」でした。栗を選んだ理由は、千秋庵製菓にはデラックス栗まんやノースマン栗、札幌娘など、栗を使った商品が多く、「千秋庵製菓の強みを最も活かせる季節の食材は栗だ」と考えたからです。その後、巴里銅鑼の季節限定の味は、秋に栗、冬にチョコ、春にさくらと広がりました。そして2024年5月16日から、新しい味として「ゆず」の販売がスタートしました。

巴里銅鑼 季節の味シリーズ
(写真左:栗、写真中央:チョコ、写真右:さくら)

巴里銅鑼の新しい季節の味 「ゆず」

ー 新しい季節の味「ゆず」の開発ストーリーをお伺いします

川口:巴里銅鑼は、春(さくら)、秋(栗)、冬(チョコ)には季節限定の味がありますが、夏限定の味はまだありませんでした。そこで店舗運営部のメンバーから「ぜひ夏限定の味も作りたい!」という熱い要望をいただき、開発がスタートしました。
季節の食材を選ぶ段階ではいくつかの案がありましたが、「初夏らしさを感じられること」と、「これまでの和菓子の製造技術を活かせること」の2点がポイントとなり、「ゆず」を使うことに決定しました。
また、開発を進めていくにあたり、「ゆずはきっと、巴里銅鑼に合うだろう」という自信がありました。この自信は、私自身が前職(漬物専門メーカー)で、ゆずをよく使っていた経験から来るものでした。まさか…漬物メーカーでの経験が、こんな形で役に立つとは思いませんでした…。

ー 川口さん自身の経験と、店舗運営部メンバーの想いがこもった商品になったのですね。では、巴里銅鑼ゆずにはどんな特徴がありますか?

川口:巴里銅鑼ゆずの特徴は、「生クリーム」、「あんこ」、「求肥」の3つにあります。
生クリームには濃いめのゆずペーストを練り合わせて、ゆずの香りをしっかりと感じられるように仕上げています。あんこは和菓子の定番のひとつである「ゆずあん」を使用し、求肥には、ゆずペーストと刻んだゆずの皮を練り込んでいます。特に求肥に練り込んだゆずの皮は、分量が多すぎると酸味や苦味を強く感じてしまうため、口に入れた時に「程よい酸味とほろ苦さ」を感じられるように仕上げています。

ゆず皮を練り込みシート状に加工した求肥

 そして、この巴里銅鑼ゆずの開発には、製造部に所属している菓子職人たちの技術とアイデアが詰まっています。
巴里銅鑼の製造を担当しているのは若手の女性菓子職人です。巴里銅鑼ゆずに使われている生クリームは、試作段階で活発に意見を出し合いながら進めたことによって、ベストな状態に仕上げることができました。
一方、あんこや求肥などの和菓子の製造を担当しているのはベテランの男性菓子職人です。巴里銅鑼ゆずに使われているあんこや求肥は、長年の経験と技術によるアドバイスをいただきながら、「程よい酸味とほろ苦さ」に仕上げることができました。
そして最終的には、生地、生クリーム、あんこ、求肥をすべて合わせて、総合的な味のバランスを見極めます。今回の「巴里銅鑼ゆず」も、製造部が自信をもってご提供できる一品になりました。

柚子が香る爽やかな味 巴里銅鑼「ゆず」

これからのこと


― これまで様々なお話をしていただきました。最後に、今後、川口さん自身が挑戦したいことや、千秋庵製菓に対しての想いをお伺いします。

川口:ノースマン、山親爺、そして巴里銅鑼に次ぐような千秋庵製菓の核となる新商品の開発を進めていきたいですね。また、それに伴って、製造ラインの再構築や物流面の改革、さらなる販路の拡大など…やりたいことはたくさんあります。

 そして何よりも、「千秋庵製菓が楽しくイキイキと働ける会社であること」を実現していきたいです。会社全体の雰囲気が、「積極的に挑戦でき、伸び伸びと働ける環境」であることで、若手~中間層のメンバーがさらに成長し、技術の継承や世代交代がスムーズに進むだろうとイメージしています。

 私自身は、どちらかと言うとあまり深く考え込まない性格で、普段もできるだけ楽しくイキイキと仕事をしたいと思っています。
仕事中は明るく楽しく、日々の何気ないコミュニケーションを大切にし、仕事後は「飲みにケーション」を大切にし、いろいろなメンバーと歌いに行っています。当たり前ですが、無理強いはしていませんよ!(笑)
仕事とプライベートはメリハリをつけて、充実した毎日を過ごしたいですね。

ハチマキ姿がトレードマーク!乾杯の音頭をとる川口さん

|編集後記|
いつも軽やかに社内を駆け回っている姿が印象的な川口さん。さまざまな部署が抱える新たな課題を発見し、次々に解決していく姿や、会社全体を盛り上げていく姿に励まされてきたメンバーも多いのではないでしょうか。これからも、会社を明るい未来に導いてもらいたいと思います。


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