見出し画像

「チ・カ・ホは生きている〜札幌駅前通地下歩行空間誕生秘話〜」番外編

座談会を終え、改めて登壇者の皆さまに以下の質問を投げかけてみました。

「チ・カ・ホオープンの前日、当日をどういう思いで迎えられましたか?」


八柳壽修|東亜道路工業(株)技術顧問 技術士


 オープンの前日は、東日本大震災。市長室でオープニングセレモニーについて打ち合わせしていました。
これまで、頑張ってくれた人や応援してくれた人への感謝の気持ちから、やりたかったが、テレビに写される津波の映像を見て、一同断念しました。

 当日は、少人数の関係者によりお出迎えしました。私は参加できませんでしたが、地下街や地下歩道とは違うこれまでにない地下歩行空間を市民がどのように評価してくれる心配して、テレビのニュースを見てました。


清水英征|札幌市建設局土木部維持担当部長


 私といたしましては、チ・カ・ホには計画段階から関わり、事業立ち上げ、工事発注と執り行ってきており、できれば最後の開通まで見届けたい気持ちもありましたが、残念ながら前年に異動となっていました。

 実は、私が異動するその前年に、日生ビルとは地下鉄札幌駅から部分開通させており、国道区間の北洋銀行も同様に地下鉄大通駅から部分開通させていたはずです。これは、当初工期で開通させる予定で、ビル接続の協議とビル建築を進めていたのですが、座談会でお話ししたとおり、埋設物の移設等に予定外に時間を要し、当初工期を取り戻すことができず、どうしても1年工期を伸ばさざるを得なかったため、オープンを見込んで募集していた地下階のテナントさんに迷惑をかけられないということなどから、部分開通という荒業を成し遂げたところでした。

 日本生命さんには本当にご迷惑をおかけし、ビルの建築業者さんを含め、部分開通について多大なるご理解ご協力いただけたことに心から感謝するところでしたが、一方現場としてこの時期は、全面開通めがけて、建築設備工事の最盛期であり、その建築工事も、土木工事から始まり、設備工事の後の最後の仕上げなので、工期の遅れのしわ寄せをすべて受けながら、完成時期は決められているという、非常に厳しい状況下で、さらに一部だけ先に完成させて開通させるという、非常に非効率な、現場としてはありえない困難な命題を受けながら取り組んだものでした。

 なので、その時のことも思い出しながら、何とか無事に全面開通までこぎつけたことに、本当に心からとてもうれしく、それまでの長きにわたる様々な苦労もこれで報われると、感無量であったとともに、本当に多くの方々と共に乗り越えられたことへの感謝の気持ちが沸き上がっていたところでした。

 しかしながら、ご承知のとおりオープン前日の3.11に東日本大震災が起こりました。当時、私は東区の苗穂東まちづくりセンターにおりましたが、苗穂駅の近くで地盤も良く、1階にいたにもかかわらず、非常に大きな横揺れを長い時間受けたことで、これはただ事ではないと感じ、すぐにテレビをつけて状況を見守っていたところでした。カメラに写る尋常ではない揺れの様子や津波が港に押し寄せ、街や田畑を呑み込んでいく様子を見ながら、これまで見たこともない何というひどい災害なのか、どれだけ多くの方が亡くなられ、被災されるのか、想像を絶するものであろうということは頭ではわかりましたが、ただただ呆然とするだけでした。

 そして翻って、チ・カ・ホの方は大丈夫だろうか、壊れていないだろうか、阪神淡路クラスの地震でも耐えられるよう設計し、地下構造物は地震に強いはずだとは思いつつも、本当に大丈夫だろうかと頭をよぎりました。翌日無事にオープンを迎えることができたと聞き安心はしましたが、この巡り会わせにはどういった意味があるのだろうかと思うところでした。考えてみれば、その後チ・カ・ホが一時滞在施設に指定され、非常用自家発電設備を装備することとなり、それが今の札幌駅前通地区防災協議会に繋がっているんだなぁと改めて思ったところです。

 これからも賑わいの軸としての役割に加え、防災上の施設としても市民や観光客などにとって、安心安全な施設であり続けられるよう、しっかりと維持管理しなければと改めて意を強くするところであります。


石塚雅明|株式会社石塚計画デザイン事務所 顧問


 いよいよチ・カ・ホのオープンを迎えたのだなという感慨に浸る状況ではありませんでした。前日は、オープンセレモニーの準備・調整でチ・カ・ホを何度も往復しているときに、東日本大震災の一報が入りました。断片的に入ってくる被災状況をチェックしながら、明日に迫ったセレモニーの準備を続けていましたが、夕方に関係者会議が開かれ中止の決定を知らされました。

 気の抜けた感じで自宅に帰りましたが、夜は刻々と入ってくる映像にことの大きさを知らされました。当日は、チ・カ・ホの扉があけられ、多くの市民のみなさまが通られるのをまち会社の一員としてお迎えさせていただきましたが、その予想を超える人の多さに、ただならぬ場が生まれたことを肌で感じました。


芳村直孝|札幌駅前通まちづくり株式会社 代表取締役社長


 オープン前日の東日本大震災発生時には、オープニングセレモニーのリハーサルの立ち合いでチ・カ・ホにいました。随分長く揺れるなぁとは感じましたが、あのような甚大な被害が生じているとは思ってもいませんでした。急いで市役所に呼び戻されて、テレビ映像を見て、文字通り言葉を失いました。その後、市長の判断でオープニングセレモニーの中止が決まりましたが、如何せん前日のことでしたので、イベントをやるよりも中止する方が難しいと実感しました。

 チ・カ・ホの大通駅側とさっぽろ駅側の入口に掲示するセレモニーの中止を知らせる市長メッセージの文案を作成したのですが、市長の思い入れが強くて、なかなかOKが出なかったことを覚えています。

 当日は、セレモニーは中止になりましたが、関係者でお出迎えだけはしましょうということで、私は早朝からさっぽろ駅側でお出迎えしました。本当は横断幕を持ってお出迎えする予定だったんですけれども、手ぶらで。そういえば、あの横断幕ってどこに行ったのかしら(笑)。

 無事オープンを迎えて、ホッとした気持ちもありましたが、多くの関係者にとって開通が最大の山場だったのに対して、私にとっては、これからチ・カ・ホをいかに活用してもらえるかが最重要課題でしたので、「まだ何も成し遂げたわけではない。本番はこれからだ」という思いでしたね。


画像1

まち会社スタッフの編集後記

 改めまして、「チ・カ・ホは生きている〜札幌駅前通地下歩行空間誕生秘話〜」をお読みいただきありがとうございました。開通してからこの10年間でチ・カ・ホも様々な催しが行われ、それを楽しみに通行される方も増えました。なんと、2021年3月12日までの10年間で21538件のイベントが開催されました。毎月この場所で、というイベントも増えたことから出店者同士の小さなコミュニティも出来上がりつつあります。

 今回の座談会にも話題にあがったように、これから先の10年は新しいことにもチャレンジしていきながら、さらにワクワクを提供できるような、よりよい空間を目指してまいりたいと思います。

 チ・カ・ホ開通10周年企画座談会は、まだ続きます。次回は、開通してからのチ・カ・ホを深掘りしていきたいと思います!お楽しみに。


★「チ・カ・ホは生きている〜札幌駅前通地下歩行空間誕生秘話〜」の内容は、こちらのマガジンにまとめてありますのでぜひご覧ください!

画像2

主催|札幌駅前通まちづくり株式会社(札幌駅前通地下広場 指定管理者)
●ホームページ(https://www.sapporoekimae-management.jp/)●Facebook(@sapporoekimaedori
●Instagram(@sapporo.ekimaest

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?