にのみやさをり

写真家。言の葉紡ぎ屋。 和して同ぜず。来るモノ時に拒み去るモノは拒まず。日々を淡々と過…

にのみやさをり

写真家。言の葉紡ぎ屋。 和して同ぜず。来るモノ時に拒み去るモノは拒まず。日々を淡々と過ごせますように。 愛読書:クリシュナムルティ、メイ・サートンの日記、長田弘、梨木香歩、小川洋子、上橋菜穂子、高村薫、桐野夏生、町田そのこ、山本周五郎ほか。

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最近の記事

    • 本、出します。

      近々本出します。 インパクトの強いタイトルで、ぎょっとされる方も多くいらっしゃるかもと思います。でも、書いてあること扱っていることは、特別なことでも何でもありません。 ごくごく当たり前の、誰もが何処かで思ったり考えたり悩んだりしたことがあるんじゃないかと思えることがらたちです。 いや、自分は性暴力加害者/被害者になんてなるわけないから、そんなわけないだろ、と仰る方も多くいらっしゃると思います。 特に加害者になるわけはない!と。 でも。本当にそうでしょうか。 確かに、一線を

      ¥500
      • 05-断峡

        この曲も、いっぺんに複数パートの音が突如頭の中でなり始めた。

        • 息子を撮らない私。撮れない私。

          前から疑問に思っていた。何故私は息子の写真を撮りたいとそんなに思わないのだろう。娘の時は何をさて置いといてもまず「撮る」自分がいたのに。 息子の写真は、何処かで、オットが撮るんじゃないかと思っていた。 私はもう、娘でやり切った、という気持ちが何処かにあった。 それは、ほんとにもう、どうしようもないくらい、あった。 最近、ようやく、撮り始めるなら今のうちだよ、という気持ちが湧いてきた。遅いのだが。でも、それが私の「ほんと」だ。 私は彼の裡に、自分を加害した人間と同じ

          ¥300〜

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        • 写真関連
          23本
        • コラム/エッセイ
          49本
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        • 5本
        • 散文詩集
          111本
        • 五百字
          50本
        • 見つめる日々
          645本
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        記事

          旧友との再会

          ほんの1時間だけれど、旧友と再会。私と彼女が別れた時、彼女の髪はずいぶん長かった。再会した今日、彼女は短く髪を切っていた。当時は薬の副作用で常に手元が震えていた彼女だった。寂し気な横顔は変わっていなかったけれど、でも、彼女の手元は今震えてなんかいなかった。十年ほど前に半年ほど入院した後、ずいぶん落ち着いたんだよと話してくれた。 でも彼女の両腕は、見事に傷痕に覆われていて、私の心臓はぎゅうと鳴った。リストカットにもひとの数だけ色合いがあるのだなと、彼女の両腕の傷痕を見つめながら

          ¥100〜

          旧友との再会

          ¥100〜

          当事者が言語化しきれないことたちのひとつ

          私自身性暴力被害当事者だけれど。被害に遭った時のことをひとつひとつ言語化できるかといったら、否、だ。 まず被害直後私の頭はショートした。真っ白になった。いや真っ黒だったのかもしれない。とにかく映像の記録の一切合財を拒絶した。ゆえに私の記憶は傷だらけのレコードみたく、飛び飛びに、ところどころしか残っていない。それも無声映画のような状態でしか残っていない。微かに残る音声は、私を二重三重に傷つける代物でしかなかったりする。 そんな自分にとって、あの時どうして、レイプされずにすむほど

          ¥500

          当事者が言語化しきれないことたちのひとつ

          02-去樹影

          亡き祖父から聴かせてもらった祖父の戦争体験を、私は子供のころよく、ひとり夜になると思い出した。自分の部屋の出窓に上っては、夜中ずっと、夜空を見上げながら、祖父の体験話をなぞった。 その時の私の思いを、音にすると、この曲になった。

          03-Opening

          いつもそうなのだが、唐突に頭の中に音が浮かぶ。それはひとつの旋律だけ浮かぶのではなくて、つねに重層的に、幾重にも音が重なって、もうすでにそこにできあがって浮かぶから、再現するのはいつも大慌て。この時もそうだった覚えが。もうちょっとテンポをあげればよかったなと今は思ってたりする。

          29.8

          雨が空から堕ちて来る 雨が、雨が、堕ちて来る もう三日も着っぱなしの上着を濡らして その下の薄汚れた肌を凍らせる 所詮ヒトがヒトにできることなどたかが知れていて 片手で収まる程度のもんで 下手すりゃひとつもありゃしない それはわかっていたけれど 思い知ってはいたけれど それでも 諦められなかった 諦めたくなんかなかった ねぇ教えて あなたは 飛んだ先に何を見た? 何が見えた? 何が見たかった? いくら訊ねても いくら声を張り上げても あなたからは二度と 応えなど帰ってはこな

          歩 痕

          ごめん すぐ隣で あまりの荷物の重さに あんたが倒れ込んでいるのを なんとも思ってない わけじゃないけど あたしにも 荷物はあってさ 背負わなきゃなんない荷物が だから あんたの荷物 肩代わりは、できないんだ 自分の荷物の重さも構わずに 手を伸ばすことのできた日もあった それで共倒れることがわかってても そうせずにはいられなかった頃が でももう今 あたしにそれは できない 共倒れて その先は どうする? ふたりとも背負いきれない荷物引きずって 何処まで歩いてゆけ

          09-日溜まりの午後

          淡い水彩画のような光景が頭に浮かんだ時に作った曲です。何の変哲もない、どこにでもあると同時に、どうしようもなくいとおしく穏やかな、そんな音を作りたかった。

          09-日溜まりの午後

          09-日溜まりの午後

          見えない標

          何をしても満たされることはなく この体にあいた穴は穴のまま 耳を掠め 飛んでゆく風の後に 残るのは何 沈む地平線 名を明かさなくていい 君が君であることを 僕は探し出すから 声を上げなくたっていい 君の居場所を僕は 必ず見つけ出す どんなことをしてでも 抱え込んだ鉛は重くどこまでも 腹の中沈んで溜まってゆくばかり 杭を越えて 溢れ出した流れは誰も 止められない 放たれる声 名を明かさなくていい そんなものあろうとなかろうと 僕は君を探し出すから 声を上げなくたってい

          未知図

          何処へゆけばいいのか分からなくて 何処へいきたいのかも分からなくて 膝を抱えてたよ 顔をうずめて 何も見たくなかった これ以上何も なのに知りたいと願った この胸の中で荒れ狂う すべてを 壊れかけた椅子は私を乗せて 軋んだ音を立てる 私が立つのが先? 椅子が壊れるのが先? どっち? 四方を囲む 朽ちた壁板の隙間から僅かに 漏れてくる光は 闇を照らすため? それとも 闇を教えるため? 答えは何処にもなくて やっぱり 何処へゆくのかも 何処へいきたいかも 何も分

          躊躇足

          いいだろ、もう、 あきらめちまえば きれいさっぱり どうってことない、たった一歩 踏み出すだけ 疲れた とか 堪えられない とか 空っぽだとか 無気力だとか それが何なの? どうだっていい どうだっていいのさ、 言いたい奴には言いたいように言わせておけば でも ヒトがどう思うかって? 何とも思いやしないよ そんなにみんなヒマじゃない 自分のことでたいてい手一杯さ んなことより 僕が僕をそうやって 雁字搦めにしてるってだけだろ 体裁繕って 過去にとっつかまって もう ど

          嘘の糸

          君が嘘をついた 君の口の端が小さく歪んでる 分かりきった嘘でも 見透かせる嘘でも つけばそれは どうやっても 嘘以外の何者でもなく 君が嘘をついた 少し前を歩く君が 振り向けば 帽子の影から覗く 口の端 おざなりな口紅で 色づいた唇 つけば 嘘 ばれても 嘘 なら 突き通せよ 最期まで 何処までも何処までも何処までも 突き通せよ その嘘 途中でひけらかすなんて卑怯な真似 御免蒙る そうだ、 僕がこれまでついてきた嘘 教えてあげようか 君の目の前で 指折り数えてみせようか

          急ぎ足で歩く僕は

          誰も何も言わない むしろ 今 交叉点の真ん中で転んだ 君は 単なる異物で 邪魔な障害物で 点滅し始めた信号機の方が気にかかる 足早に過ぎる ひと ヒト 人 券売機の前の人だかり 腕時計の秒針 チッチッ という その音にいらつく ぐずぐずしていたら乗り遅れる 一本遅らせてもそう大差ないくせに そのために押し退けた人は幾つ 駆け上がる階段に息が切れる 急いで 急いで そうして何処へゆくんだろう 所詮誰もが死んでゆく その時が来れば誰も同じく死んでゆく それでも 生き急ぐ 僕ら

          急ぎ足で歩く僕は