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久しぶりの投稿になりました。今日は途上国VS日本の教育問題について語りたいと思います。

世界銀行で約13年教育セクターで働いてきて、現在は日本の教育問題に関わり始めているので、課題が色々と見えてきますが、どのような共通点や異なる点があり、日本の教育問題への提案をしてみたいと思います。

途上国の教育分野独自の課題

エチオピアのある学校の様子
  1. 教育予算が少ない、または効率的に使われていないために以下のような問題が起こる

    1. 教員の給与が少ないために教員になるモチベーションが低かったり他の仕事と掛け持ちしたりしていたりして教育の質が下がる。

    2. 教員が足りない。特に辺鄙な場所に行きたがる人が少ない。

    3. 教員のインセンティブシステムやキャリア教育システムができていないため、モチベーションが低い教員が出てくる。

    4. 学校が必要なところに建てられないため、近くに行ける学校がない生徒は1時間ほどかけて通学する場合もある。そうすると通学途中にレイプ事件などがあり、それによって妊娠してしまう女子生徒などもいて、学校に通えなくなる場合がある。また雨天の時に通学が困難で学校を休む場合もある。

    5. 学校を建てる予算がなく、先生対生徒の比率が高すぎて学びに弊害が出る。(例えば1クラス50人など)

    6. 学校にベーシックなインフラがない。(例えばトイレや手洗い場など)女子用トイレがない場合は生理になった女子生徒は学校に行かない場合もある。

    7. 教科書などの教材が学校に届かず、一人1冊の教科書が持てずに共有する場合もある。

エチオピアの学校

2.家が貧しいため通学および学びの弊害が生じる

  1. 子供が家の仕事の手伝いをしなくてはならず、学校に行けなくなる

  2. 親が学校に子供を通わせるインセンティブを見出せずに子供を学校に行かせない

  3. 制服代や文房具費などにお金がかかるため親が子供に学校に行かせられない

  4. ご飯を3食食べさせられないために、学校で出る給食しか食べられない子供は、お腹が空いてよく学ぶことができない

日本との共通課題

  1. 教員が授業を教える以外に生徒のサポートや、学校で必要とされるその他のタスクを行うため、働きすぎている(ただ、日本の方が、掃除監督、部活顧問などもあり、休日も含め、もっと働いています)

  2. コンピューターやタブレットを導入した時に学校全体として導入ポリシーや詳細計画がないため、ハードウェアだけ導入されて使われないまま放置されているケースが多い。

  3. 先生によってコンピューターを使える能力が異なるので、コンピューターを導入したときにうまく活用される場合とされない場合がある。

途上国の場合さらには一人一台コンピューターやタブレットがなかなか支給されない場合も多いので、共有しなくてはいけない、またはインターネットに繋がらない場合はICTについて机上の空論で学んでいる場合もあり、実践的な学びができていないことも多い。

日本の教育のこれから

上記の課題からもわかるように、私が色々な途上国の先生に会った後に日本の先生の話を聞いて感じるのは、日本の先生はすごく頑張っているなーということ。そしてやらなくても良い仕事もたくさん担っているということ。むしろ働きすぎで自分を労っていないために、休職している先生もたくさんいるということ。

希望に満ち溢れて入ってきた新しい先生も数年あるいは最初の一年で現実を目の当たりにして、メンタルがやられる方もいると聞いています。

教育はどんな学校施設であっても、教員が良ければ生徒は学べるので、教員の方のサポートというのを学校や自治体、政府などで支援していく必要があると思います。

政府が決めた色々な教育方針があり、それを現場で全て回していくのも大変だと思います。それなので、例えばそのような方針を実行に移していくためのサポートチームのようなコンサルタントが入るのも一つの手かもしれません。

世界銀行では教育プロジェクトを実施する際、すでにいる人材だけでは足りないので、政府がコンサルタントを雇って、追加で出てきた仕事を請け負う、というようなやり方をしています。そしてコンサルタントは仕事を終え、現場のオペレーションに引き継げるようになったら役割終了となります。このようなやり方も取り入れることはできないでしょうか。

また、世界銀行の教員教育プロジェクトでうまくいった事例は、教員のサポートシステムを作ることでした。一番簡単なのは教員研修を行った後に参加者同士のWhatsAppグループを作って、お互いにうまくいったことをシェアしたり、励ましあったり、教えあったりしてカジュアルに会話ができるようにしたこと。このグループをずっとキープしていくことでモチベーションを保ち、悩みを聞き合い解決策を出し合える、良いサポート環境ができていました。また、教員にコーチをつけることも重要です。コーチが教員の壁打ち相手となり、教員がうまく能力を発揮できるようにペースメーカーとなってくれます。そして、いいパフォーマンスをしている教員の方にアワードをあげる、などインセンティブをつけることも必要です。自分の頑張りが認められることは、やはり先生方は嬉しいと思いますので、このようなパフォーマンス評価体制もあると、モチベーションは上がると思われます。





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