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許してしまったの 彼を

先に触れておきますが、まったく恋愛の記事ではありません。

私はその日、朝から苛々していた。

母親を遡って扶養にいれたので、確定申告の修正をしないといけなくなったからだ。

確定申告の控えや、いろんな資料をまた集めて提出しなければならない。
集める書類のなかに、ふるさと納税の寄付金控除証明書を5年ぶん再発行してもらうというミッションがふくまれていた。

何せわたしはふるさと納税マニアなのだ。
一年に三ケ所~五ヶ所は寄付している。

ざっと見積もって15から20の自治体に電話をして再発行をおねがいすることになったのだ。

①ふるさと納税のサイトを確認し、過去の履歴をリストアップ。

②それぞれの自治体のふるさと納税担当の電話番号、受付時間帯をメモ。

(ここで飽きてきて、半日休み)

③電話で住所、名前、要件を伝え、再発行お願いする。

(もう、これがかなりしんどかった)

④ポストにちらほら届く再発行の証明書をチェックしていく。

という流れであった。

あらかた、一週間内にちゃんと書類が届いたものの、Y県のM市だけ来ない。

10日過ぎてもこないので、イラチな黒ひょうの私は催促することにした。

好感度を下げるのを覚悟で書くが、私はこういう問い合わせには、わりとハズレの担当者を引く率が高い。

自分もコールセンターで働いていた経験もあるので、わりと声の質や話し方に厳しいのだろう。失礼な反応や、マウントをとったような話し方をする人には、

「イラチピリカモード」をワイルドMAXまで振り切る準備はいつもしている。

その日も「あんたの出方しだいでは最高イラチモードだしたるけんね」という気概で、Y県のふるさと納税担当に連絡する。

「はい、Y県◯◯課です」

電話をとった相手の声には聞き覚えがあった。
ちょっと低めで深い、noterさんでいうとgeekさんみたいな声だ。

私はフラットな声で、一週間前に再発行の依頼をしたが、まだ来ないと伝えた。

相手が、「送ったんですけどね」「もうすぐ届きますよ」なんてことをつるりと言ったならば、「ああん!?」とキレる準備だけはしていたのだが、

話した結果、私は「はーい、じゃあお願いします」とニコニコ笑って電話をきったのである。

geekさん似の彼(しつこい)は、


「あー、◯月◯日に、私が電話をとってますね。届いてないのは私がスタッフにつたえまちがえた可能性があります。すみません。すぐ送ります。ご迷惑おかけしました」

と、自分の責任の所在を認め、ちゃんと謝罪した。偏見かもしれないが、民間企業でなく、自治体職員でこんなに潔い対応をする人は、なかなか見ない。

それで単純な私は

「はい、どーもよろしくですぅ」とかなんとかへらへらして許してしまったのだ。

ミスは誰にでもある。
ただ、その対応で0にも100にもなる。

ピンチはチャンス、とよく言ったものだ。

Y県に今年も寄付するぞ!と、謝礼品リストを見ながら、私はいまメロンかイチゴかで迷っているのだった。



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