嫌悪感
何より人を憂鬱にさせるのは、人の意地汚さだなと想う。誰しもが持つエゴイズムは、意識的、無意識的に関係が無く他者を不快にする時がある。言うまでも無いが、善意であれ悪意であれ、それをどのように受け止めるか、そしてどう反応するかは常に他者であり、そこに二元論的な善悪は存在しない。
それでも普遍的に嫌悪を及ぼす行為がある。妬み、嫉み、吝嗇からくる不寛容。今から逢わねばならない人物は、その集大成の様な男である。ある業界新聞の極々微細な紙面に、依頼を受けてゴーストライターをしている件で不満があるらしい。「せやからな、ぜんっぜん反応が無いねん。」斬新やと思て期待しとったのに、ぜんっぜんやわとダイレクトな不満をぶつけられた。
洋三にも言いたい事は沢山ある。しかしもうそれも無為な事に思えて、反論する気も失せていた。他責にする事は自身を貶める事であり、自身の筆力不足を認めない行為は、目の前の小者と同列に成る事を意味する。
「判りました。今月で御辞退します。」仕事が一つ減った。
〈掲載…2017年7月 週刊粧業〉
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