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包洋三エッセイ集

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物書き包洋三(つつみようぞう)によるエッセイ集。過去に当社のカタログや製品サンプルなどにちなんだエッセイを都度書いてきたものを、こちらにまとめました! 単品でもお楽しみいただけま… もっと読む
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記事一覧

退屈は人類の敵

 新聞は一面から読む。とてもオーソドックスな事ではあるが、新聞を読む時、一面の最上段の見…

私、包 洋三から御客様御各位へ

 私が書けなくなってから時間が過ぎました。文士が書けないという事は無職であります。アマチ…

スランプ

 筆が進まない。厳密にいえばキーボードが叩けない。  何を書くにせよ、書く歓びを欠くこと…

朱鷺 ニッポニアニッポン

 高さ80㎝、直径50㎝。これが今現在のウイッチ、つまり新しく包家の一員となったノーウィ…

蜜柑色の金糸雀

 ホームセンターの匂いは何処も共通している。園芸エリア、工具エリア、材料エリア、日用品エ…

トタンエレジー

「もう来るやんなぁ」  建てつけの悪そうな木製横開きの扉の向こうで、間の抜けた関西弁がそ…

真夜中の虹

 スコールに似た雨がさんざんアスファルトを叩いた後、靴に雨の名残を染み込ませながら路地を歩いた。  春が近づくと朝も早くなる。東の空のトーンが僅かに変わり、空の主役が代わる事を告げている。  雨水を湛えた地面に瞬きを止められないネオンが乱反射して、目の奥に残像を残す。  私に夜は似合わない。食べ物、アルコール、そしてそれらを貪欲に取り込んだ人の匂いが、化学反応して空気を侵す。洋三はまるで大きな動物の内臓の中に居るようだと感じていた。  夜の匂いに辟易する一方で、奥の見

てこの原理

 由緒正しきブリキ缶に納まった飴玉を取り出すには、硬く閉ざされた金属の蓋を開ける必要があ…

Life or Work

 二階に眺めの良いプールがある。そこが気に入ってそのホテルを選んだ甲斐もあり、常夏のビジ…

玩具箱

 二階にある日当たりの良い六畳の部屋は、世界の為の子供部屋と化していた。  そしてその部…

虹の彼方に

 土砂降りの雨の中、洋三は急いでいた。  墨汁を薄めたような空は暗いと表現するより暗く、…

占い

 真帆はカードが巧く切れない。  幼少の頃、親族が集まった折、酒宴に明け暮れる大人達に合…

プレジャー、リトル・トレジャー

 どうやら鍵を失くしてしまったらしい。  久しぶりの外食をする事に心浮かれ、さりげなさを…

翼が生えた日(後編)

 自分でも驚く程の痙攣を伴って洋三は目覚めた。「危なかった。小説や漫画では御法度の夢オチをしてしまうとこだったよ。」大きな声と痙攣から目覚めた洋三は、照れ隠しとして傍らにいた妻の真帆に要らぬ説明をしてしまった。  夫の夢の内容に全く関心の無い真帆は、うなり声に近い生返事をして洋三に背を向け、改めて夢魔の導きに従う様子だ。  地方の小企業からの瑣末な依頼の他は、これといった仕事の無い現状で、何のメッセージを込めてあの様な夢を観せたのだろうと、己の無意識と向き合おうとする無駄