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子宮


別れると決まってからも、三か月ともに暮らす。とはいえ週に一度ほど彼は荷物を取りに帰るだけで、他の日はどこに身を置いているのかもしらない。嫌がるだろうから聞くこともしなかった。別れる条件に私から頼んだのだった。唐突に離れるよりも、徐々に存在が薄らぐほうが、悲しみはゆるやかだろうと思った。夜更け、梨の皮をむきながら、数日前に鼓膜が破れた話をした。彼の心を惹くためだった。
原因はわからなかった。違和感がして病院に行くと破れていた。中心に小さな穴の開いた鼓膜が映る、内視鏡の画像記録。珍しくて写真に撮った。彼に見せると、子宮みたいだ、と小さく呟いたのだった。どうしてか、冷たい涙が出た。



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